2012 Fiscal Year Research-status Report
バイオフィルムを制御する自己溶菌酵素の同定と機能解析
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23592746
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Research Institution | Iwate Medical University |
Principal Investigator |
加藤 裕久 岩手医科大学, 歯学部, 教授 (60152740)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田村 晴希 岩手医科大学, 歯学部, 講師 (30316393)
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Keywords | 遺伝子同定 / 口腔レンサ球菌 / 自己溶菌酵素 / 機能解析 |
Research Abstract |
本研究課題では口腔レンサ球菌の自己溶菌酵素(autolysin)をコードする遺伝子を同定することを目的としている。 1. autolysin遺伝子の同定 Streptococcus sobrinus SL1株(血清型d)のatlD遺伝子配列を決定した (GenBank AB723987)。さらに、S. sobrinus OMZ 65株(血清型g)のatlG遺伝子配列を決定した (GenBank AB765628)。これらにより、ミュータンスレンサ球菌の血清型bをのぞく遺伝子情報を解明できた。一方、S. mutans のatlA遺伝子を元に設計した縮重プライマーでPCRを行ったところ、S. sobrinus OMZ 176株(血清型d)ではpeptide chain release factor 3をコードする遺伝子(prfC)などが検出できたが、atlD遺伝子を同定できなかった。さらに、atlG遺伝子特異的プライマーで増幅を試みたところ、PCR産物は得られたが、ダイレクトシーケンス法での塩基配列の決定には至っていない。 2. S. cricetiのautolysin遺伝子の同定と酵素活性に影響するアミノ酸残基の決定 S. criceti OMZ 61株 (血清型a)のatlA遺伝子配列を決定した (GenBank AB759514)。また、ATCC 19642株とE49株からautolysin遺伝子(atlA)を同定し、その酵素ドメインの立体構造をコンピュータで予測した。その結果、glycoside hydrolase ファミリー 25に属するcellosylの酵素ドメインとAtlAの酵素ドメインとの立体構造の類似性が示唆された。また、AtlAの655位と747位のアスパラギン酸残基が酵素活性に重要であることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
予算執行が概ね予定通りに遂行でき、この点では問題がなかった。 ミュータンスレンサ球菌の3菌種で新たに自己溶菌酵素遺伝子を同定できたので研究が進展した。残るS. ratti (血清型b) において同定できればミュータンスレンサ球菌の自己溶菌酵素の概要を解明できるので、この点において研究を進展する必要がある。 S. cricetiの自己溶菌酵素遺伝子の同定と酵素ドメインの構造予測についての論文をまとめることができた。さらに、S. cricetiの挿入配列ISScr1の挿入部位を同定した論文をまとめることで、自己溶菌酵素遺伝子周辺域に遺伝子発現に影響を与えるような挿入配列がないことが明らかとなった。自己溶菌酵素遺伝子の発現調節因子を特定することが、次年度での達成目標である。 タンパク質の発現実験については大腸菌において組換えタンパク質の発現・精製を確認しているが、自己溶菌酵素の高純度精製条件の決定には至っていない。また、菌体培養上清から精製を試みたところ、自己溶菌酵素がブロードに分離されたので、精製に時間を要している。
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Strategy for Future Research Activity |
塩基配列が決定できていないS. ratti, S. sobrinus OMZ 176株に加え、口腔レンサ球菌の自己溶菌酵素をコードする遺伝子の検索をすすめる。自己溶菌酵素にはムラミダーゼ以外の酵素もあるので、それらの同定も考慮して遺伝子同定を行う予定である。また、自己溶菌酵素遺伝子の遺伝子発現を調節している因子を同定できれば研究のさらなる進展が見込まれる。 自己溶菌酵素には基質特異があるといわれる。自己溶菌酵素のタンパク標品を調製して、基質特異性について検討を加える必要がある。組換えタンパク質では、大腸菌の培養条件、菌体処理・超音波破砕条件、カラムの選択・分離条件について検討がまだ必要なので、時間をかけながら条件を探していく予定である。他方、口腔レンサ球菌からタンパク質精製を行うことも方策として挙げられる。この場合、分離カラムの選択がなど、多方面からのアプローチを行う予定である。また、基質側の因子として口腔レンサ球菌菌体について溶菌できるか検討したい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
オリゴDNAなどの試薬を中心に消耗品の購入を5月以降に計画し、発注の手続きを所属機関内で進めている。 研究成果をまとめるために、英語論文校正や論文掲載料などに研究費を用いる。英語論文校正について査読者から細かく英語の質の向上が求められているので、十分な予算確保が必要であり、年度末までの執行を心がけたい。 また研究成果発表のための学会参加費を計上している。 なお、本研究課題の他に研究費は次年度予定されていない。
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Research Products
(4 results)