2012 Fiscal Year Research-status Report
ヒアルロン酸とコラーゲン及び上皮細胞成長因子を組み合わせた新規癒着防止膜の開発
Project/Area Number |
23592653
|
Research Institution | Kitasato University |
Principal Investigator |
根本 充 北里大学, 医学部, 講師 (20276083)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
熊澤 憲一 北里大学, 医学部, 助教 (60383618)
黒柳 能光 北里大学, 医療衛生学部, 教授 (80170140)
|
Keywords | 癒着防止 / 腱損傷 |
Research Abstract |
本研究はヒトの手指屈筋腱構造と類似するニワトリの第3趾の屈筋腱を用いて実験モデルを作成し、癒着防止膜の腱縫合部への治癒促進効果と癒着防止効果を明らかにすることを目的とした。平成23年度の腱鞘損傷モデルでヒアルロン酸/コラーゲン癒着防止膜の肉眼的、組織学的な癒着防止効果が確認できたので平成24年度は屈筋腱縫合モデルに癒着防止膜を適用して癒着防止効果について評価を行った。実験はニワトリを吸入麻酔薬で麻酔した後、第3趾のPIP関節部からDIP関節の皮膚、腱鞘を切開し屈筋腱を切断後6-0ナイロン糸で腱縫合(2-strands)を行った。ここまでを癒着防止膜適用前の基本処置とし、各種腱縫合モデル(各群10羽)を作成した。Va群は腱縫合部をヒアルロン酸/コラーゲン癒着防止膜で包み込み、腱鞘を修復しないで閉創した。Vb群(対照)は癒着防止膜を適用しないで閉創したものとした。VIa群は細胞成長因子(EGF)含有ヒアルロン酸水溶液(癒着防止補助材)を適用してから癒着防止膜で腱縫合部を包み込み、腱鞘を修復しないで閉創した。VIb群(対照)は腱縫合部に癒着防止補助材のみを適用し、腱鞘を修復しないで閉創した。4週間の固定後、静脈麻酔薬大量投与により安楽死させ、腱、腱鞘の癒着および滑走状態を肉眼的、組織学的に検討した。癒着防止膜を適用した腱縫合部(Va群)には対照(Vb群)と比べ、肉眼的、組織学的に癒着防止膜が介在しており、癒着防止効果が確認できた。癒着防止膜に癒着防止補助材を併用したVIa群でも肉眼的、組織学的に癒着防止効果が確認できた。術後4週での組織学的評価では癒着防止補助材の創傷治癒効果(Va群とVIa群との差異)は判定できなかったが、ヒアルロン酸/コラーゲン癒着防止膜本体の癒着防止効果は明らかであり、これらの研究成果を第56回日本手外科学会学術集会にて発表した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成24年度は屈筋腱縫合モデルに癒着防止膜を適用して癒着防止効果について評価を行った。実験はニワトリ(レグホン2ヶ月齢)の第3趾PIP関節部からDIP関節の皮膚をNo15メスにて切開して腱鞘および屈筋腱を露出させ、腱鞘を切開し屈筋腱を切断後6-0ナイロン糸で腱縫合(2-strands)を行い、各種腱縫合モデル(各群10羽)を作成した。 Va群:腱縫合部をヒアルロン酸/コラーゲン癒着防止膜で包み込み、腱鞘を修復しないで閉創した。Vb群(対照):癒着防止膜を適用しないで閉創したものとした。VIa群:細胞成長因子(EGF)含有ヒアルロン酸水溶液(癒着防止補助材)を適用してから癒着防止膜で腱縫合部を包み込み、腱鞘を修復しないで閉創した。VIb群(対照):腱縫合部に癒着防止補助材のみを適用し、腱鞘を修復しないで閉創した。4週間の固定後、静脈麻酔薬大量投与により安楽死させ、引張機による関節可動域検査を行った後、腱、腱鞘の癒着および滑走状態を肉眼的、組織学的に検討した。腱縫合部に癒着防止膜を適用したVa群は対照(Vb群)と比べ、肉眼的、組織学的に癒着防止膜が介在しており、癒着防止効果が確認できた。癒着防止膜に癒着防止補助材を併用したVIa群でも肉眼的、組織学的に癒着防止効果が確認できた。引張機よる関節可動域検査において癒着防止膜を適用したVa群、VIa群では対照群(Vb群、VIb群)と比べると関節可動域が得られたが、健常なニワトリの関節可動域と比べると大きな差異があった。今後は関節可動域制限の原因検索と術後4週での組織学的評価では癒着防止補助材の創傷治癒効果(Va群とVIa群との差異)は判定できなかったので術後1週、2週、3週、4週などの経時的な組織学的評価が必要である。これらの研究成果の一部は第56回日本手外科学会学術集会にて発表した。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成24年度の腱縫合モデルで肉眼的、組織学的には癒着防止膜の癒着防止効果が明らかとなった。しかし、術後4週での組織学的評価において癒着防止補助材の創傷治癒効果(Va群とVIa群との差異)は判定できなかったので術後1週、2週、3週、4週などの経時的な組織学的評価を行う。また、引張機を用いた関節可動域測定による屈筋腱の滑走状態の評価では癒着防止膜を適用した腱縫合モデルの滑走状態は健常なニワトリ屈筋腱の滑走状態(関節可動域)より劣っており、その原因を検索するとともに実験手技や癒着防止膜の改良を検討する。 (1)術後4週での組織学的評価において癒着防止補助材である細胞成長因子(EGF)含有ヒアルロン酸水溶液の効果が判定できなかったので腱縫合部をヒアルロン酸/コラーゲン癒着防止膜で包み込み、腱鞘を修復しないで閉創した群(Va群に相当)と細胞成長因子(EGF)含有ヒアルロン酸水溶液(癒着防止補助材)を適用してから癒着防止膜で腱縫合部を包み込み、腱鞘を修復しないで閉創した群(VIa群に相当)の実験モデルを作成する。術後1週、2週、3週、4週と経時的な組織学的評価を行う。(2)関節可動域測定による屈筋腱の滑走状態の評価では癒着防止膜を適用した腱縫合モデルでは健常なニワトリ屈筋腱の滑走状態(関節可動域)より劣っており、その原因を検索する。これまでの実験では4週間の固定期間直後に関節可動域検査を行っており、より臨床に近づけるために3週間固定した後、ギプスを外して自動運動をさせてから滑走状態(関節可動域)の評価を行う。滑走状態の評価時期は術後3週、6週、8週、12週とする。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本研究に用いる癒着防止膜は北里大学人工皮膚研究開発センターで製造するため、癒着防止膜製造に関する設備備品の新たな購入は不要である。消耗品費に癒着防止膜や癒着防止補助材の基材であるアテロコラーゲン、ヒアルロン酸、上皮細胞成長因子(EGF)の費用を 計上している。実験モデルに用いるニワトリは1年間に40羽が必要であるが予備用の10羽を加え年間50羽分を計上している。ニワトリの実験、飼育を行う場所は北里大学遺伝子高次機能解析センターの中大動物エリアに確保されており、年間50羽の収容能力を十分に要している。また、実験に伴う吸入麻酔薬、手術用縫合糸、手術用メスを消耗品費に計上している。特に腱縫合を行うナイロン糸は ニワトリの屈筋腱に対する操作性を考えて特注品として計上した。実験に使う手術器械は特殊なものを必要しないが、ニワトリ足趾は 組織硬度が非常に硬いので、手術用剪刀、摂子などの手術用小物の消耗が激しく実験に使用する手術小物を備品として計上する。実験結果を評価するための組織標本作製に関連する薬品、備品、また関節可動域(腱滑走距離)、力学的評価に用いる引張試験機は北里大学医学部形態系研究室及び生化学系研究室に備えてある共用ものを使用するため、経費を必要としない。旅費は研究成果を国内外で発表するための国内、外国旅費を計上している。また、平成25年度には英文による論文投稿を予定しているので、英文校閲の謝金、その他の経費に投稿料、印刷費を計上している。
|
Research Products
(5 results)