2012 Fiscal Year Research-status Report
センダイウイルスベクターを利用した歯髄細胞からの人工多能性幹細胞誘導方法の検討
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23592697
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Research Institution | Gifu University |
Principal Investigator |
手塚 建一 岐阜大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (50236973)
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Keywords | iPS細胞 / 歯髄細胞 / センダイウイルスベクター / Zinc Finger Nuclease / Human Leucocyte Antigen |
Research Abstract |
本年度は、前年度までにセンダイウイルスベクターによって樹立したiPS細胞の染色体検査をおこない、異常が生じていない事を確かめた。また、無血清培地で培養した歯髄細胞からも、センダイウイルスベクターを用いてiPS細胞誘導をおこない複数のiPS細胞ラインを得た。その効率は、血清入りの培地をもちいて樹立した場合と比べて、ほぼ同程度であった。樹立されたiPS細胞について、未分化マーカーの発現解析と、テラトーマ形成による多分化能を確かめた。 これらの結果をふまえて、JSTの山中iPS細胞特別プロジェクトの中で提案した、人白血球抗原(Human Leucocyte Antigen, HLA)ハプロタイプホモiPS細胞を樹立する手段として、DNAVEC社のセンダイウイルスベクターを使用することができると結論し、日本人における出現率5位のHLAハプロタイプホモ細胞(DP263)から、iPS細胞を樹立した。 さらに、日本人での出現度2位のHLAハプロタイプをホモで持つiPS細胞をを得るために、HLAローカスの2ローカスがホモで、Aローカスのみがヘテロの歯髄細胞を選び、Zinc FInger Nuclease (ZFN)による特異的変異導入を試みた。現在までに、ZFN1種類の設計が終了し、来年度は2種類目の設計をおこなう。これらのZFNを発現させた歯髄細胞から直接iPS細胞を誘導するために、センダイウイルスベクターを使用する。ベクター導入後の、スクリーニングにはHLA特異的な抗体による染色と、セルソーターを利用するが、本年度はスクリーニング用の抗体の検討と、ラベリングをおこなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初、センダイウイルスベクターの評価を目標としていたが、歯髄細胞を用いた場合には、レトロウイルスベクター、プラスミドベクター、産総研センダイウイルスベクター、DNAVEC社センダイウイルスベクターのすべてで、0.2%前後という高い効率で、iPS細胞誘導ができた。そのため、われわれは供給が安定しているDNAVEC社のベクターをスタンダードとして用いている。研究歴1年未満の大学院生を含めて、複数の実験者によって、多少の効率のばらつきはあっても、iPS細胞誘導ができる事が確認された。さらに、無血清培地で樹立した歯髄細胞からもiPS細胞誘導を試み、血清入り培地で樹立した細胞とほぼ同じ効率でiPS細胞を樹立できた。この事は、センダイウイルスベクターの感染効率が血清の有無に左右されない事を示しており、今後のiPS細胞樹立方法として有効である事を示している。 このように、歯髄細胞とセンダイウイルスベクターの組み合わせの有用性が確認できたことより、われわれが山中教授と共同で進めてきた、HLAハプロタイプホモiPS細胞の樹立にも、センダイウイルスベクターを積極的に利用しようと考えている。当初、2種類のみ見つかっていたHLAハプロタイプホモ歯髄細胞からは、すでにiPS細胞が樹立されているが、本年度3番目のHLAハプロタイプホモ歯髄細胞からもiPS細胞が樹立できた。また、まだ見つかっていないHLAハプロタイプについても、人工的に変異を導入して擬似的にHLAハプロタイプホモiPS細胞を樹立方法を試みており、進展状況としては予定した以上の成果を上げている。これらの成果については来年度中に論文にまとめる予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)無血清培地で培養した歯髄細胞から誘導したiPS細胞の解析を終わらせ、論文にまとめる。 (2)設計済みのZFNを用いて、HLAローカスの特異的な変異導入を試みる。しかし、予備実験によりZFNの活性が充分ではない可能性があり、特異性を下げたZFNの再設計を予定している。その予算として、本年度の予算を一部繰り越してある。 (3)ZFNを導入した歯髄細胞のうち、標的とするHLAの発現が低下している細胞をセルソーターを用いて分取し、センダイウイルスベクターによるiPS細胞誘導を試みる。iPS細胞の誘導はセミクローナルと考えられているが、実際にHLAの表現型と遺伝子型を確認して、モノクローナルにiPS細胞誘導が起きているかを確認する。 (4)目的とする疑似HLAハプロタイプホモiPS細胞が得られた場合には、染色体検査(その他:役務に計上)をおこなって、目的以外の染色体異常が起きていないかを確認する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
昨年度おこなったZFN設計が、予想していたよりも困難であったため、追加のZFN設計が必要となった。昨年度でJSTの山中iPS細胞特別研究プロジェクトが終了した際に、本課題の研究費の使用を控えて、次年度の研究を確保した形となる。繰り越し金(646,371円)を使い、追加のZFN設計をおこなう。 また、消耗品費としては、センダイウイルスベクターキット(Cytotune-iPS)や、間葉系幹細胞用培地、Primate ES培地、プライマー、抗体、遺伝子解析用試薬等の購入にもちいる。 本年は、学会発表や論文発表も増える予定であり、国外でも成果を発表するため、出張旅費や論文発表経費を使用する。
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Research Products
(8 results)