2011 Fiscal Year Research-status Report
う蝕原因菌を特異的に溶解する新規溶菌酵素Amlの作用メカニズムの解明
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23592702
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
林 幾江 広島大学, 医歯(薬)学総合研究科, 助教 (00346503)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小原 勝 広島大学, 病院, 助教 (80253095)
加藤 文紀 広島大学, 医歯(薬)学総合研究科, 助教 (70452589)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | ペプチドグリカン / 溶菌酵素 |
Research Abstract |
組換え蛋白Amlの作成:シグナル配列を除くすべての領域を含んだAml、ORF:SMU689(S.mutans)のN末端部分にHis-tagを含むAmlをpQE30 vector、pGEM T-easy vectorを用いてE.coli XL-IIに形質転換し、組換え蛋白Amlを作成した。ペプチドグリカン(PG)の構造解析:口腔レンサ球菌(S.mutans C67-1, S.sobrinus OMZ176a, S.salivalius H665, S.salivalius ATCC9222, S.sanguinis ATCC10556, S.sanguinis H2, S.mitis ATCC9811)の標準株のPGの一次構造をHPLC,質量分析 (MALDI TOF/MS)により解析した。その結果、グリカン鎖ポリマーの組成は細菌の種類に関わらず同じであるのに対し、架橋ペプチドのアミノ酸組成は細菌の種類により異なっていたが、アミノ酸組成の異なりとAmlの感受性に相関はなかった。Amlが有する基質特異性は、PGに存在している修飾等の多様な構造の異なりに起因することが考えられるため、アセチル修飾や架橋度等、微細な構造の違いを解析した。その中で、軸ペプチドのアミノ酸が3個のtri体に比し、5個のpenta体の割合が高いPGに対し、Amlは低い感受性を示す傾向があった。また、現在までの報告では、アセチル修飾はグリカン鎖の糖鎖にのみアセチル修飾があると報告されているが、架橋ペプチドのアミノ酸、threoninの側鎖にO-アセチル修飾があることを、新たに見出した。S.sobrinusの臨床分離株におけるAml耐性株の単離:Amlは口腔レンサ球菌の中でS.mutansとS.sobrinusのみ特異的に溶菌する性質を有していたが、臨床分離株のスクリーニングからAmlに耐性を示す株を単離した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
組換え蛋白Amlの作成・精製法を確立し、研究の根幹をなす感受性試験が容易に行えるようになった。ペプチドグリカンの一次構造解析法を確立し、口腔レンサ球菌の中で、Amlが基質としうるPGの構造、Amlが基質とすることができないPGの構造の違いを解析することが可能となった。また、S.sobrinus、S.mutansのう喰原因菌のみを特異的に溶菌するAmlであるが、臨床分離株のスクリーニングからS.sobrinusのAml耐性株を単離した。これらPGの構造解析より、PGの軸ペプチドのアミノ酸残基が5個のpenta体の割合が多いPGに対してAmlは耐性を示す傾向があり、Amlの基質特異性の発現解明に有用と思われる緒を得た。さらに、ペプチドグリカンのアセチル修飾様式として、グリカン鎖のアセチル修飾に加えて、架橋ペプチドのアミノ酸・threoninの側鎖にO-アセチル修飾が存在していることを、当該研究で新たに明らかにした。
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Strategy for Future Research Activity |
Amlの基質特異性を規定する候補遺伝子の選択と評価:penta体の割合に影響を与えるものとしてpenicillin binding protein(PBP)の活性が考えられる。L,D-carboxypeptidaseやD,D-carboxypeptidase等のPBPの阻害剤を用いて、阻害剤存在下で培養したAml感受性細菌のPG構造の変化とAmlに対する感受性の変化を調べる。Amlの基質特異性を規定する候補遺伝子の遺伝子導入細菌の作成:S.mutans菌を用いて候補遺伝子の欠失あるいは改変した菌を作成し、Amlに対する感受性の変化を評価する。繰り返し構造(モチーフ)の役割の解明:AmlはN末側に13アミノ酸からなる5個の繰り返し構造を有する基質結合ドメインと推定される領域を持っている。Amlの基質結合ドメインの組換え蛋白を作成し、繰り返し構造が基質認識に関与するか、また、繰り返し構造の数と酵素活性の強度について検討する。組換え蛋白の結合を蛍光標識による顕微鏡観察や分子間相互作用を評価するビアコアシステム等を用いて解析する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
HPLC及び質量分析(MALDI-TOF/MS)による構造解析、蛍光顕微鏡による画像解析、ビアコアによる分子間相互作用の解析等に必要な装置は既存の設備を使用するため、主な経費は機器使用のために必要な消耗品や理化学製品の購入、および組換えタンパク作成の遺伝子関連試薬となる。試薬品目には、遺伝子組換えに必要なベクターや制限酵素、培養液等に関わる品目の購入にあてる。HPLC用カラムや質量分析のためのターゲットプレートの購入、ビアコアシステムのための試薬等の購入にあてる。成果発表や情報収集のため、旅費を申請している。
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