2011 Fiscal Year Research-status Report
DNA塩基除去修復欠損マウスを用いた網膜光障害の分子病態解明
Project/Area Number |
23592570
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Research Institution | Shimane University |
Principal Investigator |
大平 明弘 島根大学, 医学部, 教授 (00169054)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
谷戸 正樹 島根大学, 医学部, 講師 (30284037)
海津 幸子 島根大学, 医学部, 助教 (00325052)
中別府 雄作 九州大学, 生体防御医学研究所, 教授 (30180350)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 酸化ストレス / 網膜光障害 / MTH1 / OGG1 / MUTHY |
Research Abstract |
散瞳した麻酔下の野生型マウス(C57BL6)に様々な波長・エネルギーの光を照射し、遺伝子欠損の影響を評価するために最適な条件を決定した(350-385nm、75 J/cm2)。照射は左眼に対して行い、右眼は未照射(対照)眼とした。網膜機能を評価するため、照射後1週間目に網膜電図(ERG)を測定した。また、眼球を摘出してパラフィン切片を作成、HE染色を行い、外顆粒層(ONL)の厚さを計測(視神経から100μm、以降500μmごとに4ヶ所、上下合計10か所)して組織構造変化を評価した。野生型マウス (n=7) では、対照眼と比較してERGのa-waveが54.9% (p < 0.001) に、b-waveが52.6%(p < 0.001) に減弱した。Ogg1(8-オキソグアニンDNAグリコシラーゼ)KOマウス (n=6) では、a-waveが71.7%(p < 0.05) に、b-waveが65.8%(p < 0.01) に減弱していたが、野生型と比較すると障害が抑制されていた。また、Mutyh(アデニン/2-ヒドロキシアデニンDNAグリコシラーゼ)KOマウス (n=6) では、a-wave が87.9%に、b-wave が80.5% (p < 0.05) に減弱していたが、a-waveでは有意差は見られず障害が抑制されていた。HE染色像でも、野生型、Ogg1 KO、Mutyh KOマウスのいずれにも視神経付近上方でONLの薄化が見られた。しかし、Mutyh KOマウスでは視神経から600μm上方で未照射眼と比較して障害が観察された (p < 0.05) のみで野生型と比較して障害が有意に抑制されていた。野生型、Ogg1 KOマウスの障害はほぼ同程度であった。以上の結果より、Mutyh遺伝子が網膜光障害抑制に特に重要な役割を果たしている可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
網膜光障害モデルの作製方法について、当初の計画では5,000ルクス、6~10時間の可視光照射を予定していた。しかし、この条件では障害が起きず、照射時間を最大5日間まで延長したが、実験に使用するために十分な障害が見られなかった。このため、新たな照射条件を検討する必要が生じた。 照射光の波長、照射エネルギー量などを変えて予備実験を行った結果、最終的に350~385nm の紫外線を網膜表面におけるエネルギー量が75 J/cm2となるように照射することで遺伝子欠損の影響を評価するのに最も適した障害が生じることが明らかとなった。 この網膜光障害モデル作製の条件を決定するための時間がかかったため、実験が当初の予定よりやや遅れているが、条件決定後は実験は順調に進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
Ogg1 KO、Mutyh KOマウス以外の遺伝子欠損マウスについて網膜光障害モデルを作成し、網膜光障害の発生機序における各遺伝子の役割について調べる。また、平成23年度の結果から、Mutyh遺伝子が網膜光障害抑制に重要な役割を果たしている可能性が示唆されたため、Mutyh遺伝子を含む二重遺伝子欠損マウスを中心に実験を進めていきたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成23年度は網膜光障害モデル作製の条件設定のために時間が取られ、遺伝子欠損マウスを用いた実験の開始が遅れた。このため、遺伝子欠損マウスの供給が当初の予定よりも少なくなり、維持・管理を担当していた中別府に繰越研究費が生じた。 照射条件設定が終了しているので、平成24年度は残りの遺伝子欠損マウスに対して実験を行うと共に、二重遺伝子欠損マウスについても同様の実験を行う。研究費はマウスの維持・管理と試薬などの消耗品に使用する予定である。
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