2012 Fiscal Year Research-status Report
ストレス蛋白質誘導による心筋保護作用:多角的心保護戦略を目指して
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23592994
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
北畑 洋 徳島大学, ヘルスバイオサイエンス研究部, 教授 (60161486)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
堤 保夫 徳島大学, ヘルスバイオサイエンス研究部, 講師 (90523499)
高石 和美 徳島大学, ヘルスバイオサイエンス研究部, 助教 (20325286)
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Keywords | 心筋保護 / ストレス蛋白質 / 虚血再潅流 |
Research Abstract |
抗胃潰瘍薬であるゲラニルゲラニルアセトン(GGA) はストレス蛋白質を誘導し,心筋保護作用を有する。また近年、細胞膜マイクロドメインが虚血再灌流障害における心筋保護効果に影響を及ぼすことが明らかになった。ワイルトドタイプマウスおよびカベオリン-3ノックアウトマウスを用いた平成23年度の研究結果により,GGA投与による心筋保護作用にはカベオリン-3が関与することが示唆された。今回,GGA投与によるカベオラ数およびカベオリン-3の活性化を形態学的方法,Western blottingにて評価した。 【方法および結果】 1. ワイルドタイプC57BL/6マウスを用い,処置24時間前にGGAを200mg/kg胃内投与する(GGA群)。2. ペントバルビタール腹腔内投与し(80mg/kg),心臓を摘出し酵素法にて灌流する。3. 遊離心室筋細胞をディッシュに接着させ組織を固定する。4. これらの細胞を電子顕微鏡を使用して細胞表面を観察,カベオラの数を測定する。5. ホモジナイズした心筋細胞を超高速遠心機を用いて,密度勾配遠心を行う。6. カベオリン-3の活性をWestern blottingにて測定する。 GGA投与によって細胞膜ドメイン(カベオリン-3)タンパク発現量の有意な増加が認められた(Control群: 12.45±1.65, GGA群: 31.45±3.01)。 以上の結果から,GGA投与によるストレス蛋白質誘導における心筋保護作用はカベオリン-3を介することが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度の実験計画に沿って,マウス遊離心筋細胞を用いて,GGA投与によるカベオラ数およびカベオリン-3の活性化を形態学的方法,Western blottingにて評価した。その結果,GGAによる心筋保護作用にはカベオリン-3が関与し ているという仮説が実証された。平成23年度および平成24年度の結果を受けて,次年度の実験計画を予定通り遂行できる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成23年度および平成24年度の研究によりストレス蛋白質誘導による心筋保護作用におけるカベオラ・カベオリンの役割が明らかになった。次年度はストレス蛋白質誘導と遅延期プレコンディショニングによる心筋保護作用の関連を明らかにするためにラット培養心筋細胞を用いた低酸素モデルにて,GGAおよびオピオイド投与による心筋細胞死亡率への影響を測定する。次にストレス蛋白質誘導とポストコンディショニングによる心筋保護作用の影響を検討するため,同モデルを用いて低酸素後にオピオイドによるポストコンディショニング刺激が心筋細胞死亡率を低下することを明らかにする。続いてストレス蛋白質誘導したラット培養心筋細胞において,オピオイドによるポストコンディショニングの相互作用を評価する。以上よりストレス蛋白質誘導による心筋保護作用におけるカベオラ・カベオリンの役割を解明し,複数の心筋保護戦略により心保護 効果を増強させることができることを明らかにする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成23年度に続き平成24年度の実験においても,結果に予想よりもばらつきが少なく予定のn数に達する前に終了したため,研究費に残額が生じた。この費用は平成25年度の培養心筋および薬品購入に充てる予定である。平成25年度はラット培養心筋細胞を用いた低酸素モデルにて,ストレ ス蛋白誘導およびオピオイドによる遅延期プレコンディショニング/ポストコンディショニング作用による心筋保護作用の相互作用について検討する。実験 計画は以下の通りである。 1. ラット心筋isolation systemを使用しラット心筋細胞を樹立し培養する。2. GGA群,GGA+オピオイドプレコンディショニング群において低酸素24時間前にGGA(10μM)を投与する。3. オピオイドプレコンディショニング群およびGGA+オピオイドプレコンディショニング群において低酸素24時間前にδ-オピオイド受容体刺激薬[D-Pen2,5, p-Cl-Phe4]-Enkephalin(1μM)を投与する。4. 特殊チャンバーを用い4時間低酸素状況 (95%N2, 5%CO2) に暴露する。5. 低酸素曝露/再酸素化後にオピオイドポストコンディショニング群およびGGA+オピオイドポストコンディショニング群においてδ-オピオイド受容体刺激薬[D-Pen2,5, p-Cl-Phe4]-Enkephalin(1μM)を投与する。6.トリパンブルー染色し細胞数をカウントし,生存細胞の割合を計算する。7. 各群でNO産生を測定する。8. 各群で生存細胞率,NO産生量を比較検討し,ストレス蛋白質誘導とオピオイドによる遅延来プレコンディショニングおよびポストコンディショニングによる心筋保護増強作用を評価する。
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