2011 Fiscal Year Research-status Report
幹細胞とコラーゲン架橋を導入した無細胞真皮マトリックスによる結合組織の再生
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23592658
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Research Institution | Nippon Medical School |
Principal Investigator |
高見 佳宏 日本医科大学, 医学部, 准教授 (30201601)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 結合組織 / 再生医学 / 幹細胞 / 脂肪組織 / 無細胞真皮 |
Research Abstract |
無細胞化した皮膚真皮(無細胞真皮マトリックス:Acellular Dermal Matrix:ADM)の主成分であるI型コラーゲンは、生体における普遍的な結合組織線維である。このことからADMは皮膚以外のさまざまな結合組織を誘導しうる移植材料として、その効果が示唆されてきた。しかしADMは移植後の組織吸収が避けられない。ADMの移植後の組織吸収を抑制し、より安定した移植特性を得る方法としては、ADM(コラーゲン分子)の架橋、他の細胞外マトリックス成分の付加、種々の細胞成分の組み込みなどが考えられる。平成23年度、研究者は、ADMに脂肪組織由来の体性幹細胞を組み込むことで、ADMの移植後の安定性が向上するかどうかについて、ラットのアキレス腱欠損モデルを用いた検討を行った。【方法】Fischerラットの背部分層皮膚(18/1000 inch)をTrypsin処理にて無細胞化しADMを作製した。Fischerラットの鼠径部Fat padからcollagenase (type I)処理によって幹細胞を分離・培養し、第3系代の細胞をADMに組み込んだ。幹細胞を組み込んだADMをFischerラットのアキレス腱切除部(1cm長)に移植した。幹細胞を組み込まないADMの移植を対照とした。移植後4週の腱再生を、肉眼的、組織学的に検討した。【結果】幹細胞を組み込むことで、移植ADMに対する炎症細胞浸潤が抑制され、より正常腱に類似した腱再生が認められた。【結論・意義】以上の結果からADMに対する幹細胞の組み込みが、移植後の安定性を増強する可能性が強く示唆された。本研究結果は、無細胞化した同種組織を用いた組織再生治療の可能性を拡大する意義を有するものと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究において本年度(研究補助初年度)に達成しえた諸点は以下の通りである。1 皮膚の完全な無細胞化すなわち 無細胞真皮マトリックス(Acellular dermal matrix: ADM)の作製. 2 無細胞真皮マトリックスの性状評価. 3 脂肪由来幹細胞の分離培養・脂肪由来幹細胞の凍結保存. 4 ADMへの幹細胞の組み込み、移植4週後の細胞同定. 5 ラット・アキレス腱欠損・移植モデルの確立 6 幹細胞を組み込んだADMの腱欠損部への移植とその分析. 7 ADMによる腱組織再生における幹細胞の効果. 8 ADMのコラーゲン架橋とその効果について予備的な検討.以上のように本年度で達成あるいは確立しえた諸点は、ほぼ当初の研究計画に沿ったものであるので、上記の区分(2)であると考えられた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は幹細胞の組み込みとコラーゲン架橋によるADMの移植特性の変化について以下のような検討を進める予定である。(1)無細胞真皮マトリックス(ADM)を0.1%、0.2%、0.5%グルタールアルデヒド溶液中で30分間インキュベートしコラーゲン架橋を行う。アルデヒド濃度の差により架橋度の異なるADM(2cm角)を、Fischer ラットの背部皮下に移植し、移植後3ヶ月までの組織学的変化を検討する。組織学的検討内容には、血管新生、炎症反応、コラーゲン吸収、I型とIII型コラーゲンの同定(Picrosirius Red染色およびIII型コラーゲンに対する免疫組織化学)等を含む。 。(2)コラーゲン架橋を施行し幹細胞を組み込んだADMの移植:至適な架橋と適切な細胞数の幹細胞を組み込んだADMを、Fischer ラットの腱欠損部と腹膜欠損部に移植する。12ヶ月後までの組織再生を検討(I型とIII型コラーゲンの同定:Picrosirius Red染色およびIII型コラーゲンに対する免疫組織化学、DiI陽性細胞の同定、結合組織の厚さと構造の検討等)する。(3)コラーゲン架橋と幹細胞を導入したADMを、Fischer ラットの脳硬膜欠損部、腱膜(鞘)欠損部へ移植し、12ヶ月後までの組織再生を検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本年度の研究はほぼ予定通り遂行できたので、次年度も当初の研究計画に沿って進められる。よって次年度の研究費は主に以下の諸目的で使用する予定である。1 実験動物に関わる経費. 2 ラット脂肪由来幹細胞の分離・培養・維持・保存に関わる経費. 3 無細胞真皮マトリックス(ADM)の作製と調整に関わる経費. 4 移植実験に関わる経費. 5 再生結合組織の評価に関わる経費(組織学的経費等). 6 研究結果の発表に関わる経費. 7 世界的な研究の現状を調査する経費. 以上の使用目的に沿って研究費を適切に使用させて頂く所存である。
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