2012 Fiscal Year Research-status Report
歯髄幹細胞の象牙芽細胞への分化に関与する遺伝子群の情報ネットワークの解明
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23592903
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Research Institution | The Nippon Dental University |
Principal Investigator |
筒井 健機 日本歯科大学, 生命歯学部, 教授 (00097065)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小林 朋子 日本歯科大学, 生命歯学部, 助教 (10548283)
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Keywords | ヒト歯髄幹細胞 / 石灰化能 / 脂肪分化能 / 多分化能 / DNAマイクロアレイ |
Research Abstract |
平成23年度にヒト歯髄初代培養細胞から50クローン分離し、各クローンの間葉系幹細胞マーカの発現ならびに多分化能と細胞増殖能との関係を解析した。 平成24年度にはin vivoの実験系として、上記の分化能を有する一部のクローンをヌードマウスに移植し、象牙質様組織や歯髄様組織の形成過程における情報ネットワークの変遷解析を目的とした。しかし、クローニング過程やその後の細胞増殖過程で、分化能解析や間葉系幹細胞マーカの発現解析を行ったことにより細胞の集団倍加数が増加し、かつ細胞が大型化したため、移植に必要な細胞数を確保できなくなった。 一方、平成24年度ではin vitroの実験系として、多分化能と遺伝子情報ネットワークの関連について検討した。分化能を解析したクローンの中から、石灰化能と脂肪分化能、軟骨分化能を有する細胞を3クローン、石灰化能と軟骨分化能を有する細胞を1クローン、石灰化能のみを有する細胞を1クローン選出した。次年度はこれらのクローンの網羅的遺伝子解析を行い、分化能の違いと発現遺伝子との相違を解明する。 また、平成24年度はヒト歯髄幹細胞の象牙芽細胞への分化や象牙質形成への関係が示唆されているestrogen receptor(ER)とandrogen receptor(AR)の機能を解析するため、ヒト歯髄幹細胞にestradiol(E2)またはdihydrotestosterone(DHT)を作用させ、網羅的遺伝子発現をパスウェイ解析ソフトウェアで検討した。E2またはDHT感受性の遺伝子は、これらの受容体を介して発現変動していることが判明した。以上は、未知であったヒト歯髄幹細胞に発現するERとARの生物学的意義を考察するうえで重要な知見と思われる。この成果はArch Oral Biolの電子ジャーナル版に原著論文(2013年3月)として公表された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度には、in vivo実験として、細胞クローンをヌードマウスへ移植し、象牙質を伴う歯髄様組織を形成させることを目的としたが、歯髄様組織の形成の実現には至らなかった。 一方、in vitroの実験系を充実させるべく、これまでの石灰化能、脂肪分化能に軟骨分化能を加えた3つの系で分化能を検討した。さらに、網羅的遺伝子発現解析により、分化能の違いと発現遺伝子との相違の解明に着手した。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、石灰化能、脂肪分化能、軟骨分化について解析したクローンの網羅的遺伝子発現データをより詳細に解析する。遺伝子情報データベースやパスウェイ解析ソフトウェア等を使用して、分化能の違いと発現遺伝子との相違を解明する。 さらに、網羅的遺伝子発現データ解析によって選出した一部の遺伝子の発現をRT-PCRまたはqRT-PCRで検証する。 また、クローニングした歯髄細胞を石灰化分化誘導し、網羅的遺伝子発現解析を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度は、発現解析の検証のためのPCR用試薬、器具類、およびDNAマイクロアレイ実験外注費用等に使用する予定である。なお、当該年度の研究費の一部は、DNAマイクロアレイ解析用経費に充てるため、次年度への繰越金とした。
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