2013 Fiscal Year Annual Research Report
難治性根尖性歯周炎の血管内皮細胞を介した炎症の遷延と治癒機構の解明
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23592811
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
武市 収 日本大学, 歯学部, 准教授 (10277460)
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Keywords | 根尖性歯周炎 / 歯根肉芽種 / midkine / 誘導型一酸化窒素合成酵素 / 炎症性細胞 / 血管内皮細胞 / Porphyromonas gingivalis |
Research Abstract |
1.供試試料:外科的に摘出した根尖病巣組織35例をヘマトキシリンーエオジン染色し、歯根肉芽種と診断した27例を供試した。また、埋伏智歯の抜去時に健常歯肉10例を採取し、陰性のコントロールとした。 2.免疫組織化学的検索:抗ヒト誘導型一酸化窒素合成酵素 (iNOS)またはmidkine (MK)モノクローナル抗体で免疫染色を行ったところ、全ての歯根肉芽種でiNOSおよびMKの発現を確認したが、健常歯肉においてはどちらの発現も確認できなかった。iNOSおよびMKは炎症性細胞や血管内皮細胞で強い発現を示し、炎症性細胞は血管内皮細胞周囲に局在していた。 3.遺伝子検索:歯根肉芽種および健常歯肉組織のiNOS発現を検索したところ、全ての歯根肉芽種からiNOS遺伝子の発現を認めたが、健常歯肉組織では確認できなかった。同様にMK遺伝子の発現を検索したところ、全ての歯根肉芽種で観察され、健常歯肉でもMK遺伝子の発現を確認したが、発現強度は歯根肉芽種に比較して有意に低かった。 4.細胞培養:歯周病原菌の一種であるPorphyromonas gingivalisからLPSを抽出し、ヒト臍帯静脈血由来血管内皮細胞 (HUVEC)を刺激したところ、濃度依存的に強いiNOSおよびMK遺伝子の発現を認めた。一方、iNOS inhibitorを添加してからP gingivalisのLPSを添加したところ、iNOS発現が著しく低下した。また、HUVECをガラス板に播種し実体顕微鏡で観察したところ、無刺激では敷石状の形態を示していた。しかし、P gingivalisのLPSで刺激した結果、その形態は紡錘形に変化した。その後iNOS inhibitorを添加したところ、HUVECは元の敷石状の形態に戻った。 以上のことから、歯根肉芽種中の炎症性細胞は歯周病原菌の刺激を受け、炎症のメディエーターであるiNOSを発現すると共に創傷治癒に関与するMKを発現することが明らかとなった。
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