2011 Fiscal Year Research-status Report
シェーグレン症候群モデルマウス唾液腺アクアポリン5の動態とその分子機構の解明
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23592781
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Research Institution | The Nippon Dental University |
Principal Investigator |
梨田 智子 日本歯科大学, 新潟生命歯学部, 准教授 (10133464)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
今井 あかね 日本歯科大学, 新潟生命歯学部, 准教授 (60180080)
吉江 紀夫 日本歯科大学, 新潟生命歯学部, 教授 (30095278)
下村 浩巳 日本歯科大学, 新潟生命歯学部, 教授 (40139259)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | NODマウス / アクアポリン / 局在性 / 口腔乾燥症 / 細胞内輸送 / cDNAマイクロアレイ |
Research Abstract |
以前に調製したRNA試料を用いてcDNAマイクロアレイ解析を委託した。この試料は,糖尿病発病NOD/ShiJclマウス,および糖尿病を発病しなかったNODマウスおよびコントロールとしてC57BL/6マウスからの耳下腺腺房細胞から抽出したトータルRNAである。一群5検体を保存していたので,今回,これらの純度検定(委託)の結果,8週齢NODマウス,糖尿病発病25週齢マウス,および25週齢コントロールマウスから3検体ずつを,Agilent社のSurePrintG3による遺伝子発現解析を委託した。このデータを用いて,まずnoncoding RNAのプロファイリングを行った。lincRNA,miscRNAについて,染色体ナンバーによる発現遺伝子の特徴を明らかにした。糖尿病NODでコントロールの2倍以上高い発現を示すlincRNAは254,2倍以上低いものは1476であった。発現の高いものはchromosome3に多かった。また,糖尿病NODに特異的に高いlincRNA2種,低いlincRNA1種が同定できた。lincRNAのGOはほとんどが明らかになっていないが,今後発展する可能性がある。これらは,今年度のIADR general sessionに発表する予定である。細胞内輸送タンパク質に関する遺伝子を標的として,今後の研究を行う予定だが,この解析については現在進行中である。アクアポリン5の一次構造および立体構造解析から,C末の細胞質内領域部分が細胞質内で他のタンパク質と相互作用する可能性があると考えた。そこで,この部分のペプチドを合成し,樹脂に結合させ,正常および病態マウス耳下腺ホモジネートから相互作用するタンパク質を抽出する計画を立てた。このためのペプチド合成を委託し,準備をした。また,病態NODマウスを作成するため,10週齢のマウスを購入し,現在飼育中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
今年度は(1)cDNAマイクロアレイ解析,(2)病態下におけるアクアポリン5遺伝子変化,(3)抗原部位の異なる抗体による局在性の確認を主な課題としていた。(1)以前作成したRNAを用いて,委託によりマイクロアレイ解析(SurePrint G3)を行うことができた。現在データマイニング解析が進行中である。解析会社sabioに委託したが,より詳細な検討が必要と考え,さらにGeneSpringGXを用いて解析中である。糖尿病NODと非糖尿病NOD,同時に糖尿病NODとコントロール間で2倍以上の発現差があるものを約60遺伝子ピックアップしているが,これらを候補と考え,さらに別の方法による選択と合わせて決定する予定である。さらに,SurePrint G3は約2万のnoncoding RNAの解析も可能であることから,糖尿病NOD,非糖尿病NODおよびコントロールマウスにおけるlinc RNA およびmisc RNAの発現プロファイリングも行った。また,NCBIのGEOサイト上の他器官のnoncoding RNA発現データを参考にして,組織・器官による相違を検討した。これらは国際学会で発表する予定である。(3)抗原部位の異なる抗体の作製は,当初研究費が不足であったので,行わなかった。それに代わる方法として,より直接的な方法でアクアポリン5に結合するタンパク質を得ることにした。すなわち,C末ペプチド部分に直接的に結合するタンパク質を,コントロールおよび病態マウス耳下腺腺房細胞ホモジネートから取り出すことを考え,今年度はまず,そのペプチド合成を委託し,さらにこれを結合させる樹脂を購入した。また,病態マウス作成のためにNODマウスを購入し,飼育中である。(2)病態下における遺伝子変化は,DNAシーケンサーが不調により行っていない。ラットに一か所変異のある構造が見つかっており,マウスでも調べるべきであると考えている
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Strategy for Future Research Activity |
アクアポリン5のC末サイトゾール部分のペプチドに結合するタンパク質を捉える。糖尿病NODマウスおよびコントロールマウスの耳下腺腺房細胞ホモジネートと,ペプチドを結合させた樹脂をインキュベートし,結合するタンパク質を捉える。高レベルの細胞内カルシウム,cAMPあるいはcGMP存在下など,結合条件を換えて検討する。得られた結合タンパク質画分を二次元電気泳動に付し,糖尿病NODマウスとコントロールマウスにおいて違いのあるタンパク質を捉える。これらはMS解析に委託して構造を同定し,マイクロアレイにより得られた発現に相違のある遺伝子との関連性を検討する。細胞内輸送に関与するタンパク質が同定できたら,このタンパク質の抗体を入手し,アクアポリン5の局在性との関連性を明らかにする。すなわち,正常腺房組織を用いて,免疫沈澱および免疫組織染色により共存性を調べ,また,初代培養腺房細胞を用いてsiRNA導入による標的タンパク質のノックダウンによるアクアポリン5の局在性変化を調べる。また,このタンパク質が関与する細胞骨格系を明らかにする。正常細胞において,細胞骨格の動態を変化させる薬物を用いて,アクアポリン5および標的細胞内輸送タンパク質の局在性変化を調べる。さらにこの変化がインスリンレベルダウンによる細胞内情報伝達系の変化によるものか,あるいは細胞内外の糖質や細胞内情報伝達物質の濃度変化によるものか調べる。すなわち,糖尿病NODマウス耳下腺をインスリン,副交感神経刺激剤や交感神経刺激剤とともに,あるいはグルコースとともにインキュベートして,免疫染色によりアクアポリン5の局在性変化を調べ,変化があった場合には,その間に働く情報伝達系を明らかにする。以上から,アクアポリン5の局在性に関与する細胞内輸送系が明らかとなり,糖尿病NODマウス耳下腺で起こっている情報伝達系の変化が明らかとなる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
NODマウスおよびコントロールマウスを飼育し,糖尿病発病後のNODマウスおよび同週齢のコントロールマウスから耳下腺ホモジネートを調製する。NHS HP Spin Trapキット(GE Healthcare)を用いて,前年度作成したアクアポリン5のC末サイトゾール部分のペプチドを樹脂に結合させて耳下腺ホモジネートとインキュベートし,樹脂に結合する画分を捉える。インキュベーションの条件を,高レベルの細胞内カルシウム,ATP誘導体,cAMPあるいはcGMP存在下など,変化させ,各条件下においてペプチドに結合するタンパク質画分を得る。得られた結合タンパク質画分についてプロテオーム解析を行う。すなわち,二次元電気泳動後,銀染色によりタンパク質スポットを検出し,糖尿病NODマウス耳下腺とコントロールマウス耳下腺における二次元電気泳動のパターンの違いを検出する。次いで,委託解析によりタンパク質の同定を行う。発現に違いのあるタンパク質スポットと,前年度に行ったcDNAマイクロアレイにより得られた発現に相違のある遺伝子との関連性を検討する。ほとんどのエフォートおよび大半の研究費をプロテオーム解析に使用する予定である。最終的なタンパク質の同定は解析委託費が高額なため,できるだけスポット数を絞って委託する。この過程はアクアポリン5の細胞内輸送に関与するタンパク質が同定される重要なプロセスなので,重点的に検討を行う。さらに,時間および経費に余裕があれば,このタンパク質の抗体を入手し,ウェスタンブロッティングおよび免疫組織染色によりアクアポリン5の正常および病態マウスの耳下腺腺房組織における局在性の変化を明らかにする。
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Research Products
(11 results)