2011 Fiscal Year Research-status Report
Wntシグナル制御下に培養した幹細胞由来成長因子による新規骨再生医療
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23592883
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
片桐 渉 名古屋大学, 医学部附属病院, 助教 (10437030)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 骨再生医療 / 幹細胞 / 培養上清 / 成長因子 |
Research Abstract |
まず、骨髄由来間葉系幹細胞(MSC)の培養上清中に含まれる成長因子(以下MSC-CM)の検索、それらの幹細胞の細胞特性に及ぼす影響について検討を行った。培養上清中にはVEGF、IGF-1、TGF-β1、HGF等の成長因子が含有されていた。MSC-CM存在下ではヒトやラットMSCの遊走能、増殖能が亢進した。またヒト𦜝帯静脈血管内皮細胞を用いた血管新生アッセイにおいてもMSC-CMは血管新生能を亢進させた。さらにMSC-CM存在下に培養したヒト、ラットMSCではアルカリフォスファターゼやオステオカルシンといった骨形成関連遺伝子の発現も亢進した。 次いで、ラットを用いた移植実験をおこなった。ラット頭蓋骨に直径5mmの骨欠損を作成し、足場材(アテロコラーゲン、アガロース)とともにMSC-CMを移植したところ、コントロール群に比べ移植後2、4、8週いずれにおいても有意に骨形成の増加を認めた。新生骨は組織学的、エックス線学的にも認められ,本法が骨再生に有用であることが示唆された。 新生骨が幹細胞の遊走によって形成されたかを確認するためin vivoイメージングの手法を用いて検討したところ、ラット尻静脈から注入した蛍光色素染色したMSCがMSC-CM移植をおこなった頭蓋骨に集積していることが示された。さらにGFPラットを用い、頭蓋骨骨欠損部にMSC-CMを移植したところ、新生骨はGFP陽性かつ幹細胞に発現するCD44陽性の細胞が集積していた。これらのことは移植したMSC-CMが体内の幹細胞を局所に遊走、増殖させ、骨形成がおこなわれたことを示す結果となった。 これらのように、本年度においてMSC-CMが細胞移植を伴わない、新たな骨再生医療に有用であることが示唆される結果が得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度の計画である、培養上清の特性、細胞に与える影響を明らかにし、実際、動物実験において良好な骨再生能を確認した。さらにその骨再生には内在性幹細胞の遊走が深く関わっていることを明らかにした。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は培養細胞の細胞特性を利用し、より骨再生に特化したMSC-CMを作成することを目標としたい。実際これまでの研究ではMSCの増殖、骨芽細胞への分化においてはWntシグナルが深く関与していることが示されている。今後はこの点に着目し、Wntシグナルを操作することによって得られる培養上清による骨再生について検討を行って行きたい。 さらに、今後は疾患モデルを広げ、歯周病、骨粗鬆症、骨折等、より臨床に即したモデルを使用することにより、実用化へ向けた基盤を作成したい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
主としてラットなど、動物の購入・飼育費用、あるいは細胞培養に係る培地や各種成長因子の購入に使用予定である。さらには成果発表のための投稿費、学会参加費等にも充当したい。
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Research Products
(14 results)