2011 Fiscal Year Research-status Report
慢性疼痛時の脊髄モノアミントランスポーター発現変動の解明
Project/Area Number |
23592733
|
Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
十川 千春 岡山大学, 医歯(薬)学総合研究科, 助教 (10253022)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
北山 滋雄 岡山大学, 医歯(薬)学総合研究科, 教授 (80177873)
十川 紀夫 岡山大学, 医歯(薬)学総合研究科, 准教授 (30236153)
森田 克也 広島大学, 医歯(薬)学総合研究科, 准教授 (10116684)
|
Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
|
Keywords | 神経因性疼痛 / 抗うつ薬 / トランスポーター / モノアミン / GABA |
Research Abstract |
神経障害を伴う難治性慢性疼痛の治療薬として抗うつ薬は第一選択薬とされている。本研究では、慢性疼痛に対する有効な抗うつ薬選択のためのエビデンスを得るため、各種疼痛モデル動物病態時における抗うつ薬の標的分子の発現変化あるいは機能変化と、抗うつ薬の鎮痛効果との相関を明らかにすることを目的とする。 慢性疼痛モデルとして、神経因性疼痛モデルである坐骨神経部分結紮マウスを作製し た。抗うつ薬の標的分子としてまず、モノアミントランスポーター(MAT)に焦点をあて、部分結紮から2週間後にpaintbrushによりアロディニアが発症していることを確認した後、各脳部位を摘出し、totalRNAを精製した。アロディニア発症マウスと対照マウスの小脳、脳幹におけるノルアドレナリントランスポーター、セロトニントランスポーター、ドパミントランスポーター(DAT) mRNAの発現をRT-PCR法にて解析した結果、アロディニア発症マウス脳幹におけるDATmRNA発現に増加傾向がみられた。抗うつ薬の疼痛作用において、一般的な抗うつ薬の標的であるMATの他に、脊髄抑制性神経の関わりも考慮するため、我々はGABA神経終末においてGABA再取込みを行うGABAトランスポーター(GAT)についても抗うつ薬の効果を調べた。4種のGATサブタイプそれぞれの遺伝子導入発現系を用い、11種の三環系抗うつ薬の効果をスクリーニングした結果、ベタイントランスポーター(BGT1)に最も強い阻害作用を持つことが明らかとなった。そこで、アロディニア発症マウス脳皮質、脳幹、小脳、脊髄におけるBGT1mRNAの発現変動をMAT同様RT-PCR法にて解析したところ、アロディニア発症後の脳幹においてBGT1mRNAの発現の増加傾向がみられた。現在、疼痛反応出現後のこれらトランスポーター発現変化を定量的に解析中である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
慢性疼痛モデル動物として糖尿病性ニューロパチーモデル動物におけるアロディニア発症後の試料採取が当初の予定より遅れており、アロディニア発症後のモノアミントランスポーター発現解析は現在、坐骨神経部分結紮モデルのみで解析中である。また、当該年度研究実績によりGABAトランスポーター発現解析の必要性が新たに加わったため、MAT機能解析が若干遅れている。
|
Strategy for Future Research Activity |
本研究では、難治性慢性疼痛に対して用いられる抗うつ薬の標的である下行性抑制系神経におけるモノアミントランスポーター(MAT)の発現に焦点をあて、病態時におけるその発現変動を明らかにする。そのために、各種疼痛モデル動物を駆使して、ノルアドレナリントランスポーター、ドパミントランスポーター、セロトニントランスポーターの発現変化とその機序を解明し、抗うつ薬の有効性との関係を明らかにする。また、H23年度実績により、中枢抑制性神経系であるGABA神経の関与も考慮に入れる必要性が示唆されたため、MATの他にGABAトランスポーター各サブタイプ(GAT1, GAT3, ベタイントランスポーター)にも着目し、MATと並行して解析を行う。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
H23年度に引き続き疼痛モデル動物の作製と行動解析と、モノアミントランスポーター(MAT)およびGABAトランスポーター(GAT)発現変動の解析を行う。H23年度に十分検討できなかった坐骨神経部分結紮モデル以外のモデルマウスを作製し、発現解析を行うため、次年度使用額として76660円を計上した。 坐骨神経部分結紮モデル以外として、歯科臨床領域において問題となっている糖尿病性ニューロパチー、帯状疱疹後神経痛、等について、各モデル動物の疼痛反応発症後の時間経過ごとに、アロディニアの強度と閾値、痛覚過敏反応の発現、自発痛様行動を観察する。また、交感神依存性とモルヒネ感受性について評価する。 MATおよびGAT発現解析および機能解析は、NET、DAT、SERT、GAT1、GAT3、BGT1についての特異的プライマーを作製し、前述の疼痛モデル動物での疼痛発症後の発現変化をリアルタイムPCR法にて各mRNAの定量解析を行う。また、トランスポーター基質輸送活性の変化を、シナプトソームを用い、トリチウム標識Substrate Uptake Assayおよび トリチウム標識Ligand Binding Assayにより、トランスポーターと基質輸送能と親和性を求め、機能解析を行う。 さらに、各疼痛モデルにおける抗うつ薬およびトランスポーター特異的阻害薬の鎮痛効果とトランスポーター発現変化との相関を、疼痛モデル動物について抗うつ薬処置直後および反復投与後の疼痛評価と行動解析を行う。薬物としては、SSRIやSNRIおよびGAT特異的阻害薬を用いる。
|
Research Products
(3 results)