2012 Fiscal Year Research-status Report
口腔癌顎骨浸潤の免疫学的機序の解明と新規治療戦略の開発
Project/Area Number |
23592957
|
Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
野口 誠 富山大学, 大学院医学薬学研究部(医学), 教授 (50208328)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
新井 直也 富山大学, その他の研究科, 准教授 (80323723)
|
Keywords | 口腔癌 |
Research Abstract |
本研究課題では、口腔粘膜に発生した扁平上皮癌は、早期に顎骨へと浸潤することがあり、顎骨を含めた顎口腔領域の広範な切除による極めて侵襲の高い治療が必要とされ、顎口腔領域の器官や機能を大きく損なうという問題がある。そこで、口腔癌においては、顎骨浸潤のメカニズムに着目した研究による新たな治療戦略の開発が重要と考えられるが、口腔癌の顎骨浸潤については、いまだに解明されていない点が多い。癌による骨破壊においては、破骨細胞(osteoclast;以下OC)が重要な役割を果たすことが示唆されており、口腔扁平上皮癌の顎骨浸潤においても腫瘍局所におけるOCの分化過程を探ることが、骨浸潤のメカニズムの解明および骨浸潤を抑制するための有効な治療法の開発に重要と考えた。そこで申請者らは、口腔癌組織におけるT細胞免疫応答とOCの分化について検討を行い、口腔扁平上皮癌組織における顎骨浸潤のメカニズムを解明することを本研究の目的とした。口腔癌の顎骨浸潤過程におけるOC分化の免疫学的制御機構を解析している。OCの分化過程においては、CD4陽性ヘルパーT細胞が関与していることが示唆されている。その中でも、Th2細胞および制御性T細胞(以下Treg)などはOCの分化を抑制し、逆にTh1およびインターロイキン17産生ヘルパーT細胞(以下Th17)はOCの分化を促進することが報告されている。しかしながら、これらの報告はリウマチ性疾患などの炎症性病変における炎症反応系での研究であり、腫瘍局所におけるTh反応系とOCとの相互作用に関する報告は未だ不明である。そこで、われわれは、マウス口腔癌細胞SCCVIIを用いたシンジェニックのマウス口腔癌モデルにより、腫瘍局所におけるTh細胞の分布の解析を行うことにより、口腔癌の顎骨浸潤過程における免疫学的機序の解明を行っている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
そこで、われわれは、マウス口腔癌細胞SCCVIIを用いたシンジェニックのマウス口腔癌モデルにより、腫瘍局所におけるTh細胞の分布の解析を行ったところ、腫瘍内に浸潤しているCD4陽性T細胞のうちで、50%以上がFoxP3陽性のTregであり、口腔癌の組織においては、このTregが極めて重要な役割を果たしていることが示唆された。さらに、腫瘍内でのTregの細胞表面マーカーを解析したところ、CTLA-4を強発現していることが確認された。また、in vitroでのTregによるOCの分化誘導能をTRAP assayにより解析したところ、口腔癌組織由来のTregはCTLA-4を介してOC分化を有意に抑制していることが分かり、口腔癌組織においては、TregがOC分化抑制により顎骨浸潤を制御している可能性が示唆された。一方で、腫瘍内に浸潤しているCD4陽性細胞中、FoxP3陰性の細胞集団のうち、Th1、Th17の細胞表面上では、RANK-Lの発現が増強しており、Tregとは逆に口腔癌組織においてOC分化を誘導する主たる細胞集団である可能性が示唆された。
|
Strategy for Future Research Activity |
口腔癌組織由来のTh17細胞によるOCの分化誘導能の解析を検討している。マウスモデルから、DNAaseとコラゲナーゼを用いた方法で口腔癌組織から血球細胞を分離し、さらにTh17細胞としてCD4陽性、CD25陰性、CCR6陽性細胞をソーティングにより回収し、これらの細胞と骨髄由来のCD11b陽性前駆細胞との共培養の系を用いてTRAP assayによるOC分化の解析を行う。また、OC分化誘導実験においては、RANKLに対する中和抗体やその他の細胞表面マーカーに対する中和抗体を添加して、Th17とOC分化における制御的なマーカーについて解析を行う。さらに、マウス口腔扁平上皮癌細胞株SCCVIIを用いたC3Hマウスでの顎骨浸潤モデルを用いて、RANKLを標的とした抗腫瘍効果の治療実験を行う。RANKLは、先述したようにOC分化に必須のリガンドであり、多発性骨髄腫や転移性前立腺癌を用いた最近の研究では、RANKLのデコイレセプターであるOPGにFCを付加したOPG-FcやRANK-Fcの治療への応用が示唆されている。口腔扁平上皮癌の顎骨浸潤および進展において、OC活性化経路であるRANKL./RANK/OPGをターゲットとすることが治療上有効であるかどうかを解析するため、本研究では、マウス口腔扁平上皮癌モデルに対するOPG‐FcおよびRANK‐Fcの全身投与による口腔扁平上皮癌に対する抗腫瘍効果の評価を行う。マウス口腔扁平上皮癌担癌マウスにOPG-FcおよびRANK-Fcを経静脈的に投与を繰り返し、担癌マウスにおける顎骨浸潤の変化を組織学的に評価する。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度の研究費の使用計画としては、細胞保存用機器、抗原解析用試薬、細胞培養用試薬、 解析用機器およびソフト、実験動物研究成果発表(旅費)、研究成果投稿料にそれぞれ使用予定である。
|