2013 Fiscal Year Annual Research Report
歯周病原菌代謝産物のエピジェネティク制御遺伝子への作用と難治性全身疾患への影響
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23592714
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
落合 邦康 日本大学, 歯学部, 教授 (50095444)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
今井 健一 日本大学, 歯学部, 准教授 (60381810)
田村 宗明 日本大学, 歯学部, 助教 (30227293)
津田 啓方 日本大学, 歯学部, 助教 (60325470)
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Keywords | 酪酸 |
Research Abstract |
われわれは、歯周病原因菌P. gingivalisの代謝物・n-酪酸が潜伏感染HIVプロモーターのHDACを阻害しクロマチン構造を変換することによりHIVを再活性化することから、歯周病がAIDS進展に関与する可能性を報告した。n-酪酸はClostridium属、Fusobacterium属等腸内や女性生殖器内から検出される多くの菌が産生することから、口腔外においても広く同様の現象が認められるとの仮説をたて、立証した。近年、ヘルペスウィルスやHTLV1等の潜伏感染成立にもepigenethic制御の関与が報告されており、歯周病が他の潜伏感染ウィルス再活性化にも影響を及ぼしている可能性がある。Epstein-BarrウィルスはB細胞に感染後、潜伏感染状態となるが、ウィルスと宿主の共存関係が破綻しEBV再活性化することにより伝染性単核球症や上咽頭がん等が発症する。近年、EBV活性化が歯周病や慢性関節リウマチ、潰瘍性大腸炎等の炎症疾患の発症に関与するとの報告なされているが、その再活性化機構は解明されていなかった。われわれはEBVのゲノムDNAが感染後に環状形態のクロマチン構造をとることに着目し研究を行った結果、n-酪酸がEBV再活性化に必須な最早期遺伝子ZEBRAの発現を転写レベルで誘導することを見出した。転写因子ZEBRAは他のウィルス蛋白やRNAの発現を誘導しEBV関連疾患を引き起こすことから、歯周病によるEBV再活性化が口腔毛様白板症、がんや重度の歯周病発症に関与している可能性が示唆された。歯周病原菌がレトロウィルスのみならずDNAウィルスの複製にも影響を及ぼすことが明らかとなり、歯周病がウィルス感染症の進展や種々のウィルス性全身疾患の発症に深く関与している可能性がある。また、動物実験から歯肉に接種されたn-酪酸は組織内に長時間停滞し、ミトコンドリアに強い酸化ストレスを誘導することが判明した。歯周病が種々の慢性疾患誘導に深く関わる事実として極めて興味ある結果と思われる。
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Research Products
(19 results)