2012 Fiscal Year Research-status Report
骨形成タンパク質NELL1による骨・軟骨誘導とその臨床応用
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23592999
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Research Institution | Showa University |
Principal Investigator |
織田 光夫 昭和大学, 歯学部, 兼任講師 (30359492)
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Keywords | NELL / 骨形成 / 軟骨誘導 |
Research Abstract |
新たなタンパク質NELL1は1999年に大阪大学産業化学研究所(現・名古屋大学農学部教授)の黒田俊一がその遺伝子クローニングをし(黒田ら,BRRC 265:79-86,1999),片山化学工業(大阪)において精製タンパク質として生産されたものである. NELL1はこれまでの研究からin vitro ならびにin vivo においてBMPと異なる作用機序により骨誘導能を有することが明らかとなってきた.我々はこれまでの研究過程で,NELL1が骨芽細胞分化誘導だけでなく,軟骨細胞誘導能を有することを見いだした.本研究は,これまでの結果に基づき,すでに確認された骨形成能に加え,新たに見つかった軟骨形成能について,in vivoにおいて解析を進めるとともに,NELL1のより効率的な骨.軟骨誘導条件を決定し,臨床応用への道を拓くことを目的とするものである. これまで、Wistarラット大腿骨モデルを用いた実験をおこなった.マイクロCTによる誘導さる骨組織の定量的解析の結果,実験群とNELL群で骨形成量に圧倒的な差があるものの,投与濃度1ug,15ug,25ug間で有意差が診られなかった.脱灰組織標本では従来どおり新生骨の形成を確認できるものの,担体(NELL1含有)の周囲に新生骨が見られず,前述の濃度勾配に依存しない状況と合わせると,高濃度のNELL存在よりも周囲細胞・組織を治癒方向に活性化させる働きを表現したものと考察している.また,脂肪組織内での新たな組織誘導の所見を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
実験結果より高濃度のNELL存在よりも,NELL1の働きが周囲細胞・組織を治癒方向に活性化させる働きを表現する新たな発見があった.この結果は,NELLの骨誘導機序に新たな可能性を示すものとなる可能性が高い。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度までの結果から,高濃度のNELL存在よりも,NELL1の働きが周囲細胞・組織を治癒方向に活性化させる働きを表現する可能性を見いだした.そのため,「ラット膝関節モデル」,「ラット血管柄付移植骨作成モデル」に取り組み、NELL1のin vivoにおける機能について検証する.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
「ラット膝関節モデル」:ラット膝関節を解放,大腿骨遠位骨端にバーを用いて,骨質に達する穿孔を作成後、NELL1 0.2μg,をコラーゲンスポンジに含浸させて挿入し、縫合閉鎖する.4週,8週後に以下の解析を行う.解析法として、1.マイクロCT による解析,2.脱灰組織標本による解析,3.酒石酸耐性酸性フォスファターゼ染色,・アルカリフォスファターゼ染色,4.免疫組織学的解析(I,II,IX, X 型コラーゲン,オステオカルシン,コンドロカルシン等)を行う。 ラット血管柄付移植骨作成モデル:異所性に誘導された骨組織に対してNELL1 が軟骨誘導能を有するかについて検討する.ラット腹壁から,下腹壁動静脈を血管柄とする脂肪を挙上,形態を付与したシリコンモールド(大腿骨遠位端をイメージ)内にコラーゲンスポンジに含浸させNELL15μgをコラーゲンスポンジに含浸させて投与.再度モールドを除去して筋肉内に戻す.8週後に上述の方法を用いて解析を行う.
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