2011 Fiscal Year Research-status Report
ヒアルロン酸とコラーゲン及び上皮細胞成長因子を組み合わせた新規癒着防止膜の開発
Project/Area Number |
23592653
|
Research Institution | Kitasato University |
Principal Investigator |
根本 充 北里大学, 医学部, 講師 (20276083)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
熊澤 憲一 北里大学, 医学部, 助教 (60383618)
黒柳 能光 北里大学, 医療衛生学部, 教授 (80170140)
|
Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
|
Keywords | 癒着防止 / 腱損傷 |
Research Abstract |
本研究はヒトの手指屈筋腱構造と類似するニワトリの第3趾の屈筋腱を用いて実験モデルを作成し、癒着防止膜の腱縫合部への治癒促進効果と癒着防止効果を明らかにするを目的とした。平成23年度はニワトリ(レグホン2ヶ月齢)を実験モデルとし吸入麻酔薬(イソフルラン)で麻酔した後、第3趾のPIP関節部からDIP関節の皮膚をNo15メスで切開して腱鞘および屈筋腱を露出させる。ここまでを癒着防止膜を適用する前の基本処置とし、各種腱鞘損傷モデル(各群10羽)を作成した。Ia群:腱鞘を切除しヒアルロン酸/コラーゲン癒着防止膜を挿入して閉創した。対象(Ib群)は腱鞘を切除し、癒着防止膜を挿入しないものとした。IIa群:腱鞘切除部位に上皮細胞成長因子(EGF)含有ヒアルロン酸水溶液(癒着防止補助材)を適用してからヒアルロン酸/コラーゲン癒着防止膜を挿入して閉創した。対象(IIb群)は腱鞘切除部位に癒着防止補助材と癒着防止膜を適用しないものとした。4週間の固定後、静脈麻酔薬大量投与により安楽死させ、腱、腱鞘の癒着および滑走状態を肉眼的、組織学的に検討した。ここまでの結果で癒着防止効果が認められたので、より臨床に近い状態にするために以下の群を追加した。III群:腱鞘切開+癒着防止膜+腱鞘修復 IV群:腱鞘切開+癒着防止補助材+癒着防止膜+腱鞘修復癒着防止膜を適用した腱鞘損傷部(I、III群)は対照群と比べ、肉眼的、組織学的に癒着防止膜が介在しており、癒着防止効果が確認できた。癒着防止膜に癒着防止補助材を併用したIII、IV群でも肉眼的、組織学的に癒着防止効果が確認できた。術後4週での組織学的評価では癒着防止補助材の創傷治癒効果は判定できなかったが、ヒアルロン酸/コラーゲン癒着防止膜本体の癒着防止効果は明らかであり、これらの研究成果を第55回日本手外科学会学術集会で発表した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成23年度はニワトリ(レグホン2ヶ月齢)を実験モデルとし、癒着防止膜および癒着防止補助材の各種腱鞘損傷モデルにおける癒着防止効果の評価を行った。当初は以下のモデルを作成した。Ia群:腱鞘を切除しヒアルロン酸/コラーゲン癒着防止膜を挿入して閉創した。対象(Ib群)は腱鞘を切除し、癒着防止膜を挿入しないものとした。IIa群:腱鞘切除部位に上皮細胞成長因子(EGF)含有ヒアルロン酸水溶液(癒着防止補助材)を適用してからヒアルロン酸/コラーゲン癒着防止膜を挿入して閉創した。対象(IIb群)は腱鞘切除部位に癒着防止補助材と癒着防止膜を適用しないものとした。ここまでの結果で癒着防止効果が認められたので、臨床に近い状態にするために以下の群を追加した。III群:腱鞘切開+癒着防止膜+腱鞘修復 IV群:腱鞘切開+癒着防止補助材+癒着防止膜+腱鞘修復平成23年度に計画していた研究は予定通り遂行した。癒着防止膜を適用した腱鞘損傷部(I、III群)は対照群と比べ、肉眼的、組織学的に癒着防止膜が介在しており、ヒアルロン酸/コラーゲン癒着防止膜の癒着防止効果が確認できた。癒着防止膜に癒着防止補助材を併用したIII、IV群でも肉眼的、組織学的に癒着防止効果が確認できたが癒着防止膜単独適用群(I、II群)との差異は明らかにならなかった。腱、腱鞘の創傷治癒促進効果を目的とした上皮細胞成長因子(EGF)含有ヒアルロン酸水溶液の適用効果は術後4週では評価が困難であり、術後8週、12週など長期的な組織学的評価が必要である。平成23年度の研究目的はおおむね順調に進展しており、研究成果の一部は第55回日本手外科学会学術集会で発表した。次年度は癒着防止膜および癒着防止補助材の腱損傷モデルへの適用を予定している。
|
Strategy for Future Research Activity |
前年度の腱鞘損傷モデルで癒着防止膜の癒着防止効果が明らかとなったので、より臨床に近付けるために腱損傷モデルを作成し、以下の研究(各群20羽)を追加する。V群(20羽40肢)Va:腱鞘を切除し、深趾屈筋腱を切断後6-0ナイロン糸で腱縫合(2-strands:intratendinous suture)し、癒着防止膜で腱縫合部を包み込み、腱鞘を修復しないで閉創する(20肢中20 肢)。 Vb:対象群は癒着防止膜を適用しないもの(対側の20肢)。VI群(20羽40肢)VIa: 腱鞘を切除し、深趾屈筋腱を切断後に腱縫合し、腱縫合部に癒着防止補助材を適用してから癒着防止膜で腱縫合部を包み込み、腱鞘を修復しないで閉創する(20 肢)。VIb: 対象群は腱鞘を切除し、深趾屈筋腱を切断後腱縫合し、腱縫合部に癒着防止補助材のみを適用するもの(対側の20肢)。VII群(20羽40肢)VIIa: 腱鞘を切開し、深趾屈筋腱を切断後腱縫合し、癒着防止膜で腱縫合部を包み込み、腱鞘を修復してから閉創する(20肢中20 肢)。 VIIb: 対象群は癒着防止膜を適用しないもの(対側の20肢)。VIII群(20羽40肢)VIIIa: 腱鞘を切開し、深趾屈筋腱を切断後腱縫合し、腱縫合部に癒着防止補助材を適用してから癒着防止膜で腱縫合部を包み込み、腱鞘を修復して閉創する(20肢中20 肢)。 VIIIb: 対象群は癒着防止補助材を適用するが癒着防止膜は適用しないもの(対側の20肢) 各群で術後4週、8週、12週の肉眼的、組織学的評価を行うほかに引張試験機で縫合した屈筋腱の関節可動域(滑走距離)及び力学的評価を行う。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本研究に用いる癒着防止膜は北里大学人工皮膚研究開発センターで製造するため、癒着防止膜製造に関する設備備品の新たな購入は不要である。消耗品費に癒着防止膜や癒着防止補助材の基材であるアテロコラーゲン、ヒアルロン酸、上皮細胞成長因子(EGF)の費用を計上している。実験モデルに用いるニワトリは1年間に80羽が必要であるが予備用の10羽を加え年間90羽分を計上している。ニワトリの実験、飼育を行う場所は北里大学遺伝子高次機能解析センターの中大動物エリアに確保されており、年間90羽の収容能力を十分に要している。また、実験に伴う吸入麻酔薬、手術用縫合糸、手術用メスを消耗品費に計上している。特に腱縫合を行う6-0ナイロン糸はニワトリの屈筋腱に対する操作性を考えて特注品として計上した。実験に使う手術器械は特殊なものを必要しないが、ニワトリ足趾は組織硬度が非常に硬いので、手術用剪刀、摂子などの手術用小物の消耗が激しく実験に使用する手術小物を備品として計上する。実験結果を評価するための組織標本作製に関連する薬品、備品、また関節可動域(腱滑走距離)、力学的評価に用いる引張試験機は北里大学医学部形態系研究室及び生化学系研究室に備えてある共用ものを使用するため、経費を必要としない。旅費は研究成果を国内外で発表するための国内、外国旅費を計上している。また、平成24年度には英文による論文投稿を予定しているので、英文校閲の謝金、その他の経費に投稿料、印刷費を計上している。
|
Research Products
(11 results)