2012 Fiscal Year Research-status Report
唾液分泌機能を維持・再生するニューロンネットワークの解析
Project/Area Number |
23592731
|
Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
松尾 龍二 岡山大学, 医歯(薬)学総合研究科, 教授 (30157268)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小橋 基 岡山大学, 医歯(薬)学総合研究科, 准教授 (80161967)
寺山 隆司 岡山大学, 医歯(薬)学総合研究科, 准教授 (60333689)
美藤 純弘 岡山大学, 医歯(薬)学総合研究科, 助教 (20240872)
藤田 雅子 岡山大学, 医歯(薬)学総合研究科, 助手 (40156881)
|
Keywords | 唾液分泌 / 唾液核 / 自律神経自律神経 / 顎運動 / 大脳皮質咀嚼野 / 摂食中枢 |
Research Abstract |
本研究の目的は、唾液腺を支配するニューロンネットワークを解剖学的・生理学的に解析し、唾液分泌機能の維持・再生に関与する神経メカニズムを明らかにすることである。このため当該年度(平成24年度)には、以下の免疫組織化学的実験と電気生理学的実験を中心に行ない、一部のデータは学会発表と論文発表を行なった。 免疫組織化学的実験では、昨年度までにラットの唾液核(唾液腺を支配する副交感神経の第一次中枢)には、前脳(主に視床下部外側野、扁桃体中心核、室傍核、視索上核)から興奮性入力が存在することを示した。本年度は更に唾液核との連絡が強い部位はの一つである大脳皮質(咀嚼野)に着目し、この部位が他の前脳部位とは異なり、反対側優位に支配していることを示した。この生理学的意義を検索するため、電気生理学的実験において、ラットの大脳皮質咀嚼野を電気刺激し、唾液分泌とリズミカルな顎運動を分析した。その結果、大脳皮質には臼歯部咀嚼様の顎運動を誘発すると同時に唾液分泌を誘発するすることが判明した。また前歯部咀嚼様または溶液摂取様の顎運動を誘発する部位は、唾液分泌を起こさないことも判明した。 これらの知見は、大脳皮質咀嚼野には二つの部位が存在し、臼歯部咀嚼様運動を司る部位には唾液分泌の中枢も重複して存在し、顎運動と唾液分泌を同時に司る広い意味での「咀嚼の中枢」であることを示している。また機能的に多量の唾液分泌を必要としない溶液摂取様の顎運動では、唾液核に対する連絡が無いことも示している。なお運動司令は、体性感覚と同様に、反対側優位であるが、自律神経系では、大脳皮質からの司令が同側の視床下部(摂食中枢)を介して同側の唾液核に至ると考えられる。こらは、自律神経系の興奮が、食欲や嗜好などに関連しているためであろう。次年度からは、この点を詳細に分析する予定である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の研究計画では、1)唾液分泌の中枢神経系を明らかにするため、免疫組織化学的実験とパッチクランプ法による神経活動の記録実験、2)唾液腺からの内臓感覚を分析するため、唾液腺に分布する感覚神経からの記録実験、3)神経系の唾液腺を維持・再生する機能を分析するため、唾液腺萎縮ラットからの神経活動記録実験を行なう予定であった。1)については学会発表を行ない論文作成に及んでいる。とくに免疫組織化学実験では、抑制性と興奮性の神経を区別して中枢神経系を同定することができ、その生理学的な意義について、十分推察することが出来た。またこの実験から派生した疑問点(大脳皮質刺激による顎運動と唾液分泌の比較)をについて、電気生理学的な実験を行ない、学会は発表と論文作成を行なっている。このため、おおむね順調に進展していると言える。2)については、来年度中に論文作成に至と考えられる。そのための追加実験が必要であり、次年度にはその生理学的意義を検討できると思われる。3)については、次年度以降に神経記録実験に着手することが可能である。
|
Strategy for Future Research Activity |
次年度は、上記1)の論文作成に取組んでいるが、一部例数を追加するための実験が必要性である。成果の一部は、和文論文2報(1報は学位論文;学生の単著であるため業績に記載せず)で報告したので、英文論文作成に向けて追加実験を行なう。この実験から派生した大脳皮質の機能の問題については、予想以上に成果が得られたため、和文論文(学位論文)を作成した。次年度中に英文論文作成が完了する。2)については、データ収集がほぼ8割は完了している。3)については、前項目の実験成果と論文作成状況を勘案して慎重にする必要がある。とくに唾液腺の再生機能については、複数の意見(萎縮と肥大に対する見解の相違、およびその実験方法)が出ているため、他の研究グループの動向も参考にして、実験を遂行したい。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当該年度(平成24年度)は、大脳皮質の刺激実験を中心に行なったため、電気生理学的実験の器具と消耗品のために研究費を使用した。電気生理学的実験は今後おおむね現有設備で実験可能である。次年度は、大半の研究費を薬品等の物品費、学会発表、論文発表の費用に使用する予定である。
|
Research Products
(9 results)