2012 Fiscal Year Research-status Report
歯周炎原因菌のタンパク質毒素を分泌する外膜チャネルの解明
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23592715
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Research Institution | The Nippon Dental University |
Principal Investigator |
才木 桂太郎 日本歯科大学, 生命歯学部, 講師 (30297973)
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Keywords | 歯周炎 |
Research Abstract |
慢性歯周炎原因菌Porphyromonas gingivalisで発見された新規のタンパク質分泌系PorSSは、本菌の歯周炎の発症や増殖に必須なタンパク質因子を分泌する。PorSSはそのタンパク質分泌機構や構造情報が未だ詳細には解明されていない。 PG27は申請者のグループが初めて同定・報告した新規の外膜タンパクであり、PorSS分泌性タンパクのリポ多糖による修飾過程に関与すると考えられている。今年度は、PorSSのタンパク質分泌に必須なPG27タンパクの複合体構造の解明実験を行った。 (1)PG27タンパクは発現量が少なく、野生型P. gingivalis W83株からのPG27の精製は困難であることが判明した。そこで、PG27のC末端にヒスチジン・タグを導入したPG27Hisタンパクの精製系を検証した。PG27は外膜タンパクであるため、効率の良い精製系の確立が必要である。そこで精製に有効な可溶化剤を選択し、分離に有効なカラムの選択と溶出条件等の精製条件を決定した。最終的に1リットルの培地から得られる菌体当り、数マイクログラムの精製標品が得られた。SDS-PAGEによる分離と銀染色による解析から、精製標品には精製PG27Hisタンパクと分子量の異なる2種のタンパクバンドが検出できた。これらのタンパクバンドをLC-MS/MS分析によって決定した。現在、同定したタンパクとPG27タンパクとの関連を遺伝学的に検証している。 (2)昨年度から引き続き、東京大学創薬オープンイノベーションセンターが保有する化合物ライブラリー(計約14万個)から、P. gingivalisの最少培地と複合培地での増殖性に違いを示すPorSSの分泌阻害性物質の探索を行っている。本年度は約4万個をスクリーニングした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請書ではPorSSの分泌装置を構成するタンパク因子のひとつと考えられているSovタンパク質の解析を行う予定であった。しかし、今年度内でSovタンパクの精製系を確立することは出来なかった。一般に膜タンパク精製の方法論は未だに論理的な構築がなされていない。従って膜タンパクの精製方法は経験的かつ網羅的に探索し構築する以外に有効な方法はないとされる。この様な研究手法においては、目的とする膜タンパクの精製が困難であることを如何に早期に判断できるかも重要となる。以下の様な場合には目的の膜タンパクの精製が困難であると想定する。(1)実験の初期段階である程度の精製が達成できない。(2)分子量が巨大である。(3)発現量が低い。(4)大量発現系の構築が達成できない。これらの条件に全て当てはまることから、Sovタンパク精製法の確立は困難な課題であると判断した。勿論、Sovタンパクの精製法を探索する実験過程において得られる膨大な量の実験データは重要かつ貴重である。しかしそれらの結果を、具体的な成果として結実させ報告することはできない。 従って本研究課題の主要課題である「Sovタンパクの解明」と並行して行うことができる推進方策として平成23年度の研究実績で報告した以下の2つの課題を並行して遂行してきた。 (1)PorSSのタンパク分泌に必須である外膜タンパクPG27の解析:PG27タンパクは、その遺伝子欠失株がSov変異とほぼ同様の表現型を示す新規の外膜タンパクとして、申請者のグループが初めて同定した。PG27タンパクの精製も困難であったが、どうにか今年度内でPG27タンパクを複合体として精製することに成功した。そして精製PG27タンパク複合体の生化学的解析を行うことも出来た。 (2)PorSSの阻害剤にスクリーニング:本年度は約4万個の化合物をスクリーニングした。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)PG27タンパク複合体の構造を解明する。PG27タンパクを含む分泌タンパクの修飾系は、PorSSによるタンパク因子の分泌に必須である。従って、PG27タンパク複合体の解明は、PorSSを含むタンパク分泌経路の全体像の理解に重要である。PG27タンパクを含む複合体の詳細構造とそれぞれのタンパク因子との機能連関を明らかにすることで、PorSSのタンパク分泌機構を解明する。平成24年度はPG27タンパク複合体の生化学的解析を行ってきた。平成25年度は、PG27タンパク複合体の生化学的解析から得られた結果を遺伝学的に検証して、実験結果をまとめる。 (2)Sovタンパクの精製系を構築するために引き続き実験を行う。 (3)PorSSによるタンパク分泌を阻害する化合物は、新規のタンパク分泌系であるPorSSの生化学的解析を可能にし、本菌による慢性歯周炎の新たな治療法の開発に繋がる。従って、PorSSの分泌阻害物質のスクリーニングを行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
生じた当該研究費は低額であることから、翌年度の消耗品の購入に充てる予定である。
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Research Products
(1 results)