2013 Fiscal Year Research-status Report
頭頸部癌に対するDNA修復阻害遺伝子導入による化学療法および放射線療法増感効果
Project/Area Number |
23592544
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Research Institution | National Defense Medical College |
Principal Investigator |
山下 拓 防衛医科大学校(医学教育部医学科進学課程及び専門課程、動物実験施設、共同利用研究, 医学教育学部医学科専門課程, 准教授 (00296683)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
荒木 幸仁 防衛医科大学校(医学教育部医学科進学課程及び専門課程、動物実験施設、共同利用研究, 病院, 講師 (70317220)
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Keywords | DNA修復遺伝子 / ウイルスベクター / 遺伝子治療 |
Research Abstract |
本年度は、一昨年および昨年の研究において得られた、in vitroでのAd-NBS1によるNBS1阻害によるシスプラチン増感効果、およびシスプラチン耐性機構のメカニズムの解明のための研究を行った。 p63はNBS1と複合体を形成するMre11, Rad50の転写因子であることが報告されている。そこでまず頭頸部扁平上皮癌由来のシスプラチン感受性細胞株とシスプラチン耐性細胞株に対し、in vitroでシスプラチンによる刺激を行い各mRNA, 蛋白の発現変化をRT-PCRおよびウエスタンブロットでみた。シスプラチン投与前のベースラインでは発現量に大きな差は認めなかったが、シスプラチン刺激後mRNAは24時間後をピークとする発現亢進が、蛋白は24時間~72時間後まで、感受性株に比較し耐性株において各蛋白(p63,Mre11,Rad50,NBS1)の発現亢進が見られ、DNA修復機能が亢進していると考えられた。次にsiRNAにてp63をノックダウンするとMre11, Rad50の蛋白産生が抑制されることが示された。 またAd-NBS1をシスプラチンとともに加えると変異型NBS1(mNBS1)蛋白の発現を確認でき、またそれに伴い野生型NBS1の発現の抑制が起こることが示された。この時、Mre11, Rad50の発現も抑制されているがp63の発現には変化がなかった。 以上の結果より、シスプラチン耐性には転写因子p63を介したDNA修復蛋白の産生更新が関与するがAd-NBS1の作用機序はp63を介さずMRN蛋白の発現抑制が起こっていることが判明した。 NBS1阻害によるシスプラチン増感効果についての理論的根拠となるデータは蓄積されてきており、次年度の研究発展に期待が持てる結果であると考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年はまずAd-NBS1およびPARP阻害薬のin vivoでの頭頸部癌に対するシスプラチン増感効果の検討を行った。投与時期、投与量、およびAd-NBS1およびPARP阻害薬の併用方法の検討など、因子が多岐に及んだため、最適な治療スケジュールに対するpreliminaryの結果を得たのみで統計学的有意差を求める治療実験まで行うことができなかった。 しかし、平行して行ったメカニズムの検討においてシスプラチン耐性の頭頸部癌細胞株ではシスプラチン刺激に対してp63を介したDNA修復に関わるmRNAおよび蛋白(Mre11, NBS1, Rad50)の産生亢進が見られ、シスプラチンによるDNA損傷の修復機能が亢進している可能性があることが示された。またAd-NBS1投与において、DNA修復蛋白(Mre11, NBS1, Rad50)の発現抑制が見られるがp63を介する発現抑制ではないことなどのメカニズムの解明が可能であった。以上より本研究の主目的であるDNA修復阻害によるシスプラチン増感治療の理論的根拠があること、またDNA修復に関わる阻害が1本鎖および2本鎖DNA損傷阻害の併用でさらに期待ができるだろうと予想されることが示された。この成果は、今後in vivoでの効果を確認するための理論的根拠となるものである。以上より研究計画自体は若干の遅延が生じているものの、新たな理論的根拠を得ることができ、同時に予定以上の成果もあったと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度は、変異NBS1遺伝子導入およびPARP阻害薬を用いたヒト頭頸部扁平上皮癌に対するシスプラチン増感効果の統計学的検討をヌードマウスを用いたin vivoモデルで行う予定である。5群に治療群分けを予定しておりそれぞれ15匹、計75匹のヌードマウス使用を予定している。1匹9千円のため、675千円を予定している。またγH2AX染色、TUNEL法、PCR、Western blottingなどに用いる試薬、キットに350千円、ガラス器具は消耗分のみ36千円を予定した。これらの成果を論文にまとめる予定で、研究成果投稿料として50千円を予定している。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度は、まず変異型NBS1ウイルスを組み込んだウイルスベクターとPARP阻害薬併用で、ヌードマウスへの頭頸部扁平上皮癌移植モデルでの頭頸部癌に対するシスプラチン増感効果の検討を行った。投与時期、投与量、およびAd-NBS1およびPARP阻害薬の併用方法の検討など、因子が多岐に及んだため、最適な治療スケジュールに対するpreliminaryの結果を得たのみで統計学的有意差を求める治療実験まで行うことができなかった。次年度での再検討行う予定である。 平成26年度は、変異NBS1遺伝子導入およびPARP阻害薬を用いたヒト頭頸部扁平上皮癌に対するシスプラチン増感効果の統計学的検討をヌードマウスを用いたin vivoモデルで行う予定である。5群に治療群分けを予定しておりそれぞれ15匹、計75匹のヌードマウス使用を予定している。1匹9千円のため、675千円を予定している。またγH2AX染色、TUNEL法、PCR、Western blottingなどに用いる試薬、キットに350千円、ガラス器具は消耗分のみ36千円を予定した。これらの成果を論文にまとめる予定で、研究成果投稿料として50千円を予定している。
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