2011 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23592980
|
Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
山城 正司 東京医科歯科大学, 医歯(薬)学総合研究科, 講師 (40292974)
|
Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
|
Keywords | 口腔顎顔面再建外科学 |
Research Abstract |
本邦において口腔癌は増加傾向にあるが、進行癌に対しては手術療法が主体であり、術後の重度機能障害がQOLの維持を著しく妨げている。本研究は、口腔準備期の機能として咀嚼、感覚、味覚など患者の「食生活の質」を評価することを目的としている。 舌神経および下歯槽神経が損傷された下顎歯肉癌の術後患者10名について評価を行った。機能評価として低粘性発色チューインガム法、オクルーザルプレスケール法、山本の咬度表、100音節発語名領土検査、全口腔味覚検査を用いた。感覚検査は下唇、舌尖、舌背の温覚、冷覚、触覚、熱痛覚閾値を、触覚閾値測定はSWテスターを用いた。咀嚼機能においては咀嚼値(a*)16.5±6.8、咬合力1203.4±346.5Nでありともに低下していたが、咬度表では6名が最高点の6点、2名が5点であり日常生活において咬めないという自覚的感覚の訴えは少なかった。100音節発語明瞭度は80.0±9.3%であり、障害の分類は軽度であった。全口腔法味覚検査では全味質において味覚閾値の大きな上昇は認められなかった。患側の温覚、冷覚、触覚閾値において冷覚と触覚は回復し認知できる患者がいたが、温覚は認知できる者はなく、熱痛覚は1名のみ下唇において認知できた。 さらに感覚検査について、既存の検査機器では口腔全体、特に舌後方などの感覚を評価するのは困難であると考え、感覚検査機器の改良を行った。健常者について舌の部位別感覚検査を行い、舌の前方・後方領域で有意差があり、触圧覚、二点識別能、温覚閾値は後方領域の方が閾値が高く、冷覚閾値は前方領域の方が高いことがわかった。本検査機器によりさらに広範な口腔内の感覚評価が可能となった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は課題名「口腔腫瘍および口腔粘膜疾患治療後の口腔機能調査」として倫理審査委員会による研究計画の承認を受け調査を実施している。下顎歯肉癌術後患者について口腔準備期の機能評価を行ったところ上記の結果を得た。咀嚼機能については客観的評価の必要性が確認され、グミゼリーとガムによる咀嚼能評価を採用した。また、術後感覚の回復は温覚、冷覚、触覚で違いがあることが明らかとなった。しかし口腔癌で最も頻度の高い舌癌の感覚検査については検査機器の改良が必要と考えた。その結果、新たに制作したThermal Stimulator T1-3101(KGS社製・埼玉)、口腔内用2点識別能テスター(KGS社製・埼玉)について健常者の舌感覚の測定を行い、結果を第16回口腔顔面神経機能学会にて報告した。 術後の口腔準備期の機能評価を行う上で、適切な評価方法の決定と検査機器改良による適応範囲拡大により、研究の目的の達成度はおおむね順調に進展している。
|
Strategy for Future Research Activity |
咀嚼機能評価として、咀嚼検査グミゼリー(GC)、ガム(Lotte)による客観的評価とともに食品アンケート(35品目)、さらにQOL評価としてVASによる満足度、UW-QOLを行う。また、感覚検査は検査機器の改良により多部位の測定が可能となったため、今後疾患群に対して調査を進めていく予定である。特に口腔癌で頻度の高い、舌癌、下顎歯肉癌、上顎歯肉癌患者について評価を行い、これら疾患の術後における「食生活の質」について明らかにしていきたい。 手術後のリハビリテーションや再建方法は様々であるが未だ標準治療が確立されていない。その原因として各種治療法における標準的な機能評価が行われていないことが挙げられる。特に今年度より顎骨切除例に対するインプラント治療の保険導入により、より積極的な顎骨再建やインプラント、義歯による咀嚼再建が行われていくと予想される。顎義歯や顎骨再建法、軟組織再建法の相違による口腔準備期の機能を明らかにし、よりよい顎骨切除後の治療方法ついても検討を重ねていきたい。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度の研究費は咀嚼機能検査のためのグミゼリー、ガムなど検査物品費として使用する予定である。そして研究成果を国内外学会、学会誌にて発表していく予定である。
|
Research Products
(2 results)