2011 Fiscal Year Research-status Report
自然免疫分子カセリシジンの腫瘍抑制効果に対するmiRNA制御機構の解明
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23592938
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Research Institution | Health Sciences University of Hokkaido |
Principal Investigator |
奥村 一彦 北海道医療大学, 歯学部, 講師 (60194510)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小林 美智代 北海道医療大学, 歯学部, 助教 (80316265)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 抗菌ペプチド / LL-37 / 自然免疫 / 腫瘍抑制 / 上皮間葉移行関連分子 |
Research Abstract |
hCAP18/LL-37を発現していない口腔扁平上皮癌細胞(Mock/SAS-H1癌細胞)では、hCAP18/LL-37合成ペプチドにより殺細胞効果がみられたが、hCAP18/LL-37遺伝子を強制発現させた口腔扁平上皮癌細胞(CAMP/SAS-H1癌細胞)ではその効果は無効であった。また、CAMP/SAS-H1癌細胞の細胞遊走性と細胞浸潤性はMock/SAS-H1細胞に比べ有意に低下していた。また、癌細胞が産生する基質分解酵素(MMPs)産生を検討したところ、Mock/SAS-H1細胞はMMP9とMMP2産生を認めたが、CAMP/SAS-H1癌細胞はMMP9産生がみられなくなり、MMP2産生も減少していた。このことは、CAMP/SAS-H1癌細胞のMMP9 mRNA発現がみられなくなること、さらに、MMPsの阻害を行うTIMP1とTIMP3のmRNAが強く発現していることで裏付けられた。 次に、LL-37ペプチドによる細胞遊走が上皮間葉移行を介しているか否かを、健常上皮細胞(HaCaT, NHEK)とhCAP18/LL-37遺伝子を強制発現させた口腔扁平上皮癌細胞(CAMP/SAS-H1癌細胞)で検討した。LL-37ペプチド(0-1μg/ml)で処理すると、健常上皮細胞では、濃度依存性に細胞遊走が促進された。一方、CAMP/SAS-H1癌細胞ではペプチド濃度依存的に細胞遊走が抑制された。そこで、ペプチド処理の際の上皮間葉移行関連分子種のmRNA発現の変化を検討した。その結果、健常上皮細胞のβ-catenin発現がペプチド濃度依存性に増強したが、CAMP/SAS-H1癌細胞では逆に減少した。また、fibronectin, vimentinの発現は、ペプチド濃度依存性に健常上皮細胞で増強し、CAMP/SAS-H1癌細胞では減少することが認められた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
hCAP18/LL-37をコードするCAMP遺伝子を強制発現させた口腔扁平上皮癌細胞(CAMP/SAS-H1癌細胞)の検討により、恒常的にhCAP18/LL-37を産生放出する細胞では、hCAP18/LL-37による殺細胞効果が消失することが示された。さらに、CAMP遺伝子導入により細胞遊走性が低下すると共に基質分解酵であるMMP2とMMP9活性とmRNA発現の変化が生じることで、癌細胞の浸潤性を抑制することを示した。 そこで、hCAP18/LL-37による細胞浸潤性を解析するために、健常上皮細胞(HaCaT, NHEK)を対照として検討を進めた結果、MMP2とMMP9活性を制御すると共に上皮間葉移行関連分子を介して上皮細胞から間葉細胞へ形質を転換することにより、hCAP18/LL-37ペプチドが細胞遊走性を促進することが示された。
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Strategy for Future Research Activity |
CAMP遺伝子がMMPや上皮間葉移行関連分子の遺伝子発現を制御する可能性が示されたことから、これらの遺伝子プロモーターに共通する制御機構についてクロマチン免疫沈降法を用いて解析する必要がある。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本年度の受入利息分として発生した金額である。次年度の研究費と合わせて、適正運用をはかりたい。
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