2011 Fiscal Year Research-status Report
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23592726
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Research Institution | Fukuoka Dental College |
Principal Investigator |
畠山 雄次 福岡歯科大学, 歯学部, 講師 (40302161)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 国際情報交流 / アメリカ合衆国 |
Research Abstract |
アメロジェニンはエナメル芽細胞により産生されるエナメル質基質タンパクであることから、エナメル質特異的タンパクと考えられてきた。しかし我々は、スプライシングアイソフォームが軟骨に存在し、軟骨形成促進にかかわることを報告した。近年、アメロジェニンは細胞内小胞膜の膜結合型受容体 LAMP-1 および CD63 に結合することが報告された。我々はアメロジェニンが間葉細胞から軟骨細胞に分化促進することからシグナル伝達因子の可能性を報告し、アメロジェニンの新たな機能を発見した。しかしその作用機序は不明である。本研究は軟骨細胞分化におけるアメロジェニンのシグナル伝達は間葉細胞膜表面に発現する LAMP-1 および CD63 に結合することにより行われる可能性を検討するものである。この目的のために、我々は成長板軟骨におけるアメロジェニンおよび LAMP-1 の局在を免疫組織学的に検討した。その結果、軟骨基質マーカーである II 型および X 型コラーゲン抗体に陽性反応を示した領域はアメロジェニン抗体に陽性であった。また増殖層軟骨細胞は LAMP-1 抗体に陽性反応を示したが、肥大軟骨細胞において LAMP-1 の抗体反応は弱かった。これらのことは軟骨基質にアメロジェニンが存在する可能性を確認するとともに、アメロジェニン受容体であるLAMP-1 の発現が増殖軟骨細胞から肥大軟骨細胞にかけて成熟分化するとともに減少する可能性が示唆された。さらにマウス肢芽由来間葉細胞を用いた in vitro の軟骨形成過程におけるLAMP-1の発現を免疫組織学的に検討した。その結果、II 型コラーゲン抗体に陽性反応を示した領域の内外における間葉細胞および軟骨細胞と考えられる細胞に LAMP-1 の発現が認められた。このことは間葉細胞から軟骨細胞の分化まで LAMP-1 が発現し続ける可能性を示唆している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、軟骨細胞分化におけるアメロジェニンのシグナル伝達は間葉細胞膜表面に発現するLAMP-1または CD63 に結合することにより行われる可能性を検討するものである。この目的のために、(1)マウスリコンビナントLRAPの作製および軟骨細胞分化の評価(2)軟骨形成過程におけるLAMP-1の発現局在を明らかにする。(3)細胞膜のCD63およびLAMP-1による軟骨形成における役割の検討。の上記3点について今年度に検討を行った。(1)および(3)の検討のために計画していたLRAPの作成は企業に外注することにより完了した。また軟骨細胞分化の評価として、軟骨前駆細胞株ATDC5のLAMP-1およびCD63が細胞膜表面に発現していることを免疫組織学的に明らかにした。現在、RT-PCRによるATDC5における軟骨細胞分化のマーカーであるSox9および II 型コラーゲンの遺伝子発現を解析中である。(2)の検討のためにマウス肢芽より得られた間葉細胞を用いた in vitro の軟骨形成過程におけるLAMP-1の発現を免疫組織学的に検討した。その結果は研究結果の概要に示した。これらのことから本研究の目的の達成度はおおむね順調に伸展しているとした。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の最終目標は、LRAPによる間葉細胞から軟骨細胞分化促進は、LRAPが間葉細胞膜表面に存在するLAMP-1およびCD63に結合し細胞膜陥没構造が形成され、細胞内に取り込まれたLRAPが細胞内小胞により輸送されることにより引き起こされる、という仮説の検討である。そのために今後の研究目標として、LRAPの軟骨形成におけるCD63およびLAMP-1機能的遺伝子発現抑制の検討をおこなう。また引き続き細胞膜のCD63およびLAMP-1における軟骨形成における役割の検討をおこなう。いずれの検討においても胎生10日齢マウス肢芽より間葉細胞を得て、高密度培養法(マイクロマスカルチャー法)によりin vitroにおける軟骨形成モデルを用いる。これらのモデルにおいてLRAPを添加し、機能的遺伝子発現抑制はRNAiを利用し、細胞膜のCD63およびLAMP-1における軟骨形成の役割の検討では中和抗体を利用してそれぞれ検討を行う。軟骨細胞分化の評価はいずれの検討においても軟骨細胞分化マーカーであるSox9、II 型および X 型コラーゲンの発現をRT-PCR、ノーザンブロット法、in situ hybridization法、免役染色(電子顕微鏡による観察を含む)およびウェスタンブロット法によりおこなう。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本研究ではマウス肢芽由来間葉細胞を用いた研究をおこなうため、実験動物または細胞株購入費が必要である。さらに軟骨細胞分化解析には遺伝子発現およびタンパク発現の観察が必要である。これらの観察はRT-PCR、ノーザンブロット法、ウェスタンブロット法、組織化学染色、免疫染色(電子顕微鏡による観察を含む)および in situ hybridization法により行うため、これらの関連試薬およびRNAプローブ作成費用、または抗体の作成および購入費用として使用する。また次年度に使用する予定の研究費が生じたが、マウスリコンビナントLRAPの作成において企業間の競争的見積金額の提示により、また実験の効率化促進により必要作成量の減少によって、当初見込みより大幅に減額したことから発生した。
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