2013 Fiscal Year Annual Research Report
心肺停止蘇生後に対する体性感覚誘発電位を用いた脳低温療法の適応に関する研究
Project/Area Number |
23592685
|
Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
守谷 俊 日本大学, 医学部, 講師 (50267069)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
杉田 篤紀 日本大学, 医学部, 助手 (70599745)
|
Keywords | induced hypothermia / 体性感覚誘発電位 |
Research Abstract |
脳低温療法が心停止蘇生後に昏睡状態を合併している症例に対して意識を改善させるために有用であると報告された事実は、今まで全脳虚血に対する脳保護治療の選択が全くなかった臨床の現場に非常な恩恵をもたらしたことは言うまでもない。しかしながらそれにより脳低温療法中の患者評価が困難となった。温度変化や鎮痛剤・鎮静剤・筋弛緩剤の使用が影響している。 なぜならば心停止蘇生後症候群を合併した患者の変化を継時的に判断した上で、脳波、体性感覚誘発電位、神経学的反射の評価が困難となったからである。そのため、脳低温療法を開始する前に体性感覚誘発電位N20による判断が可能かどうかを検証することがこの研究の目的であった。この研究によって体性感覚誘発電位とその予後との関連にはいくつかの特徴を認めた。 ①心停止後の体性感覚誘発電位N20は脳低温療法前に出現していない場合は、その後認めることがなく、予後不良であった。②心停止後の体性感覚誘発電位N20は脳低温療法前に出現していても、その後に消失する症例群があり、予後不良であった。③心停止後の体性感覚誘発電位N20は脳低温療法前に出現しており、その後も出現している症例群においては予後良好であった。 こうした所見から脳低温療法を②、③に対して行う必要がある。少なくとも①に関しては脳機能の障害が強すぎて脳低温療法のみでは意識障害の回復は不可能であることを示していると考えられた。追加だが、脳幹誘発電位V波が認められたにもかかわらず体性感覚誘発電位N20が認められない症例が存在したが、そうした症例はもちろん全例意識の回復は認められなかった。 脳低温療法に対する人的および物的資源を費やす前の段階での本研究の予後予測は、疾患群における治療対効果比を向上させ、医療経済学的にも意味のある研究であると考えられる。
|