2011 Fiscal Year Research-status Report
RNAi法を用いた網膜における神経ステロイド代謝酵素の機能解析
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23592584
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Research Institution | Wakayama Medical University |
Principal Investigator |
伊藤 隆雄 和歌山県立医科大学, 医学部, 助教 (30315931)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鶴尾 吉宏 和歌山県立医科大学, 医学部, 教授 (90207449)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 網膜 / 神経ステロイド |
Research Abstract |
神経ステロイドは、中枢神経組織で生合成・代謝されるステロイドホルモンであり、神経伝達物質、神経成長因子などの様々な作用を示して、神経機能を調節する。近年、脳内と同様に、網膜内でも神経ステロイドが合成されることが報告されている。本研究は、網膜において産生される神経ステロイドの一連の代謝経路を、ステロイド代謝酵素の局在と発現動態を統合的に解析することによって、網膜の発生と視機能調節に神経ステロイドがどのように関与しているのかを明らかにすることを目的としている。これらを明らかにするために、ステロイド代謝酵素特異抗体を用いた組織化学的手法、およびウエスタンブロットやreal time PCRといった分子生物学的手法を駆使して研究を行う。本年度は、まず正常ラット網膜において、神経ステロイド代謝に関与する酵素が、網膜を構成する6種類の神経細胞とグリア細胞であるミュラー細胞のいずれかの細胞に存在するのかを特定し、さらに発生に伴う発現の変化を解析すること中心に研究を進めた。アンドロゲンの合成・代謝に関与する酵素である5βーリダクターゼについて、特異抗体を作製し、抗体の特異性をウエスタンブロット、および免疫組織染色により確認した後に、網膜における発現を免疫組織学的に検討した。成熟ラットではミュラー細胞の突起と細胞体、および視細胞に認められた。また生後1日の未成熟な網膜の神経節細胞層にも陽性反応が認められた。アマクリン細胞にも、生後2週頃に陽性反応が認められた。これらの細胞の陽性反応には、いくつかの発現パターンが認められた。これらの結果およびこれまでの研究結果から、網膜内の神経ステロイドは、脳内と同様に様々な神経機能の調節に関与していることが推察される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究初年度にあたる本年は、正常網膜における神経ステロイド代謝酵素の局在、および発現の変化について、研究を行うことを計画した。これまでの研究結果、および本年の研究結果により、いくつかの神経ステロイド代謝酵素の局在について明らかになり、また、現在も進行中の研究もあわせるとおおむね順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
交付申請書に記載した研究実施計画に沿って、研究を進めていく。次年度においては、本年度の研究によって得られたデータをもとに、RNAi法によるステロイド代謝酵素の遺伝子解析の研究手法を確立することを中心に進め、さらに研究最終年度にかけて、網膜変性疾患モデル動物を用いた神経ステロイドの発現とその変化について研究を行い、さきに正常網膜での局在解析で得られた所見と比較対比して、変性疾患モデルにおけるステロイド代謝酵素の生理作用について解析する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本年度で得られた結果を基にして、RNAi法によるステロイド代謝酵素の遺伝子解析を中心に研究を進める。本年度の結果から、遺伝子発現を制御するステロイド代謝酵素とその発現制御の期間を検討し、胎生期から生後および成熟期、老齢期に至る発達過程において、網膜組織形成に対する酵素の役割、視機能調節に係る役割について順次解析を行う。
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Research Products
(1 results)