2011 Fiscal Year Research-status Report
生体膜脂質に関した新規薬力学的相互作用による麻酔薬の効果減弱・増強
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23593005
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Research Institution | Asahi University |
Principal Investigator |
土屋 博紀 朝日大学, 歯学部, 教授 (30131113)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
溝上 真樹 福井大学, 医学部附属病院, 講師 (10231614)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2015-03-31
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Keywords | 麻酔薬 / 相互作用 / 生体膜 / 脂質 / 食物成分 / 薬力学的 / 機序 |
Research Abstract |
作用部位としての生体膜脂質に着目し、歯科用麻酔薬の新規薬力学的相互作用を追究することが本研究の目的である。平成23年度の予備的研究では、膜作用解析法の開発、その応用として各種麻酔薬の膜作用機序の検討、薬物相互作用を起こす可能性を秘めた膜活性物質の検索を行った。その結果、以下のような成果を得た。1.方法論的確立と応用:リン脂質とコレステロールの組成を検討すべき細胞膜の脂質組成に相当するように調節したリポソームを作成し、種々のプローブで標識した。麻酔薬あるいは検索対象物質をリポソーム膜に作用させた後に蛍光偏光を測定し、脂質二重層膜の物理化学的性質(膜流動性)変化を定量的に解析できる方法を確立した。膜脂質組成を変化させることにより、特定膜成分の効果を検討することが可能になった。また、プローブの選択によって、膜脂質二重層内の作用部位を特定することも可能になった。さらに、応用実験によって、本解析法の有用性も実証された(成果発表雑誌:Bioorganic and Medicinal Chemistry)。2.食物成分の検索:飲食物中の多数の成分に関してその膜活性を検索した結果、麻酔薬と同様に膜流動性を修飾する種々のフラボノイドをワイン等の中に見出した。これらフラボノイド成分は、麻酔薬との相互作用を検討するための研究対象となり得ると考えられる(成果発表雑誌:International Journal of Wine Research)。3.生体内物質の検索:飲食物だけでなく生体内にも存在する膜活性物質を検索した結果、麻酔薬と拮抗する膜作用を有する数種のβ-カルボリンアルカロイドを特定した。これらアルカロイドは、麻酔薬との相互作用を検討すべき対象となり得ると考えられる(成果発表雑誌:Journal of Toxicology)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1.次年度以降の研究において薬力学的相互作用の解析を本格的に進めるには、実施すべき一連の実験に適した実験系ならびに定量的解析法が必要となる。平成23年度の研究によって、それを確立することができた。2.開発した解析法は、膜作用機序に基づいた局所麻酔薬の構造特異的心毒性の検討に利用できた。また、その有用性も応用実験によって確かめられた。3.局所麻酔薬(ブピバカイン、リドカイン)や全身麻酔薬(プロポフォール)との薬物相互作用の追究へと発展させるため、膜流動性変化に基づいて特定のフラボノイドとアルカロイドを検討候補として絞り込むことができた。これらの研究成果により、平成24~26年度の応用実験I~IIIへの道筋がついた。
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Strategy for Future Research Activity |
予備的研究成果を公表するための旅費(200,000円)を平成23年度に申請したが、研究代表者所属機関の研究費に応募していた出張費が採択されたため、次年度使用額(192,562円)が生じた。この研究費は、平成24年度以降の研究成果公表に関する経費として使用する。 今後の研究推進方策として、平成23年度に確立した実験系と解析法を活用し、局所麻酔薬ならびに全身麻酔薬の薬力学的相互作用に関する一連の応用実験を実施して新規相互作用の可能性を探る。平成24年度は、方法論的開発に基づいて様々な研究成果が得られるものと期待される。したがって、国内外の学会での発表や専門雑誌への論文投稿等、これらの研究時間ならびに研究経費に占める割合が高まると予想される。 また、今後の研究をより発展させるために、基礎的実験に加えて次年度以降の研究の方向性を探るパイロット実験も必要となろう。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
1.基礎的実験ならびにパイロット実験に要する物品費:942,562円 平成23年度の予備的研究に関し、研究遂行に必要な試薬類や器具類はある程度整備された。それらの消耗・破損を補うための物品と、研究の進展に応じて新たに購入すべき物品に限られると考えられる。したがって、研究経費に占める割合は申請時より低くなる可能性がある。2.専門雑誌あるいは学会誌への論文投稿に要する経費-その他:200,000円 Anesthesia and Analgesia、 Biological and Pharmaceutical Bulletin、Medical Hypotheses、Basic and Clinical Pharmacology and Toxicology他、投稿予定。3.国際会議における研究成果発表に要する旅費:750,000円 4th EuCheMS Chemistry Congress (Prague)、Euroanaesthesia 2012 (Paris)他、研究発表予定。
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Research Products
(5 results)