2012 Fiscal Year Research-status Report
知覚過敏抑制材の効果 光化学トレーサー法による象牙質透過性の解析
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23592792
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
兼平 正史 東北大学, 歯学研究科(研究院), 助教 (30177539)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石幡 浩志 東北大学, 大学病院, 助教 (40261523)
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Keywords | 知覚過敏 / 象牙質透過性 / 光化学 / ルミノール |
Research Abstract |
知覚過敏処置後における症状の後戻りの原因ならびそのプロセスはいまだ解明されていない。その理由として症状に着目したin vivo解析および象牙質透過性を対象としたin vitroシミュレーションの困難さがあげられる。我々は、ルミノール化学反応を応用した象牙質透過性の定量的計測法を開発し、知覚過敏抑制材の効果を経時的に解析する手法を確立した。本研究では知覚過敏処置後における象牙質透過性計測の実施と、並行して象牙質に対する微細形態学的解析を行い、知覚過敏抑制効果が時間と共に変化するプロセスを解明しより実効性ある知覚過敏抑制法を確立する事を目的としている。 我々の開発した装置は、ヒト象牙質の透過性を簡便にしかも透過量の瞬間的な変動を捉え高速サンプリングをしている。 平成24年度では、従来比5倍感度で発光を検知できる新規の象牙質透過性測定装置を作製し、より精細な解析が期待できるようになった。本年度ではまず、象牙細管内に結晶を生成させる方法と類似の構造原理が考えられるスメア層を表面に作製する方法の効果検証を行い、どのような形態の結晶生成物を作製すべきかを象牙細管の透過性をシミュレートしながら形態学的に検討した。その結果、象牙細管に比較してごく微少な粒径の物でも透過性抑制効果は非常に高い物である事から、結晶生成物を象牙細管内に生成させることには意義がある事を立証した。また、レジン系被膜を象牙質表層に作製してその成分が透過性に及ぼす影響についても検討したが、この種の知覚過敏抑制材では使用する特定成分の濃度が影響を与える事、また細管内の水分による加水分解等の影響が示唆され、3ヶ月が過ぎる頃から透過性が亢進し、時間の経過が透過性に影響を与える重要な因子になる事を明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度では、前年度に改良したルミノール化学発光を利用した象牙質透過性測定装置を用いて、使用する象牙質ディスクの基本的透過性、個々の試料のバラツキや象牙質表面に必ず生じるスミヤ層の影響を考慮しながらコントロール数を増やし、統計学的に信頼できるサンプル数について検討した。さらに、これらの値を参考にしながら、象牙細管内に結晶を生成させる方法と類似の構造原理が考えられるスメア層を表面に作製する方法の効果検証、レジン系被膜を象牙質表層に作製してその成分が透過性に及ぼす影響についての検討および象牙細管内に結晶を生成させてその生成物を詳細に検討する事に着手しており、ほぼ計画どおり考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度に計画した象牙細管に結晶を生成させる方法では透過性抑制効果の補足が期待どうりに得られたが、象牙細管内に結晶を生成させたり沈着させる方法には様々な方法が考えられておりその原理も多数存在する。結晶がどのように生成されそれが透過性にどのように影響をおよぼすのかを解明する事は重要である。そこで本研究においても、生成される結晶について象牙質内部、特に細管内の状態と結晶の大きさ、分布や構造と透過性の関係についてFTIRやEPMA分析等で解析し、結晶化の過程を詳細に検討する事で効率的に結晶化をおこさせる方法を探る。 また、象牙細管開口面を皮膜状にレジン系材料で封鎖する方法の透過性試験については試料数を増やしながら遂行し、透過性抑制効果破壊の過程を詳細に分析する。近年、象牙細管表面をレジン系材料で被膜状に被覆して透過性を減少させる材料が広く臨床に使われ始めている。これらの材料では、歯質との接着機構が破壊されなくても材料そのもので透過性が増大していく事が報告されているため、特にこの種の材料では界面付近のCLSM解析およびSEMによる観察を注意い深く行い、透過性亢進の機構を解析する。象牙細管構造は個体差が大きく影響してくる事が予想されるため、データ数に関しては統計学的に精度の高い研究データが得られるように十分な試料を準備する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度使用額は、当初予定していた象牙細管内に結晶を析出させ象牙質透過性を抑制する方法の一部と象牙細管開口面を皮膜状にレジン系材料で封鎖する方法の透過性試験の一部を、次年度に延期することによって生じたものであり、延期したこれらの計測に必要な経費として平成25年度請求額と合わせて使用する予定である。
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Research Products
(4 results)