2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23592604
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
橋田 徳康 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (30456959)
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Keywords | リポソーム / 光感受性 / ドラッグデリバリーシステム / ぶどう膜炎 |
Research Abstract |
光感受性リポソームの光照射による破壊実験: H24年度までに、ベルテポルフィンを光感受性物質とした光感受性リポソームの作成に成功し、物性レベルにおいてレーザー光照射により内包薬物が放出される研究成果を得た。本年度は、in vitroでその効果を確かめた。シスプラチン内包光感受性リポソームと大腸癌の培養細胞株であるColon26細胞を用いて、光照射により放出されたシスプラチンの癌細胞増殖抑制効果を調べた。その結果、光照射なしでは、シスプラチンが放出されず増殖抑制効果がなかったが、光照射群では強い細胞抑制効果が得られた。光照射によるリポソームの破壊に関して特許申請準備中である。 リポソームの薬理効果の解析: リポソーム内包薬物を変えて薬理効果を調べ、様々な薬物がその薬効を発揮できるか調べた。薬物の候補として、ステロイドだけでなくぶどう膜炎に発症に重要な役割を果たすマクロファージをピンポイントに標的とするクロドロン酸を内包したリポソームを作成し、その薬物動態を解析した。腹腔内投与と静脈投与による検討では、静脈投与の抑制効果が高かった。実験的自己免疫性ぶどう膜炎(EAU)を作成し、クロドロン酸内包リポソームを静脈内投与するとマクロファージが抑制され消炎すると予想されたが、予想に反して炎症は増悪した。血球分画を調べると好中球が明らかに上昇していた。脾臓の有意な委縮を認めた。EAUマウスは、ヒトぶどう膜炎のモデル動物であり、脈絡膜を主体としたぶどう膜炎を起こすが、このモデルでは網膜浅層が障害された。腸管、特に回腸・盲腸に炎症がみられ眼所見と合わせベーチェット病のマウスモデルになる可能性が示唆された。 クロドロン酸内包リポソームのEAUマウスのmiRNAに及ぼす影響の解析:クロドロン酸内包リポソームをEAUマウスに静脈内投与しmiRNAとその標的mRNAの発現解析を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
光感受性リポソームに関して、物性解析で、光照射により内包薬物が破壊され放出されることを確認し、in vitroで内包薬物が薬理効果を発揮することを明らかにできた。光照射により自由に思いのままにリポソームを破壊する概念はなく、既存のリポソームに比較して新捗性があり特許申請に向けて準備中である。 クロドロン酸内包リポソームをEAUマウスに投与する実験では、当初の予想に反して炎症が増悪する結果が得られた。理由の解析の中で、感染がない状態で好中球が上昇する病態と、眼の網膜浅層における炎症、回盲部の炎症細胞浸潤を偶然にも発見し、ベーチェット病のモデルマウスを作成できる可能性のあるデータが得られている。EAUマウスは、確かにヒトぶどう膜炎のマウスモデルであり、眼に炎症は起こるが腸管には炎症は起こらず、さらにこの炎症モデルのeffector細胞はT細胞であり厳密な意味でのベーチェット病のモデル動物ではない。今回、明らかになった事実を、さらに解析することにより、難病にも指定されている疾患のモデル動物を作成し、疾患の病態解析や薬物の開発につながる大きな成果をもたらす可能性がある。
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Strategy for Future Research Activity |
大腸癌の細胞株でのシスプラチン内包リポソームの細胞抑制効果が得られたので、H25年度は担癌マウスモデル(ヌードマウスに皮膚癌の癌細胞を移植したもの)を用いて、光照射を行い抗癌作用が発揮されるかin vivoで検証する。 クロドロン酸内包リポソームの実験では、全身臓器の病理を詳細に解析することと、眼局所に好中球の浸潤がみられるか解析する。血球成分を解析し、厳密にeffector細胞の同定を行う。miRNAの解析では標的とされるmRNAの同定を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
H25年度の解析に必要なリポソームは既に作成し終えたので、それらを用いて主にin vivoにおける解析をすることと、一部miRNAやmRNAの発現解析に使用する予定である。一部、研究成果の発表のためと、交通費・海外渡航費、特許申請のために使用する予定である。
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Research Products
(10 results)