2012 Fiscal Year Research-status Report
有機リン中毒性痙攣に対するアトロピンおよびプラリドキシムの治療的効果の実験的検証
Project/Area Number |
23592675
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Research Institution | Sapporo Medical University |
Principal Investigator |
成松 英智 札幌医科大学, 医学部, 教授 (70295343)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
新谷 知久 札幌医科大学, 医学部, 助教 (80510312)
川真田 樹人 信州大学, 医学部, 教授 (90315523)
山内 正憲 札幌医科大学, 医学部, 准教授 (00404723)
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Keywords | 有機リン / コリンエステラーゼ阻害薬 / 痙攣波 / 海馬 / アトロピン / プラリドキシム / 抗痙攣薬 / 中毒 |
Research Abstract |
昨年度に引き続き、有機リン系コリンエステラーゼ(以下、OP-ChE)阻害薬を用いて海馬スライスCA1-pyramidal cellsに痙攣波を誘発させ、本研究モデルのコントロールとして確立させるための実験を継続した。主にmulti electrode alley systemを用いた細胞外電位同時多点記録を行った。 平成23年度に存在を確認したparaoxon(OP-ChE阻害薬)により海馬スライスCA1-pyramidal cellsに誘導される自発痙攣波は、シェファー側枝電気刺激により誘発したpopulation spikeやfield EPSPの約20%程度にしか発生を認めなかった。平成24年度は、痙攣波の誘発率の増加および安定化が安定した痙攣波コントロールモデル確立のために必要不可欠と考え,paraoxonが海馬スライスCA1-pyramidal cellsに痙攣波を誘発させやすい実験条件を検討した。LTP(Long-term potentiation)を誘導するtheta burst stimulationは痙攣波誘発率を変化させなかった。しかし細胞外液カリウム濃度を調節することでparaoxon誘発性痙攣波の発生率を60%以上とすることに成功した。これは電解質異常が痙攣誘発の一因であるという臨床的事実を支持するものである。 痙攣波の誘発率の増加および安定化により、今後行う痙攣波のメカニズムの解明と、アトロピン、プラリドキシムおよび各種抗痙攣薬の有効性評価のコントロール条件を確立させることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成23年度に存在を確認した誘発痙攣波の発生率は約20%前後と、今後の研究のコントロールとするには不十分であった。そのため、本年度は誘発痙攣波の発生率の向上、安定化を主目標とし、そしてこれを達成できた。 これにより、次年度から予定しているアトロピンおよび選択的ムスカリン型アセチルコリン受容体遮断薬の治療的影響の検証の準備状況を整えることができたと考える。 またこの検討過程において確認できた細胞外液カリウム濃度の変化が痙攣誘発を促進するという現象は、電解質異常が痙攣誘発の一因であるという、臨床的事実を支持するものである。この現象をより検討することにより、研究内容をより発展させることができると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
1)平成24年度までの実験結果で安定的なコントロールデータを得たため、平成25年度は,1)OP-ChE阻害薬誘発性痙攣の発生機序解明および2)それに対するアトロピン、プラリドキシムおよび各種抗痙攣薬の治療性評価とその作用機序の解明,を進めていく。 2)平成25年度:平成23・24年度の成績に基づき,OP-ChE阻害薬誘発性痙攣波に対するアトロピンおよび選択的mACh(ムスカリン型ア セチルコリン)受容体遮断薬の治療的影響を明らかにする. 3)平成26年度:OP-ChE阻害薬誘発性痙攣波に対するプラリドキシムの治療的影響を明らかにする. 4)平成27年度:OP-ChE阻害薬誘発性痙攣波に対する各種抗痙攣薬(ベンゾジアゼピン,カルバマゼピン,フェニトイン,等)の治療 的影響を明らかにし,これらを比較・検証する.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初、本年度に行う予定であった研究内容の一部を平成25年度に行うこととしたため、必要な材料、薬品および消耗品の使用が想定より減少した。本年度に行った研究実績により、安定したコントロールモデルが確立できたため、この余剰分は来年度にすみやかに使用する予定である。 次年度の研究費は、実験遂行に必要な材料、薬品等の消耗品、および国内学会発表の旅費として使用予定である。
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