2012 Fiscal Year Research-status Report
感染性角膜潰瘍発症の分子機序に基づいた新たな治療薬の開発
Project/Area Number |
23592572
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
木村 和博 山口大学, 医学部附属病院, 講師 (60335255)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
園田 康平 山口大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (10294943)
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Keywords | 角膜 / 潰瘍 / 角膜線維芽細胞 / 性ホルモン |
Research Abstract |
感染性角膜潰瘍は,頻度が多くたとえ治癒してもしばしば角膜実質に永続的な混濁をきたし,著しい視力障害をきたすことがある.感染性角膜潰瘍は,感染初期なら抗菌剤による治療が容易であるが,ある程度進行した角膜潰瘍ではすぐには治癒にいたらず,さらに進行する例をしばしば臨床の場でみかける.このことは,病原微生物の死滅のみでは角膜潰瘍形成は十分に阻害できないことを意味する.本研究の目的は,角膜潰瘍の病態解明を行い,より特異的な治療法を模索検討し,新規治療薬を開発することである. 感染性角膜潰瘍の病態を考える上で,病原微生物による直接的な経路,角膜線維芽細胞を介する経路,浸潤してきた好中球を介する経路の関与を明らかにしてきた.中でも角膜線維芽細胞がサイトカイン,ケモカイン,接着分子,MMPsなど因子の発現,分泌を行い,角膜潰瘍の本態であるコラーゲン分解の中心的役割を果たす.本研究にてコラーゲン分解を検出する角膜線維芽細胞のI型コラーゲン三次元培養系において,女性ホルモンのエストロゲン,プロゲステロンがコラーゲン分解を有意に抑制することを明らかにした.一方で男性ホルモンのテストステロンには抑制作用は認められなかった.また,エストロゲン,プロゲステロンは、MMP-1,2,3及び9の発現、活性化を抑制した.これら女性ホルモンの作用するシグナル伝達経路を検討し,JNKを介する経路がその標的となっていることを明らかにした.エストロゲン,プロゲステロンの細胞増殖性および細胞毒性について検討したが,有効濃度で明らかな作用は認められなかった.これまでの研究で,性ホルモンについては免疫抑制作用は強くないことが明らかになっている.それ故、感染性角膜潰瘍の治療を考える上で感染病巣での免疫抑制することなく,特異的に実質コラーゲン分解のみを抑制する新しい薬剤のひとつとして有望であると考えている.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
角膜線維芽細胞のI型コラーゲン三次元培養系を用いて,In vitroでのコラーゲン分解抑制作用のある化合物をスクリーニングし,女性ホルモンのエストロゲン,プロゲステロンがコラーゲン分解抑制作用があることが明らかになった.これら化合物は,免疫抑制作用が弱く,感染性病巣に対して用いることが可能となる可能性が非常に高いため,当初の目的である化合物の同定がなされたと思われる.
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Strategy for Future Research Activity |
In vitroでの結果から,女性ホルモンのエストロゲン,プロゲステロンが感染性角膜潰瘍の治療薬として期待できると思われる.そこで,同定されたコラーゲン分解抑制作用のあるエストロゲン,プロゲステロンのin vivoでの角膜潰瘍形成モデルに対する作用を検討する.ウサギ角膜実質にLPSをinjectし角膜炎,角膜潰瘍を誘導する動物モデルを使用しこれら化合物を点眼あるいは内服投与でその作用を検討する.最終的に臨床応用へ進めて行きたいと考えている.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本年度における実験計画に大きな変更はなかったが,当初予定していた実験試薬の変更により,253,020円の未使用額が生じた.この未使用額については,平成25年度の実験試薬購入に充てることとする.
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Research Products
(3 results)