2011 Fiscal Year Research-status Report
免疫監視システム制御に関わる新規シグナル分子機構の解明
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23592741
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
松口 徹也 鹿児島大学, 医歯(薬)学総合研究科, 教授 (10303629)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大西 智和 鹿児島大学, 医歯(薬)学総合研究科, 准教授 (30244247)
坂東 健二郎 鹿児島大学, 医歯(薬)学総合研究科, 助教 (50347093)
楠山 譲二 鹿児島大学, 医歯(薬)学総合研究科, 助教 (70596105)
柿元 協子 鹿児島大学, 医歯(薬)学総合研究科, 助教 (40274849)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 免疫応答 / 細胞内シグナル伝達 / ヒストンアセチル化 / ヘルパーT細胞 / フォスファターゼ / JNK |
Research Abstract |
ヘルパーT細胞分化におけるMKP-Mの発現調節機構と機能的役割について、in vitroおよびin vivo両面に渡って解析を進めた。マウス脾臓由来のナイーブCD4陽性T細胞のCD3刺激によるヘルパーT細胞(Th)分化実験系において、MKP-M(=DUSP16)の遺伝子・蛋白発現レベルはTh1分化に伴って低下し、逆にTh2分化に伴って著しく上昇した。これはTh2分化細胞におけるMKPM遺伝子プロモーター領域のヒストンH3/H4アセチル化レベルの上昇を伴っていた。またヒストン脱アセチル化酵素の阻害剤であるトリコスタチンAの処理によって、MKP-Mの遺伝子発現が著明に上昇することを確認した。次に、アデノウィルスベクターを用いて、マウスナイーブCD4陽性T細胞にMKP-Mを強制発現させ、そのTh分化に対する影響を調べたところ、野生型MKP-Mを強発現させることでTh分化をTh2方向に、逆にドミナントネガティブ(DN)型MKP-Mの強制発現によってTh1方向への偏位を認めた。 MKP-Mのコーディング配列をLckプロモーター下流に繋いだ発現プラスミドを導入することで、T細胞特異的な野生型およびDN型のMKP-Mトランスジェニック(Tg)マウスを作成した。それぞれのTgマウスに対して卵白アルブミン(OVA)による感作を複数回行い、感作後血清中のOVA特異的免疫グロブリンサブタイプ濃度を測定した。同処理を加えたコントロールのC57BL/6マウスに比べて、野生型MKP-M TgマウスではOVA特異的IgG2a濃度が高値を示した。一方、DN型MKP-M Tgマウスでは、コントロールマウスに比べOVA特異的IgG2a濃度が低値を示し、逆にOVA特異的IgG1およびIgGの血清濃度が高値を示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
H23年度の研究結果により、(1)ヘルパーT細胞分化において、その分化方向性の違いによってMKP-Mの蛋白・mRNA発現レベルが著しく変動する(Th1分化に伴って低下し、Th2分化に伴って増加する)こと、(2)ヘルパーT細胞分化に伴うMKP-Mの発現レベルの変化が同遺伝子プロモーター領域のヒストンアセチル化によって制御されていること、(3)アデノウィルスによる強制発現実験の結果から、MKP-Mの活性レベルによってTh1/Th2分化を制御しうること、(4)MKP-MのT細胞特異的Tgマウスを使った実験より、生体内における抗原特異的免疫反応の性質(Th1/Th2偏位)をT細胞におけるMKP-M活性レベルによって制御しうること、を明らかにした。また、これらの研究成果を、生化学系のリーディングジャーナルであるJournal of Biological Chemistryにおいて発表した。
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Strategy for Future Research Activity |
H23年度の研究結果から、MKP-M活性を抑制することでTh1方向に偏位しうることが証明できたため、T細胞中のMKP-M活性抑制によって生体の発癌サーベイランス能力を増強できる可能性がある。DN型MKP-M TgマウスおよびMKP-M遺伝子欠損マウスにB16メラノーマ細胞を接種し、肺転移効率を正常マウスと比較することで、MKP-M活性抑制による抗腫瘍効果の有無を確認する。また、同様のメラノーマ接種実験を野生型MKP-M Tgマウスについても行い、逆の効果が認められるか確認する。 最近作成したMKP-MのKOマウスの表現型の解析を進める。現在までの解析で、MKP-MのKOマウスは尾の末端部に特異な鉤上の変形を呈することが分かっている。組織学的解析の結果、変形部位の椎間円板の形成不全を認めることが明らかになった。このことから、MKP-Mの骨軟骨代謝における役割が示唆され、これについても解析を進める。また、MKP-MのKOマウスの各組織由来の細胞内でJNKのリン酸化レベルが上昇していることを確認できているが、由来組織の違いによる各JNKアイソフォームのリン酸化レベル、タンパク発現レベルの差を、野生型マウスと比較することで、生体各組織におけるMKP-Mの生理的役割を詳細に明らかにする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
実験用動物および飼料の費用として300,000円を使用予定である。実験用の試薬類の費用として400,000円を使用予定である。細胞培養用のプラスチックシャーレ等のプラスチック器具類の費用として300,000円を使用予定である。学会発表および研究打ち合わせのための旅費として100,000円を使用予定である。
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Research Products
(2 results)