2011 Fiscal Year Research-status Report
徐放作用を有する網膜接着糊を用いた網膜剥離および虚血性網膜疾患の治療法
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23592576
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Research Institution | Saga University |
Principal Investigator |
平田 憲 佐賀大学, 医学部, 准教授 (60295144)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 網膜剥離 / 硝子体手術 / 網膜接着糊 / mTG / トランスグルタミナーゼ |
Research Abstract |
平成23年度の実験計画では、1. mTGの毒性試験、適正濃度、基剤の決定および 2. 家兎眼に対する手術 とした。1. mTGの毒性試験、適正濃度、基剤の決定: 家兎眼の硝子体腔内に0.01U/0.1ml, 0.1U/0.1ml, 1ml/0.1mlのmTGを注入し、1、3、7、14日後に網膜電図を測定し、網膜の機能的評価を行った。いずれの濃度においても網膜電気生理学的異常は認められなかった。眼摘後の光学顕微鏡的検討においても、形態的異常を認めなかった。新鮮摘出豚眼を用いた網膜接着剤としての探索を目的とした検討では、bovine gelatinのみが有用であると判明した。2. 家兎眼に対する手術: 眼科学教室に設置した硝子体手術システムを用い、1.麻酔、2. 23Gシステムによる硝子体切除、人工的後部硝子体剥離の作製、3.23Gバックフラッシュニードルによる意図的網膜裂孔および網膜剥離の作製、4.液体パーフルオロカーボンによる網膜伸展、および液空気置換による灌流液除去、5.基剤とmTG混合液の網膜裂孔表面への貼付、6.パーフルオロカーボンの除去と硝子体腔内への灌流液充填、縫合 の手順を行った。手術後は1、3、7日にtopical endoscopy fundus imaging法による眼底観察と光干渉断層計による検討を行い、摘出眼の光学顕微鏡、および走査型電子顕微鏡用的評価を行った。手術後1週以上におよび基剤(gelatin)とmTG混合液が網膜上に残存し、網膜裂孔部位を被覆していた。網膜剥離は検討した個体全てで復位を認めた。一方基材のみを塗布した個体では網膜裂孔の被覆には至らなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1. mTGの毒性試験、適正濃度、基剤の決定の項において、 mTGの低侵襲性が認められ、bovine gelatinが有用な接着剤の基材として同定された。2. 家兎眼に対する手術についてもtopical endoscopy fundus imaging法を用いた新たな手術法も確立することができ、さらに術後の眼底観察と光干渉断層計による検討により基剤(gelatin)とmTG混合液が網膜剥離の治療手段としての可能性を秘めていることが示唆された。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は以下の検討を行う予定である。1. ヒアルロン酸ーコンドロイチン硫酸混合眼科用粘弾性物質(OVD)を用いた網膜剥離復位の検討:先の検討で確立した手法を用い、あらたな接着剤としてヒアルロン酸ーコンドロイチン硫酸混合OVDを用いる。2. 実験的網膜静脈分枝閉塞症モデル(modified from Genevois et al. IOVS 2004)と網膜血管の組織学的検討Brown Norway rat (adult male)を用い,ketamin,xylazineにて全身麻酔の後、網膜静脈に対し光凝固を行う。スリットランプ下に前置レンズを用い眼底を観察した後、上方の網膜静脈に対し,約4乳頭径はなれた部位でレーザー光凝固を施行する(照射条件; power: 100-150nm, duration: 500mseconds, spot size: 50μm, wave length: 534nm)。2-5発の範囲で完全な網膜静脈の閉塞を確認する。光凝固の後血流の途絶の有無について、topical endoscopy fundus imaging下で蛍光眼底造影を行いながら確認する。網膜組織の検討には一般的な切片作製による検討に加え,レクチン染色による血管内染色法により光学顕微鏡的な血管構築の変化を観察する。またさらに微細構造の観察のために透過型電子顕微鏡による観察と、我々が過去におこなったvibratomeによるマイクロスライス法を用いた網膜血管の内腔の走査型電子顕微鏡に夜観察も行う。血管内皮の構造特に血管透過性亢進の原因となる内皮細胞間のgap構造、fenestrationの有無,vesico-vacuolar organellaの有無を調べる。側副路の有無は血管内皮の構造観察とともに基底膜、pericyteの存在とその構造についても検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究費の主たる使途は実験動物および試薬に900,000を計上した。その他成果発表(学会旅費および論文投稿用)に充てる予定である。
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Research Products
(3 results)