2011 Fiscal Year Research-status Report
包括的遺伝子発現解析による抽出遺伝子を標的とした糖尿病網膜症に対する治療薬の創製
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23592574
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
吉田 茂生 九州大学, 大学病院, 講師 (50363370)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石橋 達朗 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (30150428)
佐々 由季生 福岡大学, 医学部, 助教 (80580315)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | ペリオスチン / 核酸医薬 / 糖尿病網膜症 |
Research Abstract |
増殖糖尿病網膜症では網膜上に線維血管増殖組織(以下増殖組織)を生じ、その収縮に伴う牽引性網膜剥離が失明の原因となる。我々は増殖組織の進展に関する遺伝子レベルの知見を蓄え、新しい分子標的療法を開発する目的で、包括的トランスクリプトーム解析を行い、約100の増殖組織特徴的遺伝子群の抽出に成功した。本研究では、マトリセルラー蛋白であるペリオスチンを第一の標的として、siRNAを作製した。硝子体手術時に採取した増殖糖尿病網膜症患者硝子体中のペリオスチン濃度をELISA法で計測した。増殖組織の構成細胞の一つである培養ヒト網膜色素上皮細胞 (RPE)を用いて、TGFB2刺激によるペリオスチンの発現変化を、リアルタイム RT-PCR法、Westen blot法、ELISA法、免疫染色を用いて検討した。RPEの増殖能をBrdU 法、遊走能をCell migration 法、接着能をMTT 法、収縮能をCollagen gel contraction 法を用いて定量した。増殖糖尿病網膜症患者の硝子体液中ペリオスチン濃度は、対照群(網膜上膜、黄斑円孔)と比較して高値を示した(p<0.05)。TGFB2刺激によりRPE中のペリオスチンの発現が増加した(p<0.01)。増殖組織とTGFB2刺激RPE細胞では、ペリオスチンとaSMA陽性細胞が共染色された。TGFB2依存性の遊走、接着は、ペリオスチンSiRNAにより抑制された(p<0.05)。 以上の結果より、ペリオスチンは、増殖組織形成において、細胞の遊走や接着に関与することが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度ですでに、核酸のIn vitro導入の最適化を終了できた。マトリセルラー蛋白であるペリオスチンを第一の標的として、siRNAを作製した。構成細胞の一つである培養ヒト網膜色素上皮細胞 (RPE)を用いて、TGFB2刺激によるペリオスチンの発現変化を、リアルタイム RT-PCR法、Westen blot法、ELISA法、免疫染色を用いて検討した。増殖組織とTGFB2刺激RPE細胞では、ペリオスチンとaSMA陽性細胞が共染色された。ペリオスチンSiRNAの生物学的抑制効果について、増殖能をBrdU 法、遊走能をCell migration 法、接着能をMTT 法、収縮能をCollagen gel contraction 法を用いて定量した。TGFB2依存性の遊走、接着は、ペリオスチンSiRNA(10nM)により抑制された。以上の結果より、ペリオスチンは、増殖組織形成において、細胞の遊走や接着に関与することが示唆された。これらのin vitroの結果をふまえて、次年度以降に、ペリオスチンSiRNAの抑制効果をin vivoモデルを用いて検討する基盤が整った。
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Strategy for Future Research Activity |
a.マウス網膜血管新生モデルにおけるペリオスチンSiRNAによる網膜血管新生抑制効果我々がすでに頻用している再現性の高いマウス酸素負荷網膜血管新生モデルを用いる。血管新生誘導時にIn vitroで薬効を確認できたペリオスチンSiRNAを硝子体腔に注射する。至適濃度はIn vitroの結果を基準に決定する。血管新生誘導後5日にフラットマウントを作成して血管新生抑制効果を定量化する。この際、ペリオスチンKOマウスによる網膜血管新生モデルにおける血管新生抑制量をpositive controlとする。対照としてスクランブル配列核酸投与も行い、非特異的な効果についても検証する。血管新生誘導後5日に網膜電気生理学的検査(ERG)を行う。その後眼球摘出し、組織学的にも安全性を評価する。b.ウサギ増殖硝子体網膜症モデルにおけるペリオスチンSiRNAによる増殖組織抑制効果ウサギ実験的増殖硝子体網膜症モデルを作製する。有色ウサギより結膜細胞を分離培養後、硝子体手術を行い、結膜細胞を5x104個硝子体腔に注入する。ペリオスチンSiRNAを硝子体腔に注射あるいは4回/日の点眼を行う。術後1、3、7、14、28日目に眼底検査を行い、増殖硝子体網膜症の抑制度を評価し、治療効果を判定する。同時に前房水を採取し、ペリオスチンSiRNAの眼内での濃度を測定する。術後28日目に上記aと同様に安全性を評価する。薬効と安全性を確認出来たペリオスチンSiRNAについては特許申請を行い、知財化する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究経費の約2/3を実験動物、細胞培養などの消耗品費用にあてる。動物モデルを用いたペリオスチン核酸医薬の薬効検証は統計学的有意差を出すために必要数行う。さらに研究成果をThe Association for Research in Vision and Ophthalmologyなどの各種学会で発表するための旅費にもあてる。また、論文校閲料、投稿料など論文作成費にも用いる。
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[Journal Article] Increased expression of periostin in vitreous and fibrovascular membranes obtained from patients with proliferative diabetic retinopathy2011
Author(s)
Yoshida, S. Ishikawa, K. Asato, R. Arima, M. Sassa, Y. Yoshida, A. Yoshikawa, H. Narukawa, K. Obika, S. Ono, J. Ohta, S. Izuhara, K. Kono, T. Ishibashi, T.
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Journal Title
Invest Ophthalmol Vis Sci
Volume: 52
Pages: 5670-8
DOI
Peer Reviewed
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