2011 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23592814
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
林 誠 日本大学, 歯学部, 准教授 (00301557)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 歯内治療 / 生体材料 / セメント / 硬組織形成 |
Research Abstract |
歯内療法領域における代表的なセメントである、Mineral Trioxide Aggregate(MTA)は高い生体親和性と辺縁封鎖性を特徴としているが、操作性の改善や生体に及ぼすメカニズム解明の必要性などが指摘されており、価格自体も比較的高価な材料である。そこで本研究の目的は、上記の問題点を改善した新たな歯内治療用セメントを考案し、材料の基礎的解析を行うとともに、開発の一助とすることである。 平成23年度では試験材料として、硬組織形成に関与することが考えられるCalcium Phosphate Cement (CPC)の硬化時間と操作性を向上させたPremixed-CPCを考案し、硬組織形成細胞に対する影響を他の歯内治療用セメントと比較検討した。対照試料としてはMTAと強化型酸化亜鉛ユージノールセメントのSuperEBAを使用し、硬組織形成細胞は、骨芽細胞株(ラット骨肉腫由来の株化骨芽細胞ROS17/2.8)を用いた。培養にはマルチウェルプレート内にセルカルチャーインサートを設置し、その底部に供試材料を設置し、ウェル内に細胞を播種して材料のない細胞だけのものをコントロールとした。解析項目としては、被検材料が細胞増殖に与える影響を経時的に計測し、併せてアルカリフォスファターゼ活性も測定した。また、alizarin red染色によって石灰化nodule形成も検討した。 その結果、細胞増殖、ALPase活性および石灰化nodule形成において、Premixed-CPCとMTA間に有意差は認められなかったが、SuperEBAはPremixed-CPCおよびMTAと比較して有意に低い値を示した。以上の成績から、Premixed-CPCの骨芽細胞に対する影響は、MTAとほぼ同等であることが明らかとなり、本材料の歯内療法用セメントとしての有用性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在までの達成度に関しては、おおむね順調に進展していると考えられる。本研究目的は従来から利用されている歯内治療用セメントの問題点を改善した新たな歯内治療用セメントの基礎的解析である。「研究実績の概要」で述べたように、Calcium Phosphate Cement (CPC)を歯内治療用セメントにするため、操作性や硬化時間を従来からのセメントより改善したものを考案し、硬組織形成細胞に対する影響を検討したところ、本材料の有用性が示唆されたことは大きな成果と考えられる。また、この結果を国際学術雑誌に掲載し、本材に関する情報を本年度中に広く提供できたことも重要な進展と考える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方策としては、歯内治療用のセメントとして使用可能と考えられるCalcium Phosphate Cement (CPC)以外の材料に関しても継続して模索する予定である。また、本年度より得られた結果を基にして、各種材料が細胞分化マーカーの遺伝子発現に及ぼす影響について解析を行う。各細胞が供試材料によって硬組織形成を促すように分化誘導されることは、歯内治療用セメントにおいて重要な要件である。そこで本年度の条件下にて培養後、各細胞のCbfa/Runx2、アルカリフォスファターゼ、BMP、BMPレセプターなどの遺伝子発現をReal-time PCR法にて解析して、硬組織形成細胞に対する影響についてより詳細な情報を得る予定である。さらに研究の進展状況によっては、次年度に計画していた実験動物を用いた供試材料の有用性についても併せて検討していくことも考えている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本年度の研究は前述したようにおおむね順調に進展しているため、本年度研究費をほぼ予定通り使用することができた(繰越額2016円)。次年度の研究費の使用に関しては、物品費として各種歯内治療用セメントの購入、細胞培養、遺伝子解析などに必要な試薬、薬品の購入を考えている。さらに研究の進展状況によっては、実験動物を用いた供試材料の有用性についても併せて検討できる場合、実験動物も購入したいと考える。また、研究成果に関しては、本研究費を使用して関連学会での発表や国際学術雑誌などの投稿を予定している。
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