2013 Fiscal Year Research-status Report
高ブドウ糖環境下に於ける神経細胞・表皮細胞・線維芽細胞の機能的・形態学的解析
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23592659
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Research Institution | St. Marianna University School of Medicine |
Principal Investigator |
松崎 恭一 聖マリアンナ医科大学, 医学部, 准教授 (20278013)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
井上 肇 聖マリアンナ医科大学, 医学部, 准教授 (60193603)
冨岡 みゆき 聖マリアンナ医科大学, 医学部, その他 (90398967)
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Keywords | 高ブドウ糖 / 低ブドウ糖 / 表皮細胞 / Sortilin-1 / 糖尿病性神経障害 |
Research Abstract |
SortilinはproNGFと共にp75に結合すると、細胞死シグナルが細胞内へ伝達される。糖尿病の創傷治癒遷延に表皮細胞のsortilinが関与しているかを調べるため、培地中の糖濃度によって培養表皮細胞のsortilin遺伝子(SORT1) 発現が変化するかを検討した。 実験方法は、無血清、無糖培地で24時間培養した表皮細胞を、0, 20, 40, 60, 100, 200, 400, 800 mg/dLの各種糖濃度に調整した培地でさらに24, 48, 72時間培養した。各培養期間、糖濃度におけるreactive mRNA levels (SORT1/GAPDH)を、対応する培養期間の糖濃度100mg/dLにおけるreactive mRNA levels (SORT1/GAPDH)と比較した。 実験結果は、新たな培地での24時間の培養では、いずれの糖濃度においてもSORT1の遺伝子発現量は100mg/dLのSORT1の遺伝子発現量と有意差はなかった。培養後48時間では0mg/dLのSORT1の遺伝子発現量は100mg/dLのSORT1の遺伝子発現量に比べ有意に高かった(p=0.002)。培養後72時間では0mg/dLのSORT1の遺伝子発現量は100mg/dLのSORT1の遺伝子発現量に比べ有意に高かった(p<0.001)。 表皮細胞を高ブドウ糖培地で培養すると、細胞の増殖と分化、さらにcell mobilityが抑性されるため、培地中の糖濃度が高くなるとSORT1の発現が増加するのではないかと考えられたが、結果は予想に反して、高ブドウ糖においても100mg/dLにおけるSORT1発現と比べて有意な変化はなかった。一方、低血糖を含め低栄養は創傷治癒に悪影響を与えるが、0mg/dL 以外の低ブドウ糖においてもSORT1の発現は100mg/dL のSORT1と有意差がなかった。すなわち生命活動を維持できるレベルの糖濃度であれば高ブドウ糖 と同様に低ブドウ糖においても表皮細胞のSORT1発現は臨床において問題はないことが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究を開始するにあたり、培地中の糖濃度によってSORT1だけでなく、NGF、proNGF、MMP-9も有意な変化がみられると予想した。しかし、上記の研究業績の概要のようにSORT1だけで有意な変化がみられた。そのため、「当初の計画以上に遂行している」という区分選択は不適当と判断した。しかし、概要で記載した研究成果は雑誌論文に掲載されたので「おおむね順調に進展している」という自己評価にいたった。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は糖尿病による表皮細胞レベルでの創傷治癒遷延を「糖尿病罹患表皮角化幹細胞のクローナル・コンバージョン解析による創傷治癒能の評価」という視点で研究を推進する。 ホロクローンとも呼ばれる表皮角化幹細胞は、分化能を維持したうえで高い増殖活性を示すが、細胞を取り巻く微小環境(niche)の変化によって、ホロクローンはクローナル・コンバージョンを生じ、増殖活性が低いパラクローンになる。創傷治癒が遷延する糖尿病では、nicheの変化が予想されるため、クローナル・コンバージョンに関与するRac1タンパク質活性と細胞内アクチン繊維の配向性を糖尿病罹患表皮角化細胞で検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度中に研究成果を学会で発表する予定であったが、当初より研究結果がまとまるのに時間を要し発表できなかったため次年度使用額が生じた。 研究成果発表を次年度に行うこととし、未使用額はその経費に充てる。
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Research Products
(1 results)