2011 Fiscal Year Research-status Report
ヒト骨髄由来間葉系幹細胞を用いた安全・安心な細胞治療を行うための基盤整備研究
Project/Area Number |
23592923
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
岡本 康正 広島大学, 病院, 病院助教 (40423371)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
栗原 英見 広島大学, 医歯(薬)学総合研究科, 教授 (40161765)
岡本 哲治 広島大学, 医歯(薬)学総合研究科, 教授 (00169153)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 歯学 / 再生医学 |
Research Abstract |
顎骨より採取した骨髄液中に存在する骨髄細胞を含む骨髄液をESF基礎培地のみ、基礎培地に基本因子を添加したESF6培地、ESF6培地にLIFを添加したマウスES用無血清培地ESF7、あるいは、ESF6培地にFGF-2とヘパリンを添加したESF8培地と混合し、初代培養を試みた。先行研究で開発したマウスES細胞用無血清培地ESF7に、FGF-2 およびヘパリンを添加した培地を用いたところ、十分な増殖能を有する骨髄細胞を培養することが可能であった。この研究では、既に開発したhESF9をもとに、無血清培養条件の検討を行った結果、FGF-2、TGF-β1およびアスコルビン酸は濃度依存的にMSCの細胞増殖を促進した。そこで、hESF9にTGF-β1を加えたhESF10培地と血清を含む指定維持培地POWERDBY10間での各種遺伝子発現を比較検討した。その結果、hESF10培地ではヒトES細胞の未分化マーカーであるNanog、Oct3/4、Sox2の発現はPOWERDBY10よりも高く、また、hMSCマーカーであるCD90、CD105、integrin β1およびtype I collagen も高発現を認めた。一方、骨分化マーカーであるbone sialoprotein、 osteopontin、osteocalcin、osteonectinの発現は、POWERDBY10に比べて低いことがわかった。以上のことから、hESF10は、未分化性と多分化能を維持したhMSC細胞の増殖を促進していることが示唆された。また、空調管理をはじめとした内部環境、種々の機器管理を徹底し、施設面を含めた環境整備に努めた。さらに、培養課程での管理体制、再現性の確保、培養技術の向上をはかり、細胞の品質管理に注意して対応した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
間葉系骨髄幹細胞の未分化状態を維持する培養条件の確立に関しては概ね目途がたってきているように思われるが、まだまだ充分満足できる状況とは言えない。幹細胞を利用した再生医療を実施する上で、ウィルスやマイコプラズマ等の混入、汚染防止に対する品質管理として血清、細胞養液、培養細胞における細菌・真菌培養検査、エンドトキシン定量およびマイコプラズマ検査を行うことによる抗原性、病原性を持つ感染因子の検討および骨髄由来幹細胞におけるin vitro、in vivoでの分化制御機構、造腫瘍性を検討する必要がある。また、施設面を含めた環境整備や細胞の品質管理については現状以上に引き続いて徹底したリスク管理が求められる。
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Strategy for Future Research Activity |
幹細胞を利用した再生医療を実施する上で、感染因子の混入防止、幹細胞の分化・増殖を制御し、実際の臨床応用で細胞治療に使用される細胞の安全性の確保、細胞の品質管理、倫理規定の標準化および細胞の機能を評価するシステムを確立することが必要不可欠である。今後は、抗原性、病原性を持つ感染因子の検討および骨髄由来幹細胞におけるin vitro、in vivoでの分化制御機構、造腫瘍性を検討する。また、幹細胞を利用した再生医療を開発する上で、骨髄由来幹細胞を特定の細胞に分化・誘導するためには、その分化制御機構を解明し、分化をコントロールする必要がある。そこでヒト骨髄由来間葉系幹細胞の分化能および増殖能の検討を行っていく。MTT assayにてFGF-2、Nodal、BMP-4、activin等の存在下、非存在下での細胞増殖能を解析し、骨髄幹細胞の増殖能を検討する、未分化性の検討をアルカリフォスファターゼ活性で検討し、Oct3/4およびSSEA-1抗体を用いて免疫組織学的ならびにFACS解析し、自己複製の最適化を解析する、FGF-2、Nodal、BMP-4、activin等の存在下、非存在下で未分化骨髄幹細胞からmRNAを抽出し、RT-PCRおよびreal time-PCRを用いて解析し、マイクロアレイにより網羅的解析を行うことで遺伝子発現を解析する、骨髄幹細胞の分化・増殖に関して、FGF-2、Nodal、BMP-4、activin等の存在下、非存在下での受容体シグナル伝達経路の解析を行い、分化制御チロシンシグナルの解析を行っていく。さらに、施設面の環境整備、細胞の品質管理については引き続いて行っていく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本研究施設では、長年にわたって口腔癌における分子細胞生物学的メカニズムの研究を行っており、口腔癌に関する組織学的、分子細胞生物学的検討を重ね、それらの成果を数々の国際誌に発表している。本研究計画を実行するにあたり、培養用試薬、遺伝子実験用試薬、プラスチック製品、ガラス製品等の消耗品は必要不可欠であり、学会発表、調査、資料収集等において研究経費を必要とする。また、ヒト骨髄幹細胞の培養に必要なクリーンベンチ、CO2インキュベーター、遠心機、顕微鏡、Coulter Counter等はヒト細胞培養室に全て現有しており、分子生物学的探索を行うためのサーマルサイクラー、シークエンサー、Real time PCR法による解析を行うための定量的遺伝子増幅装置等も同学部の共有施設には設置されており、それらの使用にあたり消耗品を経費として必要とする。
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