2011 Fiscal Year Research-status Report
多臓器不全の発症機序におけるカルシウム非依存性ホスホリパーゼA2の役割
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23592666
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
相星 淳一 東京医科歯科大学, 医学部附属病院, 講師 (50256913)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大友 康裕 東京医科歯科大学, 医歯(薬)学総合研究科, 教授 (40176946)
小林 哲幸 お茶の水女子大学, その他部局等, 教授 (50178323)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | カルシウム非依存性ホスホリパーゼA2 / 出血性ショック / 多臓器障害 / 腸間膜リンパ液 / 脂質メディエータ / リゾリン脂質 / アラキドン酸 / 好中球 |
Research Abstract |
急性炎症の病態において、分泌性ホスホリパーゼA2や細胞質ホスホリパーゼA2は中心的な酵素であることは知られているが、カルシウム非依存性ホスホリパーゼA2の役割は十分に解明されていない。よって、本研究は、(1) 代表的な2つの病態、出血性ショックおよび腸管虚血再潅流後の多臓器不全の発症機序、(2) 腸管上皮細胞や血管内皮細胞による炎症性メディエータの産生機序、におけるカルシウム非依存性ホスホリパーゼA2の関与について、特異的阻害剤(bromoenol lactone)を用いて検討することを目的とし、平成23年度は以下の実験を遂行した。 ラット出血性ショックモデルを作製し、出血性ショック後の腸間膜リンパ液中のリゾリン脂質を質量分析の手法を用いて網羅的に解析を行い、かつ、同定したリゾリン脂質の生物活性について検討した。その結果、ショック後のリンパ液中にアラキドン酸およびリノール酸リゾホスファチジルコリン、アラキドン酸およびリノール酸リゾホスファチジルエタノールアミンが有意に増加し、また、それらの不飽和脂肪酸含有リゾリン脂質は、ヒト好中球の生物活性(活性酸素産生、エラスターゼ放出)を誘導することから、炎症性の脂質メディエータであることを明らかにした。続いて、出血性ショックに続発する遠隔臓器の発症や腸間膜リンパ液中の脂質メディエータの産生とカルシウム非依存性ホスホリパーゼA2の関連性を明らかにするため、ラット出血性ショックモデルにカルシウム非依存性ホスホリパーゼA2の特異的阻害剤を用いて検討した。その結果、特異的阻害剤の投与は、腸間膜リンパ液中の不飽和脂肪酸含有リゾリン脂質やアラキドン酸の産生や急性肺傷害を有意に軽減したことから、急性炎症病態の早期にカルシウム非依存性ホスホリパーゼA2が関与していることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成23年度に予定していたin vivo実験は6~7割程度まで完了し、英語論文がすでに受理され、平成24年度(6月)に掲載予定(J Trauma Acute Care Surg)である。残り3~4割りの計画の遅れの理由は、平成24年度以降に予定していたin vitro研究の内容を一部変更するとともに、「好中球の生物活性(活性酸素産生能、エラスターゼ放出能、遊走能など)に発現とカルシウム非依存性ホスホリパーゼA2の関連性の検討」という課題について、平成23年度から予備的研究を開始しているためである。よって、本研究全体の進捗状況としては、おおむね良好に遂行されている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度以降の研究について、平成23年度の未完の実験を行うとともに、当初予定していた腸管虚血再灌流モデルの実験を開始する。すでに、マウス腸管虚血再灌流モデルは完成しており、実験計画に従い、2年間をかけてデータの集積および解析を行う予定である。平成24年度以降に予定しているin vitro研究の内容を一部変更する。変更点とその理由は以下に記述する。変更点は「腸管上皮細胞や血管内皮細胞の活性化におけるカルシウム非依存性ホスホリパーゼA2の役割の解明」から「ヒト好中球の生物活性の発現機序におけるカルシウム非依存性ホスホリパーゼA2の役割の解明」である。その理由として、(1)好中球は、急性炎症病態の主要な免疫細胞であること、(2)平成23年度の実施した予備的実験で、好中球の生物活性の発現にカルシウム非依存性ホスホリパーゼA2が強く関与しており、研究価値が高いと判断したこと、以上2点の理由から、好中球に関する研究を優先的に行うように、研究内容を変更する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
推進方策でも記述したように、平成23年度の予定実験の一部が未完であることから、次年度使用額197,874円が生じた。この研究費は、当然、平成23年度に計画した残りの実験の遂行に当てる。具体的には、吸入麻酔薬を含む薬品・試薬、実験動物に使用する。 次年度の研究費の使用計画について、東京医科歯科大学においては、従来の計画通り、試薬、器具、実験動物(ラット、マウス)を購入する予定である。ただし、in vitro研究の変更に伴い、好中球の生物活性の測定に必要な物品を購入する可能性がある。また、共同研究を行っているお茶の水女子大学では、試薬、器具、HPLCカラム、LC/MS用溶媒を購入する予定である。
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Research Products
(5 results)