2012 Fiscal Year Research-status Report
唾液分泌障害に対する唾液腺再生医療の確立:歯髄細胞を用いた血管再生へのアプローチ
Project/Area Number |
23592719
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Research Institution | Tsurumi University |
Principal Investigator |
山田 浩之 鶴見大学, 歯学部, 講師 (90267542)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
斎藤 一郎 鶴見大学, 歯学部, 教授 (60147634)
美島 健二 昭和大学, 歯学部, 教授 (50275343)
濱田 良樹 鶴見大学, 歯学部, 教授 (70247336)
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Keywords | 唾液腺の再生 / 血管再生 / 歯髄細胞 |
Research Abstract |
平成24年度は作出した放射線照射による唾液分泌障害マウスに対する治療実験を行った。 1. 放射線照射による唾液分泌障害マウスの作出:Specific pathogen-free室にて飼育したC57BL6J(6週齢オス)マウスにpentobarbital (50 mg/kg)を静脈内投与し、リニアック(Toshiba Medical System, Tokyo) を用いて10 MVのX線を15 Gy顎下腺局所に照射した。 2. 放射線照射による唾液分泌障害マウスへの細胞移入実験:放射線照射マウスの顎下部の皮膚をメスで切開し、顎下腺組織を露出させ、下記の各群において細胞を注入した(放射線照射数時間後)。(1)歯髄細胞の移入群(2)マウス血管内皮細胞の移入群(3)コントロール(PBSの局所注入)群 3. 唾液分泌量の測定:各群における唾液分泌量の経時的変化を観察した。照射1週間前、照射1週間後、2週間後、4週間後、6週間後、8週間後および12週間後に唾液分泌量の測定を行った。唾液はキャピラリー(DURAN)を用いて採取し15分間の総容量を測定し、マウスの体重1g当たりの唾液分泌量を算出した。 結果:放射線照射1週間前の平均唾液量はコントロール群で11.7 μl/g、歯髄細胞群で11.6 μl/g、マウス血管内皮細胞群で11.4 μl/gであり、各群間に統計学的な有意差は認められなかった。放射線照射8週後の平均唾液分泌量はコントロール群で5.4 μl/g、歯髄細胞の移入群で8.3 μl/g、マウス血管内皮細胞の移入群で7.4 μl/gであり、歯髄細胞群とマウス血管内皮細胞群はコントロール群と比較して有意に高い値を示した(P = 0.0452、0.0263)。 結論:本研究結果により、歯髄細胞は放射線照射による唾液分泌障害マウスに対する細胞移入療法の有用な細胞ソースであることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度は作出した放射線照射による唾液分泌障害マウスに対する治療実験を行った。その結果、放射線照射1週間前の平均唾液量はコントロール群で11.7 μl/g、歯髄細胞の移入群で11.6 μl/g、マウス血管内皮細胞の移入群で11.4 μl/gであり、各群間に統計学的な有意差は認められなかった。放射線照射8週後の平均唾液分泌量はコントロール群で5.4 μl/g、歯髄細胞の移入群で8.3 μl/g、マウス血管内皮細胞の移入群で7.4 μl/gであり、歯髄細胞の移入群とマウス血管内皮細胞の移入群はコントロール群と比較して有意に高い値を示した(P = 0.0452、0.0263)。 したがって、本研究結果により、歯髄細胞は放射線照射による唾液分泌障害マウスに対する細胞移入療法の有用な細胞ソースであることが示唆された。唾液分泌量の改善が得られた原因が、血管新生によるものかどうか、現時点では不明であるが、研究はおおむね順調に進んでいると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、放射線照射による唾液分泌障害マウスの唾液腺組織を摘出して、歯髄細胞の移入により唾液分泌量が改善した原因を追及する。1.唾液腺組織の腺房細胞数と唾液分泌量との関連:アクアポリン5を用いて腺房細胞を染色する。照射1週間前、照射1週間後、2週間後、4週間後、6週間後、8週間後および12週間後のマウスの唾液腺組織を摘出し、ホルマリン固定パラフィン切片および凍結標本を作製する。400倍視野で無作為に抽出した10視野における写真を撮影し、アクアポリン5陽性細胞数を計測する。歯髄細胞の移入群においてはGFPとアクアポリン5の二重蛍光染色を行い、移入した細胞による唾液腺の腺房の構築を検証する。各群における腺房細胞数の経時的変化を観察し、唾液分泌量との関連を調べる。2. 唾液腺組織における血管密度と唾液分泌量との関連:抗CD31抗体を用いた免疫組織化学染色により唾液腺の血管密度を測定し、各群間で比較する。照射1週間前、照射1週間後、2週間後、4週間後、6週間後、8週間後および12週間後にマウスの唾液腺組織を摘出し、ホルマリン固定パラフィン切片および凍結標本を作製する。400倍視野で無作為に抽出した10視野における写真を撮影し、CD31陽性細胞数を計測する。歯髄細胞の移入群においてはGFPとCD31の二重染色を行い、移入した細胞による血管新生を確認する。各群における唾液腺の血管密度の経時的変化を観察し、唾液分泌量との関連を調べる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
1. 備品:複数の研究者間で本研究課題の実験データを共有する必要があるため、実験データの管理や統計処理を目的とする専用のパソコンの購入を計画している。 2. 消耗品:平成25年度は、前年度に引き続きGFPマウスから歯髄細胞を採取し、培養するためにマウスおよび飼育に必要な飼料を消耗品として申請する。また、唾液腺の組織解析のために、放射線照射による唾液分泌障害のモデルマウスに対する治療実験を追加する必要がある。このため、マウス(C57BL6J)や唾液分泌量測定に用いる器具・器材等の消耗品が必要となる。さらに、唾液分泌障害のモデルマウスから採取した唾液腺組織を用いて解析を行うため、組織学的検討に用いる標本の作製に関わる試薬やスライドグラス等の消耗品の購入が必要となる。 3. 旅費等:平成24年度の結果からマウス歯髄細胞には、血管内皮細胞への分化能を有する細胞が含まれており、歯髄細胞が放射線照射による唾液分泌障害マウスに対する細胞移入療法の有用な細胞ソースであることが示唆されたため、この研究成果の学会発表を予定している。
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