2011 Fiscal Year Research-status Report
エナメル芽・象牙芽前駆細胞株のスフェロイド共培養による組織成熟機構の研究
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23592695
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Research Institution | Akita University |
Principal Investigator |
小代田 宗一 秋田大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (80400480)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 上皮間葉相互作用 / 歯胚 / 細胞分化 |
Research Abstract |
歯胚は上皮組織と間葉組織の間のシグナルのやりとりにより分化が誘導され形態が形成される。しかし、そのメカニズムについては明らかにされていない。本研究では、独自に樹立したマウス上皮由来エナメル芽前駆細胞株ALCと間葉由来象牙芽前駆細胞株OLCを用いて、歯胚形成における組織の成熟を再現しその機構を明らかにすることを目的とした。23年度は「歯胚上皮―間葉細胞の空間配置」を模倣するスフェロイド-コラーゲンゲル内培養の検討を計画し、スフェロイド-コラーゲンゲル培養による歯胚3次元培養組織の構築を行なった。ALCを赤色蛍光化合物で標識し、GFPを発現するOLCと蛍光顕微鏡下で区別して観察できるようにした。次に、細胞接着性を抑えたU底培養プレートを用いてそれぞれの細胞でスフェロイドを作製した。この2つのスフェロイドを同一ウェルに入れて培養するとスフェロイド同士が融合し、上皮-間葉系相互作用が惹起されると考えられた。しかし、ALCがOLCスフェロイドの表面を覆うように増殖した時に組織全体に著しい石灰化が起きてしまい歯胚組織の形成には至らなかった。そこでALCとOLCの比率を検討し、OLCをあらかじめコラーゲンゲル中に分散して培養し、細胞数とサイズを大きくしたスフェロイドを作製し、サイズの小さいALCスフェロイドと融合させた。その結果、培養5日後にはALCがOLCのスフェロイドの内部に移動している様子が観察された。組織の切片の観察から、ALCがOLCのスフェロイドの中へ移動する現象に伴って、細胞外マトリックス様の構造物が作られていることがわかった。HE染色からは明確な象牙質、エナメル質の形成までは確認できなかったが、象牙質のもととなるマトリックスが形成された可能性が考えられ、前駆細胞が象牙芽細胞へ分化した可能性が考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
23年度は、歯胚3次元培養組織の構築のために歯胚上皮―間葉細胞の空間配置を模倣するスフェロイド-コラーゲンゲル培養法を検討した。歯胚形成には、歯胚上皮と間葉の2種の細胞の相互作用が重要であると考えられるが、培養組織の広範囲で両細胞を接触させると、歯胚が形成される前に組織全体が著しく石灰化してしまうことがわかったため、両前駆細胞のスフェロイドを一部分のみ接触させる培養法を開発した。その結果、組織全体で石灰化が急激に起こる事を回避しながら、歯胚発生時の上皮細胞が間葉組織に陥入する現象と類似の状態を起こすことに成功し、組織中に細胞外マトリックス様構造を形成させることができた。歯形成において、象牙芽細胞とエナメル芽細胞によるマトリックス成分の分泌堆積は、象牙質、エナメル質の形成に必須の過程である。これまでのところ、明確な象牙質、エナメル質の形成までは確認できなかったが、想定したエナメル芽前駆細胞の陥入に類似の現象とそれに伴う細胞外マトリックス様構造が培養組織中に観察されたことで、歯胚発生過程の一部を再現できる可能性を示した。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度に使用する予定の研究費は、培養器中での3次元組織培養において結果がでているため、3次元組織培養を長期でする必要が生じた場合の方策として計画した動物移植実験を次年度以降に必要に応じて行なうと判断したこと、組織染色など抗体試薬を使用した実験が途中である事などから生じた。今後は、培養器中で進展する組織形成の成熟の解析を進め、3次元培養組織において分化誘導する部位特異的に発現する遺伝子の探索を行なう。特異的遺伝子発現解析においては、スフェロイド培養組織の連続切片を作製し、細胞の形態や、各種マーカー分子の抗体染色で陽性をしめす部位の解析などから細胞相互作用部位を推定し、Realtime PCR、マイクロアレイ解析などにより遺伝子発現解析をおこない、相互作用特異的遺伝子を探索する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
交付申請書に記載した研究費に加えて、収支報告書に記載した次年度に使用する予定の研究費を合わせて使用する。研究計画の変更はないが、次年度研究実施計画に沿った組織培養と組織染色、細胞分離と特異的遺伝子発現解析実験に加えて、遂行中の3次元培養組織の染色など抗体試薬を使用した組織形成の解析実験のための物品費、研究補助の人件費、成果発表と情報収集のための学会参加の旅費、その他として共通機器使用費などを研究費として予定する。また、研究の進展結果によって研究費使用の時期、項目を適宜調整する。
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