2011 Fiscal Year Research-status Report
口腔癌再発に関わる骨髄単球細胞のマクロファージへの分化機構
Project/Area Number |
23592971
|
Research Institution | Yokohama City University |
Principal Investigator |
來生 知 横浜市立大学, 医学部, 講師 (30545059)
|
Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
|
Keywords | 口腔癌 / 放射線治療 / 低酸素 / 骨髄細胞 / 血管新生 |
Research Abstract |
本年度は、骨髄細胞と腫瘍の再増殖の関連性について解析を行なった。まず最初に横浜市立大学付属病院口腔外科にて2006年6月から2010年11月の間に化学放射線治療を行った口腔癌患者から採取した治療前後の組織標本を用いて治療後に腫瘍内へ誘導される骨髄細胞のうちCD11bを発現する単球細胞群について免疫染色を行なった。同一患者から採取された治療前および治療後(再発時)における腫瘍内のCD11b+細胞の陽性率を比較したところ、約72%で治療後の単球細胞の陽性率の上昇が認められた。次にOSC-19細胞株を用いて舌癌同所移植マウスモデルを作製し、放射線照射による微小環境変化を解析した。その結果、放射線照射後約4週間後においてCD11b+単球細胞の有意な誘導が確認された。興味深い事にこれらの細胞の多くがマトリックスメタロプロテアーゼ-9 (MMP-9)を高発現していた。MMP-9は最近になり組織のリモデリングに作用している事が分かってきており、再注目されている分子である。本研究においてもMMP-9が骨髄細胞から分泌される事により血管内皮細胞の遊走に関わっているのではないかと思われる。今後更に解析を進める予定である。さらに、ヌードマウスを用いた背部皮下腫瘍モデルにおいても同様の結果が得られた。現在は誘導されたCD11b陽性骨髄単球細胞がさらにどのような分化系でマクロファージに分化していくのか解析中である。また本現象の普遍性を調べる為,数種類の口腔癌細胞を用いて同様の実験を行っている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
口腔扁平上皮癌におけるCD11bやF4/80、CD31の免疫組織学的染色法の条件検討とプロトコールの確立は抗体毎に行わなければならなかったが、これまでに安定して染色を行えるようになった。その後の解析で治療後の腫瘍においてCD11b陽性細胞の誘導が認められ、特に再発症例でその頻度が高い事が分かる等、非常に興味深い結果を得る事が出来た。一方で、当初の予定より症例数が低いことが予想外であった。治療前後のペアで収集しなければならず、現在までに約10対のサンプルを用いて解析を行ったが、今後条件を変更して検体数を増やしていく予定である。動物実験に関しては使用する抗癌剤の種類や投与量、放射線照射量やサンプルの採取時期等さまざまな条件を考慮しなければならなかった為,条件検討に時間を費やしたが最近になりMMP-9の発現の上昇等の興味深い結果が出始めている。
|
Strategy for Future Research Activity |
これまでに分かったこととして腫瘍内に誘導されてきたCD11b細胞の役割を把握するのみならず、腫瘍の再発に関わる腫瘍血管の再構築を誘導する細胞群について特定を行っていく。具体的にはCD11b陽性単球細胞がマクロファージに分化する際にインターフェロンガンマなどにより分化するM1タイプとインターロイキン4などにより分化するM2タイプがあり腫瘍再発にはどちらがより深く関わっているのか、何のサイトカインがその分化機構に主的役割を担うのか等を動物モデルを用いて解析する。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究に用いる器具および備品はほとんどが現有しているものであり、研究にかかる物品費は殆どなく、研究費の大部分が消耗品購入費用となると思われる。本研究は動物を用いた研究である為,昨年にもまして、実験動物や染色用の試薬や抗体に使用する予定である。さらに本研究の成果発表と世界の研究者との交流の為,次年度も海外の学会への参加や発表を行っていく予定である。
|