2011 Fiscal Year Research-status Report
ヌクレオホスミンにより転写後発現制御される遺伝子の軟骨における役割の解析
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23592998
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Research Institution | Showa University |
Principal Investigator |
椋代 義樹 昭和大学, 歯学部, 助教 (50325099)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
新谷 悟 昭和大学, 歯学部, 教授 (80294429)
近藤 誠二 昭和大学, 歯学部, 准教授 (10432634)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 骨 / 軟骨 / ヌクレオホスミン / B23 / RNA / 3'-UTR / 転写後発現制御 / cis-element |
Research Abstract |
骨芽細胞、破骨細胞、軟骨細胞などの骨代謝に関与する細胞の分化・増殖は多くの遺伝子によって厳格に制御されている。さらに、細胞における遺伝子の発現は、様々な段階(転写、転写後調整、翻訳、翻訳後調整など)で、様々なタンパクによって調節されていることが報告されている。細胞核内のゲノムDNAからmRNAへの転写制御機構は、軟骨細胞などを含む様々な細胞で、数多く報告されてきた。さらに、最終的な遺伝子発現は、転写以降の段階でも巧妙に制御されている。すなわち、核内あるいは細胞質におけるmRNAの輸送、安定性調節などの転写後制御および、リボゾーム(ポリゾーム)におけるタンパク-核酸複合体結合制御や翻訳制御などである。しかし、骨芽細胞や軟骨細胞などの硬組織系細胞では、この制御機構がほとんど明らかにされていない。そこで、本研究では、アフィニティクロマトグラフィー法によるNPM結合RNAの精製、およびcDNAマイクロアレイの実施準備を行った。すなわち、CMVプロモーター下流に、マウスNPMのcDNAの5’末端(アミノ酸配列のC末端)にHA抗原タグを付与したキメラタンパク質をコードする哺乳類発現ベクターを作成し、これをマウス軟骨細胞株ATDC5細胞にトランスフェクションをおこなった。48時間後に、タグ付き強制発現NPM-RNA複合体を化学的に架橋固定し、抗HA抗体で免疫沈降させる。これをプロテインGカラムに通し、塩濃度勾配法にて抗体特異的NPM-RNA複合体を溶出させる。過熱還元反応によりRNA-NPM間の架橋結合を破壊、ただちにRNAを精製し、この精製されたRNAを鋳型として、cDNAに逆転写し、DNAマイクロアレイ(GeneChip、アフィメトリクス社)にて遺伝子発現を解析中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成23年度研究計画に示したように、以下の研究を遂行した。1.アフィニティクロマトグラフィー法によるNPM結合RNAの精製、およびcDNAマイクロアレイ サイトメガロウイルス (CMV)プロモーター下流に、マウスNPMのcDNAの5’末端(アミノ酸配列のC末端)にV5抗原および6xHisタグを付与したキメラタンパク質をコードする哺乳類発現ベクター(インビトロゲン社)を作成し、これをインスリン・トランスフェリン・亜セレン酸ナトリウムで成熟軟骨細胞に分化させたマウス軟骨細胞株ATDC5細胞にトランスフェクションする。トランスフェクション48時間後に、細胞をRIPAバッファーで回収、4%ホルムアルデヒドで、タグ付き強制発現NPM-RNA複合体を架橋固定し、抗V5抗体で免疫沈降させる。この溶液をプロテインGカラムに通し、カラム洗浄後、塩濃度勾配法にて抗体特異的NPM-RNA複合体を溶出させる。SDS-DTT存在下の過熱還元反応により、RNA-NPM間の架橋結合を破壊、ただちに酸性フェノール法にてRNAを精製し、これをNPM結合RNAライブラリー原液として保存する。 精製されたRNAを鋳型として、メーカーのプロトコールに従いcDNAに逆転写し、DNAマイクロアレイ(GeneChip、アフィメトリクス社)にて遺伝子発現を解析する。コントロール群(空ベクター導入群)と比較して、特異的に上昇しているRNAを解析すべきターゲット遺伝子とする。ターゲット遺伝子が複数存在することが十分予想されるが、この場合は、骨・軟骨代謝に関して興味深いものと考察される遺伝子を選択して、以下の実験にてその詳細を検討する。
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Strategy for Future Research Activity |
以下の研究計画を行う予定である。1.単離された遺伝子のmRNAとNPMの相互作用の解析A. REMSA B. レポーターアッセイ C. RNA分解アッセイ D. 細胞分画アッセイNPMを強制発現させた、あるいはsiRNAにてNPMをノックダウンさせたATDC5細胞に、キメラレポーター遺伝子ベクターをトランスフェクションする。トランスフェクション後、経時的に細胞をRIPAバッファーで回収し、ショ糖密度勾配超遠心法にて、核分画、リボゾーム(ポリゾーム)分画を単離する。各分画より酸性フェノール法にてRNAを回収した後、単離された遺伝子のmRNAの核からリボゾームへの輸送がNPMによって影響されているかどうかを検討する。 2. 単離された遺伝子の内軟骨性骨化における軟骨細胞の増殖・分化に対する影響の検討(in vitroにおける検討) ATDC5細胞を分化誘導し、それぞれの分化ステージで、単離された遺伝子がどのように発現しているかをreal time RT-PCRおよび、細胞分画western blotting法で検討する。もし単離された遺伝子が、リン酸化やアセチル化、ユビキチン化などの翻訳後修飾を受けるタンパクをコードしているのであれば、必要な抗体を用いて、さらなる細胞分画western blottingアッセイを行う。なお、骨・軟骨の増殖の検索には、MTTアッセイを用い、分化マーカーの検索には、アルカリホスファターゼ活性測定、硫酸化GAG定量などの生化学的アッセイを行う。さらに、TUNEL染色、アルカリホスファターゼ活性染色、アリザリンレッドS染色、トルイジンブルー染色などの細胞組織化学染色法も同時に行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
「今後の研究の推進方策」に則り、必要な試薬等を購入する予定である。また、大賀化機器はすでに平成23年度に購入したので、消耗品を中心に購入予定である。
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