2011 Fiscal Year Research-status Report
HPV陽性腫瘍に対する効率的な分子標的薬投与の可能性について
Project/Area Number |
23592930
|
Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
砂川 元 琉球大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (30112452)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
喜名 振一郎 琉球大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (40422422)
仁村 文和 琉球大学, 医学部附属病院, 助教 (50457678)
|
Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
|
Keywords | 分子標的薬 |
Research Abstract |
我々は、子宮頸癌細胞株SiHa細胞を5mM の過酸化水素で処理した後、ウェスタンブロットを行い、Met タンパク質を検出した。24時間後にMet の発現上昇を確認した。 抗癌剤で、白金化合物であるCDDP も48時間後にMet の発現上昇を促した。抗酸化剤であるNAC で前処理した細胞に対しては、CDDP はMet の発現を促さなかった。その後、細胞に対して5mM の過酸化水素、あるいは5mM の過酸化水素+5μM imatinib で処理し、24時間後に細胞を回収した。過酸化水素依存的なMet の発現上昇は、imatinib によって抑制された。HGF のautocrine な分泌によりMet の活性化が誘導される可能性がある。この可能性を検討するために、我々は血清を除去した培地に100μM のCDDP、あるいは25μg/ml HGF、DMSO、またCDDP +2μM SU11274(Met 阻害剤)、CDDP +HGF を加え、細胞を処理した。細胞を二日間、100μM のCDDP のみで処理した。二日目に、CDDP で処理された細胞にHGF を加えた。HGF を加えた細胞ではAkt のリン酸化の上昇が認められたが、CDDP 単独で処理された細胞ではAktはコントロールの細胞と同程度のリン酸化しか示さなかった。続いてMet 阻害剤のSU11274 を用いてAkt のリン酸化が、HGF 依存的なMet の活性化によるものであるか検討した。CDDP 単独処理でもMet の発現上昇が確認されたため、血清はCDDP 依存的なMet の発現上昇には関与していないことが判明した。SU11274 はHGF によるMet やAkt の活性化を完全に抑制したことより、化学療法後のMet の活性化はparacrine な機構に基づくものと予測された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
PDGFR やErbB ファミリー分子群は、細胞内に産生した活性酸素によって活性化されるRTK であり,酸化ストレス後の細胞の生存を促す。臨床上、ErbB ファミリーに対する分子標的薬は目覚ましい効果をあげている。活性酸素は、PDGFR-αやその他のRTK も活性化するが、化学療法がErbB ファミリー以外のRTK に影響を与えるか否かについては不明のままであった。臨床上、PDGFR阻害剤は、進行性の腫瘍に対して単剤で使用されているが、良好な結果は得られていない。我々は、imatinib(Gleevec) は化学療法と併用することで、抗癌剤耐性化を効果的に抑制する可能性を見出している。一連の実験結果はHPV感染癌細胞株で行われており、この結果にHPV が関与するか検討することで、分子標的薬とHPV 感染の関わりを明らかにする段階に至っている。以上の点をふまえ研究は目的にそって順調に進んでいると判断できる。
|
Strategy for Future Research Activity |
現在は、これまでに得られた実験結果にHPV感染の有無がどう関わっているかを検討している段階である。具体的に行う実験としては、HPV感染癌細胞中のHPV タンパクのノックダウンを行うことで、見出されている抗癌剤依存的なMet遺伝子の活性化にHPV 感染がどう関わっているか検討する。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度は、これまでに購入した試薬等に不足が生じた場合に補充することと、研究結果の学会等での報告などに研究費を使用する予定である。
|