2011 Fiscal Year Research-status Report
唾液腺カルシウム応答のin vivoイメージングと唾液分泌の同時測定
Project/Area Number |
23592745
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Research Institution | Health Sciences University of Hokkaido |
Principal Investigator |
根津 顕弘 北海道医療大学, 歯学部, 講師 (00305913)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
谷村 明彦 北海道医療大学, 歯学部, 教授 (70217149)
森田 貴雄 北海道医療大学, 歯学部, 講師 (20326549)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | カルシウム応答 / 唾液腺 / in vivoイメージング / 唾液分泌 |
Research Abstract |
本研究は、生きた動物において唾液腺のカルシウム(Ca2+)応答がどのように変化し、唾液分泌に関わるのかを明らかにすることを目的とする。この目的を達成するため、本年度は以下の実験を行った。麻酔したラットの顎下腺にCa2+蛍光指示薬(fura-2)を取り込ませた。顎下腺を露出し、唾液分泌刺激薬(アセチルコリン:ACh)の投与によるCa2+応答を測定した。AChを顎下腺に直接注入すると注入部位のCa2+上昇が観察された。一方、腹腔内投与では、Ca2+上昇は観察されなかった。AChの腹腔内投与により十分な唾液分泌が認められることから、唾液分泌を起こすのに必要な薬物濃度によるCa2+応答は想定よりも低い可能性が考えられた。 そこで、より高感度で変化率の大きなCa2+センサーを顎下腺へ導入することを試みた。2種類のCa2+バイオセンサー(カメレオン-NanoおよびG-GECO)はfura-2よりも高感度、あるいは蛍光比の変化率が大きいという特徴を持ち、小さなCa2+応答を捉えることが可能である。これらのCa2+センサーをウイルスベクター化し、それを用いることで顎下腺に特異的に発現させることができる。これらを発現するウイルスを作製し、生きたラットの顎下腺(特に腺房細胞)にCa2+センサーを発現させた。このラットにACh(10mg/kg)を腹腔内投与すると、顎下腺の腺房細胞で明瞭なCa2+上昇が観察され、この上昇が時間ともに低下する反応をイメージングで捉えることに成功した。また、この時に十分な唾液分泌が起きることを確認した。平成24年度以降は、この方法を用いて様々な分泌刺激薬によるCa2+応答を調べるとともに、その反応に対する受容体拮抗薬や酵素阻害薬の影響を検討する。また顎下腺のCa2+応答と唾液分泌に関与するタンパク質を解析するためのウイルスベクターの作製を行う予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
Ca2+蛍光指示薬(fura-2)を用いて、顎下腺への唾液分泌刺激薬の直接注入により、生きたラットの顎下腺のCa2+応答を測定することができた。一方で、腹腔内投与では、顎下腺のCa2+応答を捉えることができなかった。腹腔内投与により十分な唾液分泌が観察されることから、生体内で唾液分泌を起こすのに必要なCa2+応答は小さいことが考えられた。そこでfura-2よりも高感度で変化率の大きなCa2+測定プローブの使用を検討し、Ca2+バイオセンサー(カメレオン-NanoおよびG-GECO)を本研究に用いることにした。我々は任意のタンパク質を生きたラットの顎下腺に特異的に発現する技術を持っており、これまでに小胞体カルシウムセンサーであるStim1やIP3バイオセンサー(LIBRA)を顎下腺に発現させ、それが正しく機能することを報告している(Morita et al., Arch Oral Biol., 2011, 根津ら、歯科基礎医学会学術大会, 2011、日本薬理学会年会, 2012)。この技術を応用して、Ca2+バイオセンサー発現プラスミドを用いてバイオセンサー発現ウイルスベクターを作成し、生きたラットの顎下腺にこれらを発現させる事に成功した。Ca2+バイオセンサーを用いることにより、fura-2では捉えることのできなかったAChの腹腔内投与による顎下腺のCa2+応答をイメージングで測定することに成功した。本年度はこれらのバイオセンサーの発現ウイルス作製とその機能解析のため、予定した研究の達成はできなかったが、今後は予定通りの計画が遂行出来るものと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度は、顎下腺のCa2+応答のin vivoイメージングと唾液分泌量の測定実験を引き続き行うとともに、唾液分泌に関係するタンパク質およびノックダウン用siRNAを発現させるウイルスベクターの作製に着手する。平成23年度では、fura-2の代わりとなるCa2+バイオセンサーを顎下腺に導入するため、バイオセンサー発現ウイルスの作製を行い、さらにそれがin vivoのイメージングに使用できることを確認した。そのため、研究予定が当初よりも遅れたものの、fura-2よりも安定した顎下腺のCa2+応答のイメージングが可能となり、今後の研究遂行も順調に進められるものと考える。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成23年度にプラスミドベクター、siRNAあるいは標的分子を顎下腺に導入するウイルスベクターなどを作製するのに必要な化学発光・蛍光撮影装置(ライトキャプチャーII)導入し、本研究を遂行するのに十分な備品を揃えた。平成24年度は備品等の購入予定はなく、試薬、プラスチック製品等の消耗品として使用する。また今年度は2~3回の学会での発表を予定しており、研究費はこれらの学会参加の旅費等としても使用する。
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