2012 Fiscal Year Research-status Report
口腔癌の顎骨浸潤・骨破壊に対するPTH・COX-2による新たな治療戦略
Project/Area Number |
23592945
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Research Institution | Tokyo Medical University |
Principal Investigator |
里見 貴史 東京医科大学, 医学部, 准教授 (70276921)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
續 雅子 東京医科大学, 医学部, 助教 (40385092)
虻川 東嗣 東京医科大学, 医学部, 助教 (50453717)
渡辺 正人 東京医科大学, 医学部, 講師 (40349460)
長谷川 温 東京医科大学, 医学部, 助教 (50424619)
水口 純一郎 東京医科大学, 医学部, 教授 (20150188)
近津 大地 東京医科大学, 医学部, 教授 (30343122)
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Keywords | 口腔癌 / 顎骨浸潤 / PTH / COX-2 |
Research Abstract |
マウス扁平上皮癌であるNR-S1細胞株とSCCVII細胞株の培養実験で、PTHrPとCOX-2 のmRNAの発現量を比較検討した。結果、NR-S1細胞株はSCCVII細胞株より、約3倍のPTHrP mRNAを発現し、COX-2 mRNAの発現は、SCCVII細胞株の方が、NR-S1細胞株より約2倍高かった。移植実験では、COX-2ノックアウトマウスに移植癌細胞は生着せず、C3H/Heマウスにおいて顎骨浸潤の実験系を確立した。 以上から、in vivoの実験を開始した。NR-S1細胞、SCCVII細胞とも1×107cell/mlの癌細胞浮遊液50μl をC3H/Heマウスの右咬筋部に移植した。PTHrP,COX-2のmRNA発現量が異なる2種類のNR-S1細胞とSCCVII細胞を移植した顎骨浸潤・骨破壊モデルに、COX-2inhibitorの投与を行った。実験群は、①NR-S1群 ②NR-S1+COX-2inhibitor投与群 ③SCCVII群 ④SCCVII+COX-2inhibitor投与群の4群に別け、各群の腫瘍体積や顎骨浸潤について比較検討を行った。また、破骨細胞や骨芽細胞の細胞数の比較やcyclooxygenase-2 (COX-2), interleukin-6 (IL-6), parathyroid hormone related protein(PTHrP), tumor necrosis factor-a (TNF-a), receptor activator of nuclear factor-κB (RANK), RANKligand (RANKL), およびosteoprotegerinのmRNA量の比較検討も行った。 結果はPTHrP低発現腫瘍であるSCCVII移植群にCOX-2inhibitorを投与したもので最も高い抗腫瘍、顎骨浸潤抑制効果が確認された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
マウス扁平上皮癌(NR-S1細胞株、SCCVII細胞株)を移植した顎骨浸潤モデルの実験系を確立するのにやや時間を費やした。C3H/HeマウスとCOX-2ノックアウトマウスの双方で顎骨浸潤モデルの作製を試みたが、結果、COX-2ノックアウトマウスでは移植癌細胞は生着せず、癌細胞の顎骨浸潤モデルの実験系はC3H/Heマウスで確立した。 マウス扁平上皮癌で、PTHrPmRNA, COX-2mRNAともに発現量が異なるNR-S1細胞株とSCCVII細胞株を移植した顎骨浸潤・骨破壊モデルにCOX-2inhibitorを投与し、抗腫瘍効果や顎骨浸潤抑制効果を比較検討を行う実験を開始した。Pirot実験では、COX-2inhibitorを予定期間投与できないといった失敗が何度か繰り返されたが、餌の工夫など種々の改良でなんとか難局を乗り切った。本実験は予定通りに遂行でき、思ったような結果が得られている。現在、顎骨浸潤部をマイクロCTによる3次元的形態を計測中であり、骨芽細胞、破骨細胞の病理組織学的検討のための切片を作製中である。また、腫瘍組織より産生されるcyclooxygenase-2 (COX-2), interleukin-6 (IL-6), parathyroid hormone related protein(PTHrP), tumor necrosis factor-a (TNF-a), receptor activator of nuclear factor-κB (RANK), RANKligand (RANKL), およびosteoprotegerinなどのmRNA量をreal-time PCRで解析を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
現在、癌治療(骨浸潤・骨転移)におけるBP製剤やCOX-2阻害剤の研究が種々の診療科で基礎的あるいは臨床的に進められている。口腔癌の顎骨浸潤を抑制する鍵は、破骨細胞の誘導分化に働く様々なサイトカイン(IL-6,PTHrP,TNF-α,RANK,RANKL,osteoprotegerin)の働きとMMPsやCOX-2との役割を解明することである。なかでも今回注目しているPTH, COX-2の癌の顎骨浸潤における役割は重要で、骨浸潤・骨破壊に対する今後の治療に与える影響も非常に大きいと予想される。 今後は、顎骨浸潤モデルマウスのマイクロCTによる顎骨浸潤部の3次元的形態を計測し、骨芽細胞、破骨細胞の病理組織学的な比較検討を行う。また、分化マーカーなどの検討のために、タンパクレベルを免疫組織化学的染色、遺伝子レベルをin situ hybridizationを行い組織学的、微細形態学的、定量力学的に解析し、組織形態の評価を行う予定である。腫瘍組織より産生されるCOX-2, IL-6, PTHrP, TNF-α, RANK, RANKL, osteoprotegerinなどのmRNA量をreal-time PCRで解析し、①NR-S1群②NR-S1+COX-2inhibitor投与群③SCCVII群④SCCVII+COX-2inhibitor投与群の4群の比較検討を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
顎骨浸潤マウスは、経時的に腫瘍サイズと体重測定を行い、最終的には屠殺し、顎骨を掃出する。顎骨はマイクロCTによる3次元的形態計測を行った後、通法に従い固定、脱灰し、パラフィン包埋あるいは非脱灰標本を作製する。その後、H-E染色,トルイジンブルー染色,V.Goldner染色による病理組織学的および免疫病理組織学的検討を行う。また、非脱灰病理切片にて、骨芽細胞や破骨細胞の発現様式を検討するためにALP染色,TRAP染色を行う。分化マーカーなどの検討のために、タンパクレベルを免疫組織化学的染色、遺伝子レベルをin situ hybridizationを行い組織学的、微細形態学的、定量力学的に解析し、組織形態の評価を行う予定である。COX-2, IL-6, PTHrP, TNF-α, RANK, RANKL, osteoprotegerinの遺伝子特異的プライマーと共にApplied Biosystems 7500 のreal time PCR systemにてmRNA量を定量解析し、詳細な比較検討を行う。
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