2012 Fiscal Year Research-status Report
重症脳損傷後におけるアルツハイマー病の発症機構の解明と新規予防法の開発
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23592683
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Research Institution | Showa University |
Principal Investigator |
土肥 謙二 昭和大学, 医学部, 講師 (20301509)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
塩田 清二 昭和大学, 医学部, 教授 (80102375)
有賀 徹 昭和大学, 医学部, 教授 (40266086)
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Keywords | 神経外傷 / アルツハイマー病 / フリーラジカル / 高次脳機能障害 / 頭部外傷 |
Research Abstract |
【研究結果概要】平成23年までの研究ではマウス実験的頭部外傷モデル【Controlled Cortical Impactor (CCI)】を作製し、脳損傷後の脳組織におけるフリーラジカル産生と抗酸化能について、さらにはAβ40、Aβ42、炎症性cytokines (IL-1alpha, IL-1beta, IL-6, and TNF)産生について検討を行った。その結果、頭部外傷後より脳組織中Aβ40、Aβ42、炎症性cytokinesの上昇が認められた。 この結果を踏まえて平成24年度は抗酸化ストレス療法として水素水投与による脳組織中Aβ40、Aβ42、TAU蛋白、炎症性cytokines 産生抑制効果、水素水の頭部外傷後脳浮腫抑制効果について検討した。その結果、水素水投与群において外傷後脳浮腫は抑制されていた。さらに水素水投与群では非投与群と比較して外傷部位のTAU蛋白の発現(リン酸化)が減少していた。また、脳におけるcytokines発現では水素水投与群において外傷後24時間でG-CSF, KC(keratinocyte chemoattractant), MCP-1 and MIP-1a が有意に上昇していた。その一方で炎症性サイトカインのTNFについては明らかな差異は認めなかった。この意義については現在検討中である。また、脳浮腫に関係するHIF,AQP4についても検討を行ったが水素水投与群では非投与群と比較してHIFは抑制されており外傷後の虚血性ストレスを軽減している可能性が示唆された。これらの結果より、頭部外傷後における水素水の経口投与は脳浮腫抑制効果、頭部外傷後のタウ蛋白のリン酸化を制御していること、さらに水素水が各種サイトカイン発現や外傷後の脳虚血ストレスに影響していることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
昨年度予定していた検討項目については概ね順調に研究は進行しているものと考えている。さらに、水素水の頭部外傷そのものに対する効果や頭部外傷後のアルツハイマー病の発病に関する新たな知見を得たために、さらなる検討計画推進していくことが出来た。現在得られている知見は当初予定していた以上の結果であり、今後さらなる進展が見込める。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の最終年度である平成25年度は、当初の計画通りに事業を推進していくことを計画している。具体的には重症脳損傷後におけるアルツハイマ-病の発症機構の解明と新規予防法の開発を進めていく。特に新規予防法の開発として水素水の抑制効果について以下の通り検討する。平成23年度に引き続いて水素水によるスーパーオキシドラジカル産生抑制効果について検討する。具体的にはCCIモデルを作成し、損傷後より経時的(搬入時、1時間、6時間、12時間、1日、2日、4日、7日)に深麻酔下に総頚静脈を投与する。30分後に脳を摘出して試料を作成する。凍結切片を作成して蛍光共焦点顕微鏡を用いて観察する。面積あたりのO2-産生細胞を計測する。 次に頭部外傷モデルでLRPの発現が低下していたことから、水素水によるLRP発現及びAβ42排出能の変化についての検討を行う。前述の脳組織サンプルを用いてLRP発現について水素水投与群と非投与群を比較する。さらに血液脳血管門におけるAβ42排出能について水素水投与群と非投与群を比較する。これらの結果が出しだい論文として公表する準備を進めていく予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
物品費用については昨年に引き続き、研究試薬購入、水素水サーバーのフィルターを含むメンテナンス費用、動物購入費などについて予定している。旅費については当該計画に関連する国際学会、国内学会の出席、研究結果についての評価や同研究に助言をいただいているワシントン大学医学部老年医学教室(Prof. WA Banks)との会議への出張旅費、さらには論文投稿料や英文校正費用などを計上予定である。
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Research Products
(2 results)