2012 Fiscal Year Research-status Report
アルギン酸ハイブリッド担体と口腔粘膜および血液由来幹細胞による歯髄・象牙質再生
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23592820
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Research Institution | Osaka Dental University |
Principal Investigator |
好川 正孝 大阪歯科大学, 歯学部, 講師 (70148451)
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Keywords | 歯髄・象牙質複合体 / 歯の再生 / 口腔粘膜細胞 / 幹細胞 / In vitro / Nodule形成 |
Research Abstract |
アルギン酸とハイドロキシアパタイトとを組み合わせた新規担体を開発し、また、幹細胞の採取源を末梢血中あるいは口腔粘膜に求めて、歯科領域でも容易に幹細胞を分離し、in vitroでの速やかな骨芽細胞あるいは骨芽細胞の増殖を実現させて象牙質の再生ひいては歯の再生を実現したいと考え、末梢血あるいは口腔粘膜に由来する幹細胞の増殖法を確立することが目的である。 その目的のために歯科領域における歯の再生のための幹細胞の採取源の確立、また、幹細胞の分化・増殖因子を発見、すなわち、末梢血由来細胞あるいは口腔粘膜由来細胞によるnodule形成をin vitroで確認し、これらの幹細胞による骨または象牙質形成の実現が主たる目的であり、実験を遂行した。 これを達成するための基礎実験として、ラット末梢血由来幹細胞および口腔粘膜由来幹細胞の採取法と増殖法を確立し、硬組織形成をin vitroで誘導を試みた。また、骨形成誘導因子のデキサメタゾンを添加し、nodule形成の誘導を図った。 末梢血由来細胞中に培養が可能な付着性細胞が極めて少なく、骨芽細胞や象牙芽細胞に分化する幹細胞の存在が少ないために臨床への応用は現状では適していないとの結果を得た。しかし、口腔粘膜由来細胞はMEM培地では口腔粘膜由来細胞の生存が難しい結果が得られた一方、KCM培地でデキサメタゾンとβ‐グリセロフォスフェイトとを添加して培養した結果、口腔粘膜由来細胞による培養器底面への硬組織の形成が認められた。本研究の現状で、in vitroでの口腔粘膜由来細胞の培養にKCM培地が適していることがほぼ確実になった。これは、歯科領域で硬組織形成のための幹細胞、しかも、自己の幹細胞、しかも、硬組織形成に有用な幹細胞が容易に得られる可能性を認められたものである。24年度には、歯の再生の臨床応用のために極めて有用な結果が得られたと考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ラット末梢血由来幹細胞および口腔粘膜由来幹細胞の増殖を促進して硬組織形成を誘導するため、in vitroでの硬組織形成性細胞の成長因子のスクリーニングを継続し、骨形成誘導因子であるデキサメタゾンを添加して末梢血由来細胞あるいは口腔粘膜由来細胞によるin vitroでのnodule形成の誘導を試みた。歯髄・象牙質複合体再生のための幹細胞採取源の確立と、その効果的な分化・増殖の方法を目指したところ、末梢血由来細胞では期待した結果が得られなかったが口腔粘膜由来細胞では硬組織形成のために働く幹細胞の存在が示唆される結果が得られ、目的の達成に近づいたと言うことができる。 ラット末梢血由来細胞および口腔粘膜由来細胞のin vitroでの増殖について、デキサメタゾン、BMP-2あるいはBMP familyを添加しての、MEMでの培養では顕著な効果が認められなかった。しかし、iPS細胞培養に使用されるKCM培地に変更してラット末梢血由来細胞および口腔粘膜由来細胞の培養を実施したところ、口腔粘膜由来細胞はKCM培地でよく生育し、nodule形成を示した。歯科領域での臨床で幹細胞を得る源として口腔粘膜が有用であることが明らかになり、目標の一つが達成できた。 しかし、末梢血由来細胞中に培養が可能な付着性細胞が極めて少ないために幹細胞を得られていない現状、また、アルギン酸とハイドロキシアパタイトとを組み合わせた新規ハイブリッド担体を作製して動物実験を実施したが、パラフィンブロックの状態で、薄切切片にしてin vivoでの新規ハイブリッド担体の効果についての結果を光学顕微鏡的に観察するに至っていない点では進捗に遅れがあると言わざるを得ない。
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Strategy for Future Research Activity |
ラットの末梢血由来あるいは口腔粘膜由来の幹細胞をin vitroで成長因子を添加、培養を継続して、骨形成性細胞への分化能を有する細胞への分化・増殖の促進を確立する。ハイドロキシアパタイト担体とアルギン酸/ハイドロキシアパタイト・ハイブリッド担体に培養した細胞を播種してラット皮下に埋入し、それらの気孔に形成された骨を定量して、新規アルギン酸/ハイドロキシアパタイト・ハイブリッド担体内での骨形成効果を明らかにし、歯髄・象牙質複合体再生を実現する。 気孔内骨形成促進を図るために従来の多孔質ハイドロキシアパタイト担体に勝る新規に開発、ラットの口腔粘膜から採取した細胞を新規アルギン酸/ハイドロキシアパタイト・ハイブリッド担体に播種してCO2インキュベーター内で培養し、in vitroおよびin vivoでの、担体内でのこれらの細胞による骨または象牙質の形成を図る。そして、歯髄・象牙質複合体再生、さらに、歯根再生を実現して現在のインプラントに代わる歯髄組織様組織を含む歯根再生の実現を目指して、硬組織形成促進のファクターを検討する。 頬粘膜由来細胞あるいは骨髄細胞懸濁液の濃度によるハイブリッド担体内および多孔質ハイドロキシアパタイト担体内での骨形成の比較を行って、硬組織形成に十分な頬粘膜由来細胞数を確定する。ハイブリッド担体および多孔質ハイドロキシアパタイト担体に播種、CO2インキュベーター内で一定期間、保存したあと、ラット背部皮下組織に担体を埋入、6週後に摘出して気孔内骨形成を評価する。評価方法は、組織標本で骨形成を認める担体内気孔の比率を計数によって算出することと、担体を磨砕、脱灰して上清に含まれるオステオカルシンを免疫化学的に定量することによる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
消耗品の購入が主な支出である。その多くは細胞培養にとって必須で使用数の多いピペットや培養プレート等のディスポーザブルのプラスティック器具の購入に充てる。また、細胞培養に必要不可欠の培地、そして、サプリメント等の試薬を購入する。 培養細胞のアルカリフォスファターゼ活性の測定、そして、形成された硬組織のオステオカルシン量あるいはカルシウム量の定量的な測定は硬組織形成の確認に必要である。そのために、比較的高価であるそれぞれの測定用キットを購入しなければならない。 細胞を得るために、また、皮下埋入してin vivoの実験を実施するためのラットの購入と飼育費用を支出する。 国内外の学会で成果発表を行う予定をしており、旅費等の支出が必要である。また、学会発表に際しての学会参加費の支出を予定している。 最終年度であり、得られたデーターを印刷公表しなければならない。Journalによっては掲載費用が必要なことがあり、支出の必要が生じる。また、Journalへの投稿に際しては、エディターから必ずネイティブスピーカーによる論文の英文校正が求められる。そのために、これを依頼しなければならず英文校正費の支出が必要になる。
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Research Products
(9 results)