2011 Fiscal Year Research-status Report
視神経変性における網膜・視神経のアクアポリンの局在変化と網膜神経節細胞死への関与
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23592568
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
中村 誠 神戸大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (80273788)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
金森 章泰 神戸大学, 医学部附属病院, 助教 (10444572)
根木 昭 神戸大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (00189359)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | アクアポリン / 網膜神経節細胞 / アストロサイト / 糖尿病網膜症 / 緑内障性視神経症 / 視神経萎縮 / 乳酸 / 水輸送 |
Research Abstract |
生理的条件下における、ラット網膜と視神経のアクアポリン(AQP)アイソフォーム発現とその局在を同定した。網膜ではミュラー細胞がAQP4、網膜外層神経細胞がAQP1、bipolar細胞がAQP0、神経節細胞とミュラー細胞がAQP9を発現していた。視神経では球後有髄神経においてアストロサイトがAQP4および9を発現していたのに対して、無髄の乳頭部ではAQP9のみ発現していた。 ラットに慢性高眼圧を誘導すると網膜神経節細胞ならびに視神経アストロサイトにおけるAQP9発現が蛋白レベル・遺伝子レベルで減弱した。同様の変化はサル高眼圧眼と輸入ヒト緑内障眼でも認められた。 AQP9は水以外の溶質も透過できるaquaglyceroporinに属する。中でも乳酸はアストロサイトから神経細胞へ供給される一種のエネルギー基質であることから、高眼圧でAQP9発現が網膜神経節細胞や視神経で低下していることは、緑内障において乳酸というエネルギー基質の供給が障害されている可能性を示した。 一方、糖尿病ラットにおいては、本来発現のみられない網膜神経線維層の神経軸索におけるAQP0の発現が増加していた。しかもこの発現増加は神経軸索が視神経内に進入して以降、まったく見られなかった。無髄眼内神経軸索と有髄眼外神経軸索では糖尿病における代謝障害に対する反応に差があることが判った。AQP0は水輸送以外に細胞接着にも関わっている。また網膜神経節細胞は細胞外基質に接着することが生存に必須条件である。これらのことから、眼内軸索におけるAQP0発現変化は糖尿病網膜における網膜神経節細胞死の増加に関与している可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初培養細胞を用いた研究を先行させる予定であったが、本年度は過去の研究をそのまま発展させるべく動物実験を主体に行うこととした。慢性高眼圧と糖尿病モデルは当初の計画通り実験を遂行できている。視神経挫滅モデルも同様に研究を進めているが、より神経変性が急速に、かつ広範に進むため、AQP発現変化と神経節細胞死の因果関係を経時的に立証すべく、タイムコースを複数設定して再現性を確認しているところである。
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Strategy for Future Research Activity |
現在進行形ではあるが、次年度は特にAQP9発現と網膜神経節細胞死の因果関係を解明することに焦点を当てたい。そのために、細胞培養系でAQP9をノックダウンして神経節細胞死に与える影響を生化学的、分子生物学的に検討していく。また動物モデルにおいても疾患におけるRGC細胞死とAQP発現の経時的関連を明らかにしていく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
血清除去ないしグルタミン酸負荷により、RGC-5細胞のアポトーシスを誘導する。細胞の生死判定はLive/Dead assayを、アポトーシスの検出にはTUNEL染色を、ミトコンドリア膜電位変化の検出にはMitoTrackrを用いる。AQP9 siRNAないしcontrol si RNAでRGC-5細胞を処理し、AQP9のノックダウンの細胞死ならびにアポトーシスに及ぼす影響を検討する。視神経挫滅モデルを用いて、網膜神経節細胞におけるAQP9発現の経時的変化と細胞死の経時的変化の関連を検討し、vivoにおけるAQP9発現と網膜神経節細胞の生存の因果関係を解析する。本年度は、モデル作成に費やした関係上、動物使用量が当初見込みより少なく、次年度使用額が発生した。次年度は、すでにモデルが確立しているため、数を増やして解析するため、動物購入・飼育数が計画書作成時より増えると予想され、次年度使用額は主にこれを充当するために使用する予定である。
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Research Products
(3 results)