2011 Fiscal Year Research-status Report
ストレス蛋白質誘導による心筋保護作用:多角的心保護戦略を目指して
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23592994
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
北畑 洋 徳島大学, ヘルスバイオサイエンス研究部, 教授 (60161486)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
堤 保夫 徳島大学, ヘルスバイオサイエンス研究部, 講師 (90523499)
高石 和美 徳島大学, ヘルスバイオサイエンス研究部, 助教 (20325286)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 心筋保護 / ストレス蛋白質 |
Research Abstract |
ストレス蛋白質誘導薬であるゲラニルゲラニルアセトン(GGA)による心筋保護作用におけるカベオラ・カベオリンの役割を検討した。 ワイルドタイプマウスを用いて,GGA 200 mg/kgを処置24時間前に胃内投与したGGA群と無処置のコントロールに分類した。ペントバルビタールを腹腔内投与し(80mg/kg),気管切開後に人工呼吸下に開胸した。左冠動脈前下行枝を30分間閉塞し120分間再灌流を行った。実験終了後,心筋梗塞危険領域を同定するため再び左冠動脈前下行枝を閉塞し10% エバンス-ブルーを注入した。心臓を摘出し横断スライスを作成,1%塩化トリフェニルテトラゾリウムで染色した。以上より心筋梗塞範囲,梗塞危険領域および全左室の重量,各重量比を計測し,コントロール群とGGA群で心筋梗塞/梗塞危険領域等を比較した。 コントロール群における心筋梗塞/梗塞危険領域は44.3±9.8%(平均値±標準偏差,n=9)であった。虚血24時間前にGGAを経口投与することによりプレコンディショニング刺激を加えたGGA群においては,心筋梗塞サイズはコントロール群と比較して28.5±1.3%(n=7,P<0.05)と有意に減少した。GGAの遅延型プレコンディショニング作用による心筋保護効果が明らかとなった。 続いて細胞膜マイクロドメイン(カベオラ)の構成タンパクであるカベオリン-3をノックアウトしたマウスを用いて同様の実験を行った。カベオリン-3ノックアウトマウスにおいては,GGAを24時間前に投与しても心筋梗塞サイズは41.7±1.9%(n=7)と減少せず,GGAによる心筋保護作用が棄却された。 以上の結果からGGA投与による心筋保護作用には細胞膜マイクロドメインが関与することが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成23年度の実験計画に沿って,ワイルドタイプマウスおよびカベオリン-3ノックアウトマウスを用いてストレス蛋白質を誘導するゲラニルゲラニルアセトン(GGA)投与による心筋保護作用を比較した。その結果,GGAによる心筋保護作用にはカベオリン-3が関与しているという仮説が実証された。この結果を受けて次年度以降の実験計画を予定通り遂行できる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成23年度研究によりストレス蛋白質誘導による心筋保護作用におけるカベオラ・カベオリンの役割が明らかになった。今後はマウスin vitro遊離心筋細胞を用いて,ストレス蛋白誘導によるカベオラ数およびカベオリン-3の活性化を形態学的方法,Western blottingにて明らかにする。 続いてストレス蛋白質誘導と遅延期プレコンディショニングによる心筋保護作用の関連を明らかにするためにラット培養心筋細胞を用いた低酸素モデルにて,ストレス蛋白質誘導による心筋細胞死亡率への影響を測定する。ストレス蛋白質および一酸化窒素合成酵素誘導はNorthern blottingによるmRNAおよびWestern blottingにより蛋白量測定により発現を確認する。同様のモデルを使用しストレス蛋白誘導に加えて,揮発性吸入麻酔薬およびオピオイドによる遅延期プレコンディショニングが心筋保護作用を増強するか検討する。 次にストレス蛋白質誘導とポストコンディショニングによる心筋保護作用の影響を検討するため,ラット培養心筋細胞を用いて,低酸素後に揮発性吸入麻酔薬,オピオイドによるポストコンディショニング刺激が心筋細胞死亡率を低下することを明らかにする。続いてストレス蛋白質誘導したラット培養心筋細胞において,揮発性吸入麻酔薬,オピオイドによるポストコンディショニングの心筋細胞死亡率への影響を評価する。 以上よりストレス蛋白質誘導による心筋保護作用におけるカベオラ・カベオリンの役割を解明し,複数の心筋保護戦略により心保護効果を増強させることができることを明らかにする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成23年度の実験において,結果に予想よりもばらつきが少なく予定のn数に達する前に終了したため,研究費に残額が生じた。この費用は平成24年度のカベオリン-3ノックアウトマウス購入に充てる予定である。平成24年度は続いてマウスin vitro遊離心筋細胞を用いて,ストレス蛋白誘導によるカベオラ数およびカベオリン-3の活性化を形態学的方法,Western blottingにて明らかにする。実験計画は以下の通りである。1 ワイルドタイプC57BL/6マウスを用い,処置24時間前にGGAを200mg/kg胃内投与する(GGA群)。2 ペントバルビタール腹腔内投与し(80mg/kg),心臓を摘出し酵素法にて灌流する。3 遊離心室筋細胞をディッシュに接着させ組織を固定する。4 これらの細胞を電子顕微鏡(総合研究支援センター先端医療研究支援部門)を使用して細胞表面を観察,単位表面積あたりのカベオラの数を測定する。5 ホモジナイズした心筋細胞を超高速遠心機(総合研究支援センター先端医療研究支援部門)を用いて,密度勾配遠心を行う。6 カベオリン-3の活性をWestern blottingにて測定する。
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