2011 Fiscal Year Research-status Report
網膜神経細胞障害における神経分泌タンパク質VGFの保護機構に関する研究
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23592612
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Research Institution | Gifu Pharmaceutical University |
Principal Investigator |
嶋澤 雅光 岐阜薬科大学, 薬学部, 准教授 (80381721)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
原 英彰 岐阜薬科大学, 薬学部, 教授 (20381717)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 緑内障 / 網膜神経節細胞 / 小胞体ストレス |
Research Abstract |
申請者らは網膜神経節細胞死に小胞体ストレス負荷を介した機序が関与しているという仮説に基づき研究を進め、その網膜障害時に小胞体ストレスが誘導されることを初めて明らかにした。さらに、in vitroスクリーニングにより小胞体ストレス細胞死を抑制する新規化合物を見出し、それらの中で保護作用の最も強力であった化合物の作用機序の解析から、その保護作用が神経栄養因子により誘導される神経分泌タンパク質であるVGF nerve growth factor inducible (VGF)遺伝子の発現を介していることを明らかにした。本研究ではこれまでの研究成果を発展させ、網膜障害におけるVGFの関与およびその機序を解明すること、さらにVGFの新規治療ターゲットとしての可能性を実験的緑内障モデルを用いて検証する。即ち、(1)正常網膜および視覚路におけるVGFの発現および網膜障害時の変化を検討する。(2)培養網膜神経節細胞および急性網膜障害モデルにおけるVGF活性ペプチドおよびVGF siRNAによる発現抑制の作用を検討する。(3)VGF遺伝子導入マウス用いて急性網膜障害および慢性緑内障モデルにおける網膜・視覚中枢障害に対する作用を明らかにする。VGF活性ペプチドであるVGF588-617 (AQEE30)は糖鎖修飾阻害剤であるツニカマイシンにより誘発した小胞体ストレスによる神経細胞障害に対して0.1 microMより保護作用を示し、ヒト変異SOD1を細胞に導入することにより小胞体ストレスを誘導した際の神経細胞障害に対して0.01 microM以上の濃度において保護作用を示した。さらに、VGF588-617は細胞生存促進因子であるAktのリン酸化亢進作用を示した。これらのことから、VGFは細胞生存シグナルを活性化することにより神経細胞保護作用を発現していることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題において、検討項目に上げた3項目の進行状況を以下に述べる。(1)正常網膜および視覚路におけるVGFの発現および網膜障害時の変化を検討に関して、自然発症マウス緑内障モデルの網膜・視神経および脳の経時的(6-18ヶ月齢)なサンプリングを正常マウスと合わせて終了している。さらに、サルレーザー誘発緑内障モデルについても13週後の網膜・視神経および脳のサンプルの採取を終了し、凍結薄切標本の作製を終了した。現在、VGFの発現について免疫染色により検討を進めている。(2)培養網膜神経節細胞および急性網膜障害モデルにおけるVGF活性ペプチドおよびVGF siRNAによる発現抑制の作用を検討に関して、VGF活性ペプチドがin vitroにおいて神経細胞に対して保護作用を示すことを確認した。現在、急性網膜障害モデルに対する作用について確認を進めている。(3)VGF遺伝子導入マウス用いて急性網膜障害および慢性緑内障モデルにおける網膜・視覚中枢障害に対する作用に関して、VGF遺伝子導入マウスの作製を進めている。現在、F0マウスを6匹(雄3匹、雌3匹)誕生させることに成功した。各ラインのマウスを交配し、F1マウスの誕生を確認した後に、それらを用いて網膜障害に対する作用を検討する予定である。以上、本研究課題は慢性モデルを用いるために組織サンプリングに少し時間を要したが、予定通り順調に進んでおり着実に研究成果が得られている。
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Strategy for Future Research Activity |
研究概要において検討項目に上げた3項目について下記の通り継続して研究を進める(1)正常網膜および視覚路におけるVGFの発現および網膜障害時の変化を検討に関して、昨年度に既にサンプル採取が終了したマウス正常および緑内障モデルおよびサル緑内障モデルの網膜・視神経および脳におけるVGFの発現を免疫染色により検討する。(2)培養網膜神経節細胞および急性網膜障害モデルにおけるVGF活性ペプチドおよびVGF siRNAによる発現抑制の作用を検討に関して、網膜神経細胞にけるVGFの保護作用機序の検討および急性網膜障害モデルに対するVGFの作用について検討を進める。急性網膜障害モデルとしてゼブラフィッシュを用いて虚血におけるVGFペプチド等の検討についても実施する。(3)VGF遺伝子導入マウス用いて急性網膜障害および慢性緑内障モデルにおける網膜・視覚中枢障害に対する作用に関して、VGF遺伝子導入マウス(F0)の交配を進め、F1マウスの誕生を確認した後に、それらを用いて網膜障害に対する作用を検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度において、急性網膜障害モデルおよびVGF遺伝子導入マウスの交配・繁殖のために購入するマウス、VGFペプチド、VGF siRNA、抗VGF抗体および細胞培養に必要な消耗品等に使用する。
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[Journal Article] An alteration in the lateral geniculate nucleus of experimental glaucoma monkeys: In vivo positron emission tomography imaging of glial activation.2012
Author(s)
Shimazawa M., Ito Y., Inokuchi Y., Yamanaka H., Nakanishi T., Hayashi T., Ji B., Higuchi M., Suhara T., Imamura K., Araie M., Watanabe Y., Onoe H. and Hara H.
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Journal Title
PLoS ONE
Volume: 7
Pages: e30526
DOI
Peer Reviewed