2012 Fiscal Year Research-status Report
口腔癌再発に関わる骨髄単球細胞のマクロファージへの分化機構
Project/Area Number |
23592971
|
Research Institution | Yokohama City University |
Principal Investigator |
來生 知 横浜市立大学, 医学部, 准教授 (30545059)
|
Keywords | 口腔癌 / 放射線治療 / 低酸素 / 骨髄細胞 / 血管新生 |
Research Abstract |
昨年度に引き続いて骨髄細胞と腫瘍再増殖の関連性について解析を行った。臨床サンプルを用いて化学放射線治療を行った口腔癌患者から採取した治療前後の組織標本を用いて治療後に腫瘍内へ誘導されるCD11b+骨髄細胞の誘導率をサンプルの数を増やして解析した所、11例中8例で治療後の誘導が確認された。また動物実験では口腔癌OSC-19の皮下腫瘍モデルに対して放射線照射を行ったところ、腫瘍が再増殖するにつれてCD11b+細胞の腫瘍内への誘導が確認された。さらにHSC-3やYCUOC019など数種類の口腔がん細胞株を用いて同様の実験を行った。特に癌幹細胞は間質や骨髄細胞の取り込み能が一般的な樹立細胞株に比べて高い事から臨床検体の口腔癌組織から癌幹細胞をCD44およびALDHを用いて単離し、NOD-SCIDマウスに移植し、まずはその造腫瘍能を検証した。当初は期待されるレベルのものは得られなかったが、様々な試みを行った結果、安定した造腫瘍能が得られるようになった。同様に放射線照射後に骨髄由来のCD11b+細胞が腫瘍内へ誘導される事が確認された。さらにhypoxia-inducible factor-1(HIF-1)の活性化が放射線照射群で確認された。また予備実験の段階であるが、マクロファージをM1へ誘導する処理を行ったマウスでは腫瘍の再増殖が抑制された。現在はこれらのマクロファージの分化誘導に関わる分子メカニズムを解析中である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は数種類の口腔がん細胞株を用いて動物実験を行った。しかしながら贈腫瘍能が低下していたり、放射線感受性が予想以上に高かったなど予期せぬ結果が続き、至適照射量の決定や適正な口腔癌細胞の選定に時間を要した。口腔癌幹細胞は研究の主旨に同意を得た口腔癌患者の臨床検体の口腔癌組織から癌幹細胞をCD44およびALDHを用いて単離し、NOD-SCIDマウスに移植し、まずは造腫瘍能を検証した。当初は期待されるレベルのものは得られなかったが、様々な条件検討を行った結果、癌幹細胞特性を持った純度の高い細胞群が得られるようになった。本実験においても同様に放射線照射後に骨髄由来のCD11b+細胞が腫瘍内へ誘導される事が確認された。さらに予備実験の段階であるが、マクロファージをM1へ誘導する処理を行ったマウスでは腫瘍の再増殖が抑制されるなど本研究の主題にせまる結果が得られつつある。
|
Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究から口腔癌の再発のメカニズムとして CD11bを発現する骨髄単球細胞が重要である事が分かって来たが、今後はどのような分化メカニズムでマクロファージに分化するのか、また分化したマクロファージがどのようにして血管の再生や腫瘍の再発を導くのか、分子レベルで明らかにする予定である。具体的には癌細胞がどのような分化機構でマクロファージを分化させ、さらに血管の新生に関わっているのかを解析する。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
マクロファージを誘導するサイトカインである IL-4, IFN など試薬を中心に購入する。また実験のほとんどが動物実験であるため,それらを含めた消耗品購入が中心となる。本年度は癌幹細胞の研究を中心に行う予定であり、そのため使用するマウスが一匹当たりの単価が高額であるため、繰越金を計上した。また本年度は分子メカニズムの網羅的解析のため人件費が必要となるため,繰越金を含めて使用する計画である。さらに本研究成果発表と世界の研究者との交流のため,次年度も海外の学会への参加や発表を行う予定である。
|