2012 Fiscal Year Research-status Report
マウス舌発生における舌下神経の軸索誘導に働く血管・神経・筋系譜細胞の相互作用
Project/Area Number |
23592716
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Research Institution | The Nippon Dental University |
Principal Investigator |
佐藤 かおり 日本歯科大学, 生命歯学部, 講師 (90287772)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田谷 雄二 日本歯科大学, 生命歯学部, 准教授 (30197587)
添野 雄一 日本歯科大学, 生命歯学部, 講師 (70350139)
島津 徳人 日本歯科大学, 生命歯学部, 講師 (10297947)
青葉 孝昭 日本歯科大学, 生命歯学部, 教授 (30028807)
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Keywords | 歯学 / 病理学 / 舌発生 / 血管・神経網 / 軸索誘導 / ガイダンス機構 / 遺伝子発現 |
Research Abstract |
舌の形態形成では、血管網と神経網に支えられた舌筋の組織構築が進行する。舌運動を支配する舌下神経軸索は後頭神経根から各鰓弓を経て舌原基に到達し、舌原基内で分枝して舌筋との機能的接合を果たす。この舌下神経軸索の伸長経路は後頭体節由来の舌筋前駆細胞の移住経路と一致している。本研究では、舌下神経の軸索誘導と神経軸索-舌筋の接合に注目して、マウス胎仔鰓弓における血管網・神経網の3次元観察、顕微試料採取による軸索伸長先端部での遺伝子発現解析、鰓弓器官培養による分子機能解析に基づき、器官形成の基本システムとなる血管・神経伸長の方向性を制御するガイダンス(誘引・反撥)の分子機構と細胞間相互作用を明らかにする。 今年度では、マウス舌下神経の軸索誘導に働くガイダンス機構を明らかにする目的で、胎生9.5日~11.5日のマウス頭部における血管網と神経網・骨格筋前駆細胞集団の時空間的な解析とともに、下顎突起マイクロアレイデータに基づくパスウェイ解析を実施した。これらの解析から以下の成果が得られた。(1) 組織立体像中の主要な血管と舌下神経をはじめとする脳神経にラベリング情報を付加することにより、内頸動脈・神経管から鰓弓先端に至る血管・神経走行を分画(擬似カラー表示)して相互位置関係を明らかにした。(2) 骨格筋系譜と神経のマーカ抗体による二重免疫染色より、舌下神経を含む運動神経系の軸索周囲に存在する骨格筋前駆細胞を確かめた。(3) Ingenuity Pathway Analysis (IPA)によるマイクロアレイデータのGene-Ontology (GO)解析の結果、胎生9.5~10.5日では「血管新生」経路が有意であり、胎生11.5日では「血管リモデリング」とともに「軸索ガイダンス」「軸索伸長」「舌筋発生と分化」の有意性が高まることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度に確立したマウス胎仔頭部試料からの連続薄切切片作製、血管・神経マーカ抗体による多重免疫染色、バーチャルスライドによる高精細組織立体構築に至る実験プロトコルを応用して、今年度では引き続き、胎生9.5~11.5日のICRマウス胎仔頭部全域に広がる血管網と神経網をコンピュータ上で立体復元して形態計測を行った。昨年度から画像解析システムのスペックを改善し、従来以上に微細な血管網についても再構築・解析することを実現している。さらに今回の組織立体構築では、各要素に解剖学的な情報をラベリングすることにより、背側動脈や鰓弓を栄養する大動脈弓などの主要な血管と舌下神経をはじめとする脳神経について擬似カラーで分画表示することができた。その結果、各脳神経について神経管や神経節から軸索先端部までを容易に辿ることができ、脳神経間ならびに脳神経と血管との空間的な位置関係を指標として経時的な軸索伸張過程を詳細に追跡できた。遺伝子発現プロファイルについては、形態観察と同時期の下顎突起マイクロアレイデータを使用し、胎齢にともなう血管網・神経網の形成機序と筋系譜との関係に着目して、IPAシステムによるGene Ontology(GO)解析を実行することができた。この遺伝子発現解析に際しては、遺伝子データベースと文献情報を参照して、血管形成と神経形成の牽引と反発に働くガイダンス因子、動脈・静脈の分化制御因子、神経―筋接合に関わる遺伝子リストを作成し、各胎齢の下顎突起試料における遺伝子発現レベルの検証に応用した。今回の下顎突起試料での遺伝子発現プロファイルからは、下顎突起自体の発育・形態形成に働く分化・増殖因子群の発現変動も見出すことができ、別途報告した(Fujitaら, 2013 in press)。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度では、脳神経と筋前駆細胞集団との相互作用(神経-筋接合)を明らかにする目的で、骨格筋系譜と神経のマーカ抗体による多重免疫染色を施したマウス胎仔頭部の連続薄切切片から、神経網と骨格筋前駆細胞集団の組織立体観察を計画する。脳神経と骨格筋前駆細胞集団を免疫標識に基づいてラベリング処理し、相互位置関係を明示する。神経軸索先端と周辺に位置する細胞(血管内皮細胞と壁細胞、筋系譜細胞)との相互作用についてはビブラトームにより採取した100μm厚の組織片を蛍光免疫染色・共焦点観察を用いて検証する。細胞間接着部位については免疫電顕法でも確認する。 遺伝子発現については、血管形成と神経形成の牽引と反発に働くガイダンス因子、動脈・静脈の分化制御因子、神経軸索-筋前駆細胞間ガイダンス、神経―筋接合に働く分子種に関わる遺伝子プロファイルから、IPAにより予測分子ネットワークを得ている。この候補分子の発現状況を検証する目的で、後頭神経根から外側舌隆起に至る舌下神経軸索の伸長経路を対象として、ガイダンス因子と受容体、神経―筋接合に働く分子カスケードの組合せについてリアルタイムPCR解析を実施する。これらの遺伝子発現解析から、胎生9.5-11.5日のマウス胎仔頭部での血管―神経軸索間ガイダンスや神経軸索-筋前駆細胞間ガイダンス、神経―筋接合に中心的な役割を持つ候補分子について、それらの分子機能を確かめる目的でモルフォリノAS-ODNによるノックダウンを計画する。培養組織の組織学的・分子生物学的な解析はin vivoに準じて行い、胎生9日の後頭体節と後頭神経根を含む鰓弓試料と胎生10日の癒合直前の下顎突起試料を用いた鰓弓培養系での解析を計画している。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
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Research Products
(8 results)